新潮社のマンガサイト「くらげバンチ」で連載中のおおのこうすけさんのマンガが原作のアニメ「極主夫道」が、4月8日にNetflixで全世界配信された。3月に公開された予告編では、原作のコマ割りをそのまま生かしたような絵が“動かない”演出が話題となった。同作の監督を務めるのが、テレビアニメ「のだめカンタービレ」、劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」など数々の話題作を手掛けてきた今千秋さん。アニメならではの見せ方やこだわり、見どころを聞いた。

 ◇動かないけれど静止画ではない 原作の世界観再現に試行錯誤

 「極主夫道」は、“最凶”の極道「不死身の龍(たつ)」といわれ、極道から足を洗い専業主夫となった龍が、家族や町の平和を守る姿を描く“ギャグコメディー”。昨年放送されたテレビドラマも話題となった。アニメは、今さんが監督を務め、J.C.STAFFが制作する。

 「極主夫道」のアニメ化で大事にされたのは、「マンガのようなアニメを作る」ことだった。今監督にオファーが来た時点で、絵をあえて“動かさない”演出で制作することが決定していたという。アニメは、原作のコマ割りから描き文字までかなり忠実に再現されている。動かない演出ではあるが、躍動感もある。

 「原作が結構アクロバティックなシーンが多いんですよね。龍が飼っている猫の銀が動き回ったり、龍が元舎弟の雅を勢いよくビンタしたり、それを動かない絵で見せるのは、すごく苦労しました。動かないけれど、決して静止画ではないという『アニメーションとは何だろう』という域を超えているというか」

 今監督は、マンガ原作のテレビアニメ「Back Street Girls -ゴクドルズ-」でも「止めアニメ」と呼ばれる絵が動かない手法を使った。ただ、同作と「極主夫道」では、「全然使う脳みそが違った」という。

 「『ゴクドルズ』は原作が、キャラクターが動くというよりは、表情などのインパクトで見せる作風なのに対し、『極主夫道』はものすごく動きが多いんです。原作の絵を生かしつつ、いかに止まって見えないようにするかが課題でした。すごく試行錯誤して、カメラワークなどで臨場感を出したりしました。例えば、龍がフラフープを回すシーンがあるのですが、動かせるところはセルを分けて、あとは撮影で動いているように見せるという作業でした」

 ◇龍と美久の夫婦愛、愛らしい仲間たちにほっこり

 今監督は、最初に原作を読んだ時、「どこに向いた作品なんだろうと正直戸惑ったところがある」と明かす。

 「主夫のいろはを教えてくれるから主夫向けなのかなと思いつつも、笑いのツボは主夫に向いているわけでもないような気がして。面白いと思って読んでいたら、ページをめくるとその話がもう終わっていて『終わってる!』なんてこともしばしば(笑い)。ただ、アニメを制作しているうちに、自分の中の『極主夫道』が育っていった感じがします。自分なりに原作の『極主夫道』を理解できたというか。自分でも『遅いよ!』とは思うんですけど(笑い)」

 今監督がアニメを制作する中で感じた「極主夫道」の魅力は「夫婦愛」だった。龍は、尋常ではない熱量で家事に没頭し、主夫道にまい進するが、それはひとえにキャリアウーマンとして働く妻の美久のためだ。その姿にほっこりとした気持ちにさせられる。

 「龍と妻・美久の夫婦愛、その周りの楽しい仲間たち。みんなユニークなんですけど(笑い)、可愛らしい。たまに龍は暴力を振るいますけど、とても優しい作品だなと思いました。それをアニメで表現できていたらいいなと思います」

 今監督は、アニメ「極主夫道」は「アロマの代わりにもなる」と話す。

 「アニメを見るぞ!と構えて見るのではなくて、寝る前にアロマでもたきながら『極主夫道』を見るような感じで、リラックスして見ていただけるといいのかなと思います。『極主夫道』自体がアロマの代わりになるので、リラックスして、ほっこりして、面白かったよと。見た後は、スヤァ……と眠れて、いい夢が見られるんじゃないでしょうか。あと、龍から女子力が学べます。私も学んでいます(笑い)」

 「極主夫道」は癒やしにあふれた優しい世界。そのタイトルからは想像もしない魅力が秘められていた。制作陣の試行錯誤の上、原作の世界観が再現されたアニメに注目だ。