©2023 KOMA復活を願う会/DMM.com

11月10日公開予定の長編アニメーション『駒田蒸留所へようこそ』は、“働くこと”をテーマに、日々奮闘するキャラクターを描いてきた P.A.WORKSによるお仕事シリーズの最新作です。

世界でも注目が集まっているジャパニーズウイスキーの蒸留所を舞台に、“想い”を受け継いでいくことの大切さと難しさ、そしてその先にあるモノを描いた一作となっています。今年の第36回東京国際映画祭のアニメーション特集の一本にも選出されました。

あらすじ紹介

亡き父の跡を継ぎ、家業である駒田蒸留所の三代目社長に就任した駒田琉生(るい)。経営難に陥った実家の蒸留所の立て直しを考えた琉生は、災害の影響で製造できなくなった幻のウイスキー“KOMA(独楽)”の復活を実現させるべく奮闘する日々を送っていました。

そんなある日、転職を繰り返し、いまはWEBニュースの記者をしている高橋光太郎は取材のため駒田蒸留所を訪れます。お酒の知識もまるでない光太郎は空回りすることもしばしば。それでも取材を続けるうちに少しずつ蒸留所の面々と親しくなり、琉生の想いを深く知ることになります。

琉生と光太郎、全く違う道を歩んできた二人が出会ったことで、ともに自分の人生の在り方について刺激を受けるようになります。やがて「家族の絆」とも呼べる幻のウイスキーの復活を本格的に目指すことに…。

『駒田蒸留所へようこそ』画像2
©2023 KOMA復活を願う会/DMM.com

幻のウイスキーの復活を通して描く家族の物語

映画『駒田蒸留所へようこそ』は、災害などで大きく傾いた酒造工場の復活、さらには幻のウイスキーの復活の物語を通して、バラバラになってしまった家族の再生をも描くという幾重もの”復活”が重なり合い、話が進んでいきます。

光太郎の仕事や働くことに対する心境の変化など、サイドストーリーも巧みに展開されていて、何となくやりたいことがみつからない状況に身を置いている若者がやりがいと意外な形で出会う物語でもあります。

お酒とは縁遠い人にとっては、なかなか伺い知れない部分のあるウイスキー作りに関しても、最低限理解できるようになっています。しかも、その解説が変に説明臭くなっていないのもお見事と言えます。

日本のビジネスの代名詞でもある“ものづくり”に焦点をあて、91分という短い上映時間ですが、多層的でウイスキーのように濃密で熟成された映画に仕上がっています。物語のラストは希望は抱かせつつ、ハッピーエンドだけでまとめ上げなかったところも好印象でした。

『駒田蒸留所へようこそ』画像3
©2023 KOMA復活を願う会/DMM.com

等身大をアニメで描いたら

映画でもテレビでも(最近では配信作品も増えていますが)”アニメ”と言えば、空想科学やファンタジーに強いイメージがあります。例えば、スタジオ・ジブリ作品や新海誠監督作品、『ガンダム』や『鬼滅の刃』、『プリキュア』などです。

しかし『駒田蒸留所へようこそ』のように、P.A.WORKSの「お仕事シリーズ」(『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』『白い砂のアクアトープ』)と呼ばれる作品群は、”等身大の今”を生きる人々を描き、もちろんアニメ的な演出はありますが、ファンタジーではなく現実世界で起こり得る物語構成となっています。

アニメブームに乗っかって制作本数が増えるなかで、粗製乱造という品質低下や下請け制作会社の環境悪化など、マイナスの面も聞こえてきます。ただ最近は、アニメと一口に言っても、様々なジャンルの作品が発表されるようになりました。『駒田蒸留所へようこそ』は、そうした流れをくむ一本と言えます。

少し前の日本のアニメーションでは描くことができなかった“働き方”や“生き方”について、画力がリアリティ過ぎないゆえ、逆に我が事として考えることが出来る映画に仕上がりました。(2023年11月10日公開)

文:村松健太郎(映画文筆屋)

<作品データ>
原作:KOMA復活を願う会
監督:吉原正行
脚本:木澤行人、中本宗応
キャラクター原案:髙田友美
キャラクターデザイン・総作画監督:川面恒介
音楽:加藤達也
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:DMM.com
配給:ギャガ
©2023 KOMA復活を願う会/DMM.com
映画『駒田蒸留所へようこそ』公式サイト (gaga.ne.jp)

『駒田蒸留所へようこそ』ポスタービジュアル