
ガーラ<4777>のM&A戦略が「売り」から「買い」に変わったようだ。2008年3月にインターネット上の口コミ調査を分析する「バイラルリサーチシステム」事業をシステム開発のホットリンク(東京都千代田区)に5000万円で譲渡して以来、4件連続で「売り」のM&Aを実施してきたが、2021年4月にツリーハウスリゾート事業を手がけるツリーフル(沖縄県名護市)を子会社化して「買い」に方向転換した。
2021年から「買い」に転換したガーラ
しかし、ツリーフル株の97%はガーラの菊川暁グループCEOが保有しており、事実上はグループ内の企業再編だ。そのため、ガーラのM&A戦略が本当に「買い」に転換したのか、疑問視する声もあった。それを覆したのが2023年9月に発表した韓国の映画・CMコンテンツ制作会社ROAD101 Co., Ltd.の子会社化だ。
公表日 | 売買 | 取引価額 (億円) | 案件 |
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2023年9月11日 | 買い | 4.2 | 韓国の映画・CMコンテンツ制作会社ROAD101を子会社化 |
2021年4月2日 | 買い | 1.6 | 菊川グループCEOが大株主でツリーハウスリゾート事業のツリーフルを子会社化 |
2015年4月23日 | 売り | 0.37 | Web制作などのガーラウェブを譲渡 |
2013年2月19日 | 売り | 15.43 | オンラインゲームサービス会社の米国Gala-Netを譲渡 |
2012年4月25日 | 売り | 3 | データマイニング事業のガーラバズをホットリンク<3680>に譲渡 |
2008年3月31日 | 売り | 0.5 | 口コミ調査分析システム事業をホットリンクに譲渡 |
韓国企業を買収した「理由」
ROAD101はソウルに本社を置き、当時の売上高は7億3300万円、営業損益は3億5600万円の赤字、純資産は1億3000万円。同社が実施した約4億2000万円の第三者割当増資をガーラが引き受け、過半数の株式を取得して子会社化した。
ROAD101は、映像のVFX(視覚効果)技術で映画・CMコンテンツを制作。人間のリアルな表情の変化を表現するDigital Human技術やメタバース技術も所有する。これらにガーラグループがオンラインゲーム事業で培ったオンラインプラットフォーム技術、リアルタイムサーバー技術、メタバース技術を組み合わせ、メタバース分野で新たなサービス開発と提供を進める。
ガーラ初となる全く自社と関係のない他社買収が、なぜ韓国企業なのか?その理由は同社の収益構造にある。同社の韓国部門は2023年3月期の売上高が約32億円と総売上の97.6%を占め、国内部門の約7800万円を大きく上回った。
同期決算では連結売上高が前期比5.3倍の32億円という急成長になったが、これもHTML5ゲーム「Flyff Universe(フリフユニバース)」を手がける韓国部門の売上高が同5.6倍に跳ね上がったからだ。Flyff Universeは2022年5月にリリースされ、登録者数は同7月に100万人、同10月に150万人、同12月には200万人と着実に増加。同期の売り上げが24億4000万円を超える大ヒット作品となった。
韓国企業との関係強化を株式市場も好感
一方、日本部門は振るわない。2021年10月に米国とカナダでサービスを開始したスマートフォンゲームアプリ「Rappelz(ラペルズモバイル)」が、2022年11月にサービス提供を一時終了した。今後、ブロックチェーン技術を組み合わせたNFTゲームにリニューアルする予定だという。
ゲームの売り上げ不振で、同期の国内部門は約2億2900万円の赤字を計上。韓国部門は約6億8100万円の黒字で、全体では約4億3700万円の営業黒字に転換できた(2022年3月期は2億9700万円の営業赤字)。つまり、ガーラの主戦場は韓国なのだ。株式市場も、韓国部門の動きに注目している。
2023年7月に同社韓国子会社のGala Labが韓国ゲーム会社のWemada Connect、Web3.0ゲームプラットフォームを手がけるBPMGとの間で、パブリッシングとゲーム事業に関する戦略的提携契約を締結したと発表したところ、ガーラ株は一時ストップ高となる前日比80円高の468円をつけた。
2022年9月にも韓国LG UplusとMegazone Corporationとメタバースキャンパスプラットフォーム事業(Meta School 事業)で業務提携すると発表したところ、ストップ高となる同100円高の695円をつけている。同事業では仮想キャンパスを開発・構築し、大学などの教育機関に生徒のコミュニティー空間や大学入試説明会のようなイベントの場となるメタバースプラットフォームを提供していく。
ガーラは今後も韓国部門を中心に成長戦略を描くと思われる。事業構築をスピードアップするために、韓国企業を買収する動きも出てくるだろう。韓国でのM&Aが同社成長のカギを握っていると言えそうだ。
関連年表
ガーラの沿革 |
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1993年9月 - ガーラ設立。 |
1996年8月 - 日本初の学生向け会員制コミュニティサイト「キャンパスネット」開始。 |
1997年3月 - ゲームのコミュニティサイト「ゲームネクスト」開始。 |
1998年7月 -「キャンパスネット」「ゲームネクスト」を統合した総合コミュニティサイト「ガーラフレンド」開始。 |
2000年1月 - リスクモニタリングサービス「e-マイニング」開始。8月 - ナスダック・ジャパンに上場。 |
2001年11月 - マーケティングリサーチサービス「バイラルリサーチ」開始。 |
2004年5月 - 米国にGala-Net Inc.を設立。 |
2005年10月 - 電通と共同でASP「電通バズリサーチ」サービス開始。11月 - Gala-Net Inc.にてオンラインゲームポータル事業開始。 |
2006年10月 - オンラインゲームポータル事業開始。Gala-Net Inc.の子会社としてGala Networks Europe Ltd.を設立。 |
2007年4月 - 携帯電話向けオンラインゲームポータル事業を手がけるガーラモバイルを設立。12月 - ガーラバズを設立。 |
2008年2月 - ベクターと業務・資本提携。7月 - 純粋持株会社体制へ移行。ガーラモバイルはガーラジャパンに社名変更。7月 - Aeonsoft Inc.からGala Lab Corp.に社名変更。 |
2010年3月 - ガーラジャパンが携帯電話向けオンラインゲームポータル事業を終了。6月 - Aeonsoft Inc.とnFlavor Corp.を合併。Gala-Net Brazil Ltd.を設立。 |
2011年6月 - 事業持株会社体制へ移行。8月 - Gala Networks Europe Ltd.の韓国事業所を譲受。 |
2012年4月 - 株式会社ガーラポケットを設立。10月 - 米国にGala Innovative Inc.を設立。 |
2014年10月 - 韓国にGala Connect Inc.を設立。 |
2019年5月 - 韓国のMegazone Cloud Corporation、GPM Co.,Ltd.と業務提携。 |
この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。
文:M&A Online