ミライノベートを吸収合併して不動産事業を拡大するJトラスト(同社ホームページより)

Jトラスト<8508>がM&Aで不動産事業に本格参入する。2023年2月1日にJトラストが存続会社として、ミライノベート<3528>を吸収合併するのだ。これまで国内やアジアで保証や債権回収、証券、クレジットカード、銀行といった金融事業をM&Aで拡大してきたJトラストが、不動産事業でのシナジーを狙う。中小零細企業向けの商業手形割引や手形貸付といった貸金業務でスタートした同社の、M&Aによる成長戦略が注目されている。

M&AでイッコーからJトラストへ

Jトラストの源流は、1977年3月に設立した中小零細企業向け金融会社の一光商事。1991年3月にイッコーに社名変更し、1998年9月に大阪証券取引所第2部に上場する。しかし、小口貸金業界の構造不況から全国保証<7164>が第三者割当増資とTOB(株式公開買い付け)によりイッコーを子会社化した。

2008年3月には、かざかファイナンス(東京都港区)の藤澤信義社長がTOBでイッコーの筆頭株主になる。同年、藤澤氏はJトラストで代表権のある会長に就任した。藤澤氏は東京大学医学部を卒業後、ゲームセンターでのアルバイトを経て2001年6月に不動産担保融資を手がけるビィー・ジャパンに入社。わずか2年後に同社の経営を立て直して同社社長に就任する。この時の経験がミライノベートとの合併につながった。

藤澤氏は2005年にビィー・ジャパンをライブドアフィナンシャルホールディングス(LDFH)へ売却。同社はLDFHの完全子会社「ライブドア不動産」になった。2006年にライブドア事件が起こった影響で、LDFHはアドバンテッジ パートナーズが運営する投資ファンドに譲渡。藤沢氏がLDFHの経営を任された。2007年にLDFHは「かざかフィナンシャルグループ」に社名変更している。


藤澤社長の手腕で買収攻勢に

経験を積んでいた藤澤氏はイッコーを買収すると、積極的なM&Aを展開する。2010年5月には貸金業務を吸収分割の方式により、Jトラストフィナンシャルサービス(現・日本保証)に承継。同10月にも信用保証業務を同社に承継し、祖業だった貸金業と信用保証業務を本体から切り離した。身軽になった同社が目をつけたのは海外市場である。

2012年8月に韓国で、KCカード(現Nexus Card)の子会社として親愛を設立。同10月には親愛が貯蓄銀行業の認可を得て貯蓄銀行業に参入し、親愛貯蓄銀行(現JT親愛貯蓄銀)に社名変更した。

2013年10月には東南アジアへ進出し、インドネシアに「JTRUST ASIA PTE.LTD.」を設立。同国では2014年11月にインドネシア預金保険機構からPT Bank Mutiara Tbk.(インドネシア商業銀行、現PT Bank JTrust Indonesia Tbk.)の株式99.0%を取得して連結子会社化している。

2015年3月に割賦金融や施設リース業といった与信金融を手がける韓国スタンダードチャータードキャピタル(現Aキャピタル)を完全子会社化、2019年にはカンボジアでANZ Funds Pty Ltd.からANZ Royal Bank(Cambodia)Ltd.(現J Trust Royal Bank Plc)の株式55.0%を取得し、連結子会社化するなど、アジア圏での金融事業に力を入れた。日本よりも経済成長の余地があるアジアで活路を開くのが狙いだ。


M&Aで消費者金融、クレジットカード事業へ

一方、国内では2009年3月に阪急阪神ホールディングス<9042>傘下の阪急電鉄から、消費者金融業を手がけるステーションファイナンス(現・日本保証)の全株式を取得して連結子会社化した。当時、ステーションファイナンスは債務超過の危機に瀕しており、取得価額は85万5000円と格安で手に入れている。

同年9月に現社名のJトラストに改称し、子会社を通じて個人向けローン業務を手掛けるプリーバ(東京都港区)の全株式を取得し、完全子会社化した。同社も営業赤字に陥っており、取得価額はわずか1円だった。2010年3月には民事再生法適用を申請していた住宅施工販売会社のニード(東京都目黒区)を吸収合併する。トラストは戸建て分譲やリフォーム事業を手がける子会社があり、ニードとの相乗効果で住宅事業の強化を狙った。

クレジットカード事業もM&Aで強化した。同月に西京銀行(山口県周南市)から西京カード(同)の株式50%を追加取得し、子会社化した。Jトラストは2009年5月に西京カードと保証業務提携契約を結び、同社株30%を取得していた。

2011年8月には楽天から楽天KC(現PayPayカード、福岡市)の株式97.26%を取得して子会社化。楽天は楽天KCから「楽天カード」事業を会社分割により、子会社の楽天クレジット(東京都品川区)に承継した。Jトラストは楽天KCが前身の国内信販から引き継いだカード事業などを承継した。2012年5月にも香川県を中心にクレジット事業を展開するたかせん(高松市)の全株式を取得して完全子会社化した。

クレジットカード会社を相次いで買収
クレジットカード会社を相次いで買収したが…(写真はイメージ)

