新卒一括採用から通年雇用、ジョブ型雇用へとシフトする大手企業が増えている。人手不足が続くなか、新卒の採用は空前の売手市場となっている。


共同通信社の調査によると、2024年度の新卒採用を2023年度の実績よりも増やすと回答した企業の割合は44%だ。とくに争奪戦が激化しているのがデジタル人材で、初任給のアップやインターンの拡大、スカウト型などあらゆる手段で人材を獲得しようとしている。


その結果、内定を出す時期も早まり、リクルートの調査によると、2024年に大学を卒業する予定の就職内定率は、4月1日時点ですでに48.4%に達している。2社以上の内定をもらっている就活生も47.5%だ。


政府が経済団体に要請している就活ルールは、内定を出すのは10月1日以降となっているが、まさにルールそのものが形骸化しているのが実情だ。


ところが、内定を出す時期が早期化している一方で、内定を辞退する就活生も続出している。1社以上の内定を辞退した学生の割合は33.1%で、内定者をいかに入社するまでつなぎとめておくかが、企業の大きな課題となっている。


今春の新卒採用で、「採用予定数を充足できた」のは40.4%(リクルート調査)で、調査を開始した2012年以降では、もっとも低くなっている。


そのため、企業が内々定や内定者を囲い込むため、入社意思を示す内定承諾書の提出を求める企業もあるが、就活を終了するように強要する“オワハラ”が新たな問題として浮上している。


もっとも、内定承諾書に法的拘束力はなく、就活生の受け止め方も、企業が思うほど内定辞退を防ぐ効果を発揮していないことが文化放送キャリアパートナーズの調査で明らかになっている。


就活生の内定承諾書に対するイメージは、「必ず入社しなければならない」が16.3%で、「断る可能性も視野に入れて承諾できればいい」が33.9%で、およそ半数が内定承諾書を形式的なものと受け止めているようだ。


内定承諾書などの書類提出や、内々定を出す条件として他社への就活を中止するよう強要するのは、行き過ぎた場合は憲法の「職業選択の自由」に反する行為となる可能性もある。空前の売手市場のなかで、いかに内定者をつなぎとめることができるか、企業努力が試される時代ともいえそうだ。