極洋のイワシの缶詰

水産品の買い付けや加工のほか、すしネタなどの生食商材などを取り扱う極洋<1301>が、適時開示(投資判断に影響を及ぼす事実が発生した場合は適時開示が必要)ベースで、16年ぶりとなる企業買収に乗り出した。

水産物の買い付けや冷凍食品の製造を手がける、トルコのコチャマン・バルチシルック・イラジャット・ヴェ・イタラット・ティジャレット・アノニム・シルケッティ(バンドゥルマ市)を2024年3月下旬に子会社化する。

極洋は2024年3月期を最終年とする中期経営計画の中で、最終年に海外事業で300億円の売り上げを目指す目標を掲げており、2022年に東南アジア向け食品の生産や販売を行う子会社をベトナムに設立したほか、2023年には米国向けのカニ風味かまぼこの製造や販売を行う企業を北米に設立した。

今回のM&Aはこの海外事業拡大の取り組みの一環で、コチャマンの子会社化を機に欧州向けの食品の生産や販売事業を強化する。

海外事業拡大が狙い

コチャマンはエビやサケなどの水産物を原料とする冷凍食品を欧州向けに輸出しており、2022年12月期の売上高は1393万ユーロ(約22億円)、営業利益254万ユーロ(約4億円)、経常利益636万ユーロ(約10億円)だった。

ただ、子会社化が完了するのが2024年3月下旬のため、海外事業の売上高に貢献するのは2025年3月期からになる。

ちなみに同社は決算短信のセグメント情報で海外事業の売上高を公表していないため、目標の300億円を達成できたのかは不明だ。

このほか中期経営計画では、2024年3月期に売上高3000億円、営業利益70億円、経常利益65億円の数字目標を持つ。

こちらについては、当初は達成できる見込みだったが、2024年2月2日に行った業績見通しの修正で厳しい状況になった。売上高が380億円少ない2620億円(前年度比3.7%減)に留まる見通しとなったためだ。

水産事業や生鮮事業でマグロの販売が減少していることから、売上高の当初予想を引き下げた。

一方で利益の方は増加する見込みだ。営業利益は当初予想よりも1億円多い86億円(同6.1%増)に、経常利益も1億円多い86億円(同5.1%増)にそれぞれ引き上げた。相場が安定しているのに加え、値上げの効果が現れているため、上方修正した。

売上高は届かないものの、利益の目標はクリアできる見込みだ。今後策定されるであろう次期中期経営計画では、子会社化するコチャマンの数字が加わることもあり、より高い利益目標が設定されそうだ。


捕鯨からスタート

極洋は1937年に極洋捕鯨を創立したのが始まりで、翌1938年に捕鯨母船「極洋丸」が南氷洋に初出漁した。1942年には底曳網漁業を始め、1949年に東京証券取引所と大阪証券取引所に株式を上場した。

食品事業や水産事業、物流サービス事業を手がける現在の体制に移行したのは、1963年に米国アラスカ産のスジコの輸入を始め、海外買い付け事業に進出したのがきっかけ。

1970年には冷凍食品の製造を始め、1971年には冷蔵倉庫事業に着手。1973年には冷蔵運搬船を竣工し、冷蔵運搬船事業にも進出した。創業時の事業である捕鯨部門は1976年に日本共同捕鯨に譲渡した。

2007年にクロマグロの養殖事業に着手し、2012年にはクロマグロの完全養殖の事業化を目的に「極洋日配マリン」(現・極洋フィードワンマリン=愛媛県愛南町)を設立した。

M&Aについては件数が少なく、主なものは2008年に適時開示した海産珍味の加工や販売を手がけるジョッキ(東京都練馬区)の子会社化と、適時開示はしていないが2010年に実施したサケ製品の加工や販売の海洋フーズ(茨城県神栖市)の子会社化の2件に留まる。

ジョッキは2008年3月に、極洋が20%の株式を取得し、販路開拓や商品開発などで協業を始めた企業で、同年9月に保有割合を70%に引き上げることで連携を一段と強め、相乗効果を生み出してきた。

一方、海洋フーズは1987年の設立で、天然サケを用いた切身やフレークなどの加工販売を行っている。

中期経営計画では海外事業の拡大のほかに、食品事業の拡大、水産事業と養殖事業の収益安定化などを掲げている。

次期中期経営計画ではこうした目標が引き継がれることが予想されるため、引き続き海外企業の買収をはじめ、食品事業や水産事業、養殖事業などの分野でもM&Aの可能性はありそうだ。

極洋の沿革と主なM&A

主力の水産品や生食などが伸び悩み

極洋は2012年に設立した極洋フィードワンマリン(旧・極洋日配マリン)を2024年3月末に解散する。同社はクロマグロの安定的な供給を継続していくため、完全養殖を目指したが、漁獲規制などにより天然クロマグロの漁獲高が回復傾向にあるため役割は終えたと判断した。

これに伴って貸付金13億6500万円の回収が不能になる恐れが生じたと2024年2月2日に発表した。2024年3月期の業績への影響が見込まれるが「貸倒引当金を計上しており、業績に与える影響は軽微」としている。

クロマグロの養殖については、これまで通り子会社のキョクヨーマリンファーム(高知県宿毛市)と、キョクヨーマリン愛媛(愛媛県愛南町)で天然稚魚を成魚に育成する養殖事業を展開する計画だ。

極東の直近の決算である2024年3月期第3四半期の状況を見ると、サケ、エビ、カニ、魚卵などを取り扱う水産事業の売上高は989億1700万円で、前年同期よりも10.8%減少した。

すしネタを中心とする生食商材やマグロの養殖などからなる生鮮事業でも売上高は506億6400万円と、やはり10.0%減少した。

半面、冷凍食品や缶詰などからなる食品事業の売上高は504億1700万円で、12.5%の増加となり、冷蔵倉庫や運送などからなる物流サービス事業の売上高は12億1500万円で、こちらも19.0%の増加となった。

主力の水産品や生食などが振るわず、冷凍食品や冷凍倉庫などが伸びていることが分かる。

次期中期経営計画ではこの状況をどのような施策で修正するのか。コチャマンの子会社化などもあり、M&Aが少なからず影響を及ぼすことになりそうだ。

極洋の業績推移
2024/3は予想

文:M&A Online