モバイルマーケティングプラットフォームを提供するTUNEは米国時間の7月20日から21日にかけてシアトルにて「POSTBACK2017」を開催した。本イベントでは「TUNE Marketing Console」の新機能が複数公開された。

 モバイルマーケティングプラットフォームを提供するTUNEは米国時間の7月20日から21日にかけて、「POSTBACK2017」を開催した。本イベントでは、同社のモバイルマーケティングプラットフォームの中枢となるデータ計測基盤「TUNE Marketing Console」の新機能が発表された。

 まず、主だった新機能として2つを紹介したい。1つ目は、マーケターが広告パートナーとアドフラウドについてのデータを共有し、アドフラウドを行うパブリッシャーに対して協働して対抗するための機能だ。マーケターや広告パートナーは、システムがレコメンドするアドフラウド推定ルールを承認することで、アドフラウドが疑われるトラフィックを広告指標から自動的に除外し、以後広告を配信しないようにすることができる。

 2つ目は、個人ベースでモバイル・Web・テレビといったデバイスでの広告への反応データやアプリ内の行動データおよび位置情報を蓄積し、個人単位でカスタマージャーニーを明らかにし、同社のモバイルマーケティングプラットフォームの広告配信・アトリビューション分析・アプリ内通知を連動させることで高度なパーソナライズ施策を可能にするというもの。本レポートではこれらの新機能を中心に、イベントを振り返っていく。

 POSTBACK2017はTUNEのCEOであるピーター・ハミルトン氏が花道から躍り出て朗々と歌い上げるミュージカル風の演出で幕を開けた。ハミルトン氏はプロのオペラ歌手を務めながら、デジタルマーケティング界でも持ち前の起業家精神で才能を発揮するという異例のキャリアを持つ人物なのだ。

 そんなハミルトン氏はキーノートの冒頭で、POSTBACKにかける思いを次のように語った。「私たちTUNEは、広告パートナー会社(ad partners)とマーケターが同じ場所に集まることによって、新しいビジネスの機会が生まれることを願っています」(ハミルトン氏)

 ここでいう広告パートナー会社とは、アドネットワークやパブリッシャー、そしてセールスフォースやmParticleのようなテクノロジープロバイダーの他、アナリティクス・決済・クリエイティブ・メール・アドフラウド対策・リードジェネレーションといった多彩な機能を提供するアドテクノロジー企業群を指している。

 つまり、イベントを通じてTUNEによる最新のソリューションを体験してもらうだけでなく、マーケターやエージェンシーとアドテクノロジー企業が新たな関係を結びビジネスを前進させる環境を提供したい、というのがPOSTBACKの狙いなのだ。そしてこの発想は、「TUNE Marketing Console」を基盤としてマーケティングプラットフォームを目指すTUNEのビジョンそのものだといえそうだ。

 実際にPOSTBACKの会場ではネットワーキングのための時間や場所がふんだんに用意されていた。特にスポンサーブースがあるわけではなく、人々が自由に出会い、積極的に情報を交換しているのが記者には新鮮に映った。TUNEの発表によると今回のイベントには25カ国から1,000人近くが参加したという。

 さて、キーノート講演に話を戻すと、ハミルトン氏は「マーケティングが機能するとはどういうことか」という問いをきっかけに、モバイルマーケティングが直面している問題を次のように列挙した。



多様化し拡大するデータ群をうまく活用できていないこと
アドフラウドの脅威に対抗できていないこと
ソリューションが増えすぎていて個々がバラバラになり統合できていないこと
位置情報マーケティングが未発達であること
インストールやCVなど生活者の反応に注目するパフォーマンスマーケティング領域とブランディング施策およびアプリ内データをワンストップで計測・評価する仕組みがないこと

 ハミルトン氏は、TUNEがこうした問題に取り組むにあたって「すべてのマーケティング施策は計測・評価されるべきだ」という信条を貫いていることを強調した。この信条は、Webやアプリといったデバイスを越えた計測を行い、顧客体験をムダのない合理的なものにしたいという具体的な方針へとつながり、TUNEのソリューションを方向づけている。

 以下、キーノート講演で披露されたTUNEの新しいソリューションを紹介していこう。



●アドフラウド対策「TUNE Fraud Prevention」

 すべてのマーケティングは、パフォーマンス、つまり生活者の行動やそれによって生じた結果によって評価されるべきだとハミルトン氏は考えている。そのためには、アドフラウドを適切に排除することが重要になってくる。

 そもそもTUNEはモバイル計測基盤である「TUNE Marketing Console」による精度の高いデータ蓄積を強みとして、「Attribution Analytics」(アトリビューション分析)「App Store Analytics」(ASO)「In-App Marketing」(アプリ内通知)などのソリューションを提供してきた。

 たとえばマーケターは、アプリインストールにつながった広告やオーガニック流入についてのアトリビューションデータから、インストール後のアプリの使用データに至るまでをワンストップにデータ集積し、セグメントを設けて広告やプッシュ通知を最適化することができる。

 ところが広告流入やインストール数についてのデータが改ざんされてしまうと、「CPI」をはじめとする評価指標が不確かなものになり、実体をともなわない広告への支払いが生じるばかりか、誤ったPDCAにつながりかねない。

 ちなみにForrester社の調査によると、2016年において74億ドルもの金額が低品質な広告に使われ、そのうち過半数がアドフラウドや「見えない広告」に使われたものだという。74億ドルの半分にあたる37億ドルがアドフラウドに使われたと仮定すると、これは電通の海外子会社カラが2016年9月8日に発表した「世界の広告費成長率予測」から算出できる2016年における全世界のネット広告予算1,500億ドルの約2.5%にあたる金額だ。2.5%もの見えない広告マージンがあると考えると、恐ろしい数字ではないか