今年は多くの企業が賃上げを実施したものの、実質賃金は12カ月連続でマイナスとなり、物価上昇に賃金が追いついていない状況が続いている。


そんな状況が続けば、財布の紐はますます堅くなる一方だが、給与所得者が淡い期待を寄せたくなるのが、夏のボーナスである。コロナ禍で我慢を強いられてきた旅行などを、ボーナスを当てにして計画している人も多いのではないだろうか。


はたして、今年の夏のボーナスは、期待するような支給額となるのだろうか。一般財団法人労務行政研究所が、東証プライム上場企業に実施した、今春の賃上げと同時期に交渉・妥結した夏季賞与・一時金の集計*によると、全産業の支給水準は79万4,008円である。


昨年よりも1.5%増と、2年連続での増加とはなったが、大幅増となった昨年の6.5%増(76万5,888円)に比べると小幅な上昇にとどまっている。産業別に見ると、製造業は前年同月比2.3%増だが、非製造業は1.9%減と、コロナ禍の影響がボーナス支給額にも大きく響いていることがわかる。


給与所得者は夏のボーナスがアップすることで、実質賃金のマイナス分を補いたいところだが、1.5%増では難しいのではないだろうか。


一方、事業者にとっては、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の位置づけが5類に移行したことで、個人消費の拡大に期待を寄せ、景気回復につなげていきたいところだが、ボーナスの増加幅が伸びなかったことが消費拡大の期待にもマイナス影響を及ぼすことになるかもしれない。


さて、2023年夏季賞与・一時金の平均支給月数(全産業121社)は2.48カ月である。ちなみに前年同期が2.46か月で、わずかながら0.02カ月ほど上回っている。


残念ながら決して大盤振る舞いとはいえず、最高支給月数は3.73カ月で、前年同期の4.09カ月を下回り、最低月数は、前年同期と同じ1.50カ月となっている。


給与所得者が期待を寄せる夏のボーナスが、年明け以降も続く値上げラッシュを押しのけるほどのインパクトとはならないことを、今から覚悟をしておいた方がよさそうだ。


【調査概要】
調査対象 :東証プライム上場企業(2023年3月31日現在で1834社)のうち、原則として労働組合が主要な単産に加盟している企業。持ち株会社が東証プライム市場に上場している場合、その主要子会社は調査対象とした。なお、図表中の「商業」は卸売業、小売業。「情報・通信」には、IT関係のほか、新聞、出版、放送を含む。[図表1、4]の業種分類は、東洋経済新報社『会社四季報』をベースとしている
調査数: 2023年春季交渉と同時期に2023年の夏季賞与・一時金を決定している企業(組合)で、当研究所が結果を把握した118社(月数集計は121社)
調査期間:2023年3月15日〜4月12日


■参考サイト
PR TIMES|東証プライム上場企業の2023年夏季賞与・一時金(ボーナス)の妥結水準調査