M&Aで事業ポートフォーリオを組み換え

ところがJトラストは、クレジットカード子会社を相次いで売却。2014年1月に西京カードを元の親会社だった西京銀行へ譲渡。2015年1月にはKCカードをヤフー(現Zホールディングス)<4689>に譲渡した。クレジットカード事業はインターネット金融の最前線となっており、自社での成長は厳しいと判断したのだ。方針転換も早い。

とはいえM&Aでの事業ポートフォーリオ拡大は続き、経営の安定化を図っている。2012年1月には経営破綻した消費者金融大手の武富士から、消費者金融事業を取得。2012年4月にはアミューズメント店舗事業、投資・不動産事業などを手がけるネクストジャパンホールディングス(東京都中央区)を株式交換で子会社化した。

その他にも貸付債権、不動産などの投資会社ネオラインホールディングス(東京都港区)や、オートローン、割賦事業、クレジットカード事業を手がけるNUCS(宮崎市)、太陽光発電アセットマネジメント(資産運用)を手がけるプロスペクト・エナジー・マネジメント(東京都渋谷区)、クラウドファンディング事業のLCレンディング(東京都港区)、HSホールディングス傘下のエイチ・エス証券(東京都新宿区)など、業種は多岐にわたっている。

それだけにJトラストがM&Aで何を目指すのか、方向性ははっきりしない。一方でクレジットカード以外でも、デザイン制作・印刷会社や遊技機メーカー、ITサービスなどの子会社を売却。事業ポートフォーリオの見直しも同時に進めている。同社の業績は好調で売上高は2年連続で増加、当期利益は3年連続の増益だ。

とりわけアジア金融部門は2年連続で成長を続けている。今後は円安もあって買収資金がかさむという懸念もあるが、成長が期待できるだけに積極的なクロスボーダーM&Aを展開することになるだろう。


Jトラストの主なM&A案件

公表日内 容買収金額(億円)
2008年2月14日 かざかファイナンスの藤澤信義社長が、イッコー(現Jトラスト)をTOBで子会社化 7.13
2008年8月22日 債権管理回収業のかざか債権回収を子会社化 5.00
2009年2月9日 消費者金融業のステーションファイナンスを子会社化 0.01
2009年9月11日 個人向けローン業務のプリーバを子会社化 0.00
2010年2月1日 住宅施工販売会社の二―ドを買収 0.42
2010年3月10日 クレジットカード事業の西京カードを子会社化 6.25
2010年8月12日 事業者金融業のロプロを子会社化 3.00
2011年3月10日 韓国消費者ローン会社ネオラインクレジット貸付を子会社化 7.67
2011年6月2日 楽天<4755>からクレジットカード事業の楽天KCを取得 45.00
2012年1月12日 経営破綻した武富士から消費者金融事業を取得 252.13
2012年2月14日 ネクストジャパンホールディングス<2409>を子会社化 0
2012年4月17日 香川県を地盤とするクレジット会社たかせんを子会社化 4.75
2012年5月29日 アドアーズ<4712>を子会社化 0
2012年7月12日 投資会社のネオラインホールディングスを子会社化 110.00
2014年1月27日 ローン事業の西京カードを西京銀行に譲渡 4.56
2014年2月12日 韓国貸付業のハイキャピタル貸付を子会社化 45.43
2014年2月14日 韓国消費者金融業のケージェイアイ貸付金融を子会社化 116.50
2014年3月26日 オートローン事業のNUCSを子会社化 0
2014年6月16日 韓国スタンダードチャータードキャピタルなど2社を子会社化 151.04
2014年6月25日 「KCカード」事業をヤフー<4689>に譲渡 349.46
2014年9月12日 インドネシアのムティアラ銀行を買収 397.00
2014年12月19日 傘下のデザイン制作・印刷会社エーエーディを健康コーポレーション<2928>に譲渡 3.00
2015年10月15日 韓国の債権の買取り及び回収事業会社2社を譲渡 1.06
2016年10月13日 [中止]J韓国のDH貯蓄銀行を子会社化 29.78
2018年4月19日 インドネシアの中古車ローン会社を子会社化 0
2018年5月17日 カンボジアの商業銀行ANZを子会社化 90.00
2018年9月25日 遊戯機製造子会社のハイライツ・エンタテインメントをサイ・パートナーズに譲渡 1.50
2020年9月23日 韓国「JT親愛貯蓄銀行」を傘下に持つJトラストカードをSAMURAI&J PARTNERS<4764>へ譲渡 0
2020年10月21日 プロスペクト<3528>の太陽光発電資産運用子会社を譲受 1.24
2020年11月20日 グローム・ホールディングス<8938>傘下でクラウドファンディング事業を手がけるLCレンディングを子会社化 0.00
2021年4月5日 [一部中止]JJTキャピタルなど韓国金融2子会社を現地社に譲渡 111.00
2022年1月12日 韓国のJT親愛貯蓄銀行などを傘下に持つNexus Bank<4764>を子会社化 0
2022年2月9日 HSホールディングス<8699>傘下のエイチ・エス証券を子会社化 55.50
2022年4月20日 ITサービス子会社のSAMURAI TECHNOLOGYを経営陣に譲渡
2022年11月14日 ミライノベート<3528>と合併へ

この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。

文:M&A Online編集部