ファンドに翻弄され続ける東芝の再建は…(Photo By Reuters)

東芝<6502>の再建に逆風が吹き始めた。同社はTOB(株式公開買い付け)による非公開化を目指しているが、それに伴う銀行団の融資判断が遅れている。景気の先行き不透明感や金利上昇懸念などから、東芝の返済能力が疑問視されているからだ。それにしても、なぜ東芝の経営再建はこうも難航するのか?

もはや東芝に経営再建の主導権はない

優先交渉権を得た国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)は、オリックス<8591>やローム<6963>をはじめとする国内企業約20社からの総額1兆円の出資と、銀行団からのシンジケート・ローン(協調融資)1兆2000億円)、併せて2兆2000億円でTOBを実行する予定だ。

しかし、東芝がこれだけ巨額の借入金を返済するのは荷が重いのは事実。2022年3月期の純利益は約1946億円で、すべて返済に当てても完済までに6年以上かかる計算だ。そのため銀行団は融資と引き換えに、新たな事業売却を求めている。が、東芝はこれ以上の事業売却は再建に支障をきたすと慎重だ。

一方、東芝は4月に経営再編策を外部から募集する前代未聞の事態に。これはアクティビスト(物言う株主)や外国人投資家との対立で、自社単独での経営判断が難しい状態になったからだ。5月には10社が応募したというが、11月11日の決算会見で東芝の平田政善CFO(最高財務責任者)は「公表できる事象はない」と大きな進捗がないことを認めている。

そもそも株式の非公開化は、2021年4月に当時の東芝社長の古巣だった欧CVCキャピタル・パートナーズが買収という形で提案したが、取締役会が拒否。上場を維持したままでの再建を目指すことになる。

その後、ファンドの推薦で東芝の社外取締役に就任したポール・ブロフ氏がトップを務める戦略委員会で、東芝を3分割してそれぞれ上場させる「3分割案」を決定。これにアクティビストが反対して「2分割案」を再提案した。ところが今度は米資産ファンドのファラロン・キャピタル・マネジメントなどが反発。「2分割案」も立ち消えになった。


「上場廃止」という痛みを避けたばかりに「泥沼」へ

つまり東芝の思惑とは関係なく、ファンド同士の「内輪もめ」で再建方針が定まらないという「カオス」状態に陥っているのだ。そこでファンドを「黙らせる」ためにTOBで非公開化して、「ご退場願う」というスキームに落ち着いた経緯がある。

だが、TOBが成立するかどうかも確実ではない。東芝の株価が下落し、TOB価格が目減りすればファンドは黙っていない。とはいえ株価が下がっているのに多額のプレミアムを上乗せしてTOB価格が高くなれば、その資金を融資する銀行団が難色を示すだろう。

東芝にしてみればTOBが成立したところで上場廃止となり、CVCの買収を受け入れたのと同じ状況になるだけだ。東芝はこの1年を無駄に費やして、自身が消耗しただけに終わった。今となってはCVCに買収された方が良かった状況といえる。

最初のボタンの掛け違えは、東芝が上場廃止を回避するため、2017年11月に6000億円の第三者割当増資を実施したこと。この時に旧村上ファンド出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネジメントや米サードポイント・マネージメント、米サーベラス・キャピタル・マネジメント、米グリーンライト・キャピタルなどのアクティビストが大口株主に名を連ねた。そして、これらのファンドが東芝の経営を揺さぶることになる。

そもそも、この時に東芝が上場廃止を甘んじて受け入れて自力再生による再上場を目指していれば、5年に及ぶ経営の混乱は避けられていた可能性が高い。2度も上場廃止による東芝再建のチャンスがあったにもかかわらず、上場維持にこだわりすぎたばかりに経営は混乱を極めた。

おまけに上場廃止という東芝自身が最も避けたかった結末の実現に、嫌々ながらも全力を傾けざるを得ない皮肉な結末となりそうだ。経営再建に伴う「痛み」を避けようとすれば、企業を致命的な状態に追い込むことを東芝は身をもって教えてくれたと言えるだろう。

文:M&A Online編集部

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