数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「新規事業を立ち上げ第二本業へと育てる 地域コングロマリット経営」 船井総合研究所著、同文舘刊

少子高齢化や大都市へのヒト・モノ・カネの集中に伴い、地域の弱体化が指摘されて久しい。では、地域を地盤とする中小企業はどう活路を見いだせば良いのか。こうした問いに一つの答えを出したのが本書だ。

地域コングロマリット経営

タイトルにあるコングロマリットとは、多くの異なる事業を傘下に併せ持つ複合企業を指す。日本企業でいえば、総合電機メーカーや総合商社などが典型例とされる。もっとも、近年は、コングロマリット・ディスカウントという言葉が示すように、コングロマリットは企業価値を下げるというネガティブな文脈で語られがちだ。

これに対し、本書ではコングロマリットを肯定的にとらえる。特定の地域で複数の事業体と持つ経営のことを、「地域コングロマリット経営」と名づけ、その実践が企業の成長のみならず、地方創生のカギになると説く。

具体的には、地域中小企業に「中堅企業化」を提言する。売上高30億〜100億円までの企業を中堅予備軍としたうえで、100億円以上の中堅企業になるための方向性を示す。そのためには新規事業の取り込みなど多角化が必要となる。

実際、売上高100億円になると、企業の影響力が格段に変わるという。東京、大阪、名古屋を除けば、地域で優に上位1%の企業となる。「あぁ、あの会社」と言われるレベルになり、採用面でも営業面でも有利になる。

中堅企業化のメリットとして、地域の老舗企業が後継者難で売却先を探しているケースでは最初に話をもってきてもらえる。さらに、地元のスポーツチームのスポンサーを頼まれたり、地域からさまざまな協力依頼が来るようになる。地域で「なくてはならない会社」と思われ、採用や営業以外の経営面でプラスが生まれる。それが単なる多角化とは一線を画した地域コングロマリット経営の本領と強調する。

地域コングロマリット経営の戦略モデルとして異業種混合型、客層特化型、事業ドメイン特化型、サプライチェーン統合型、機能スピンアウト型の5類型を提示。それぞれについて各地の企業事例を紹介している。自社にマッチした戦略が見つかるかもしれない。

一般的なコングロマリットのイメージに最も近いのが異業種混合型は既存事業とはまったく異なる業種に参入するパターン。三つ目の事業ドメイン特化型は既存事業と同じ業種の中でニーズの異なる顧客を取り込んでいくパターンだ。

新規事業を始める際、自前で対応するか、それともM&Aを選択するか。新規事業に配置できる優秀な人材をどう手当てするのか。新規事業の成功確率をどう高められるか。また、ホールディングス(持ち株会社)化すべきか…。実践的な内容に富んだ一冊といえる。(2023年9月発売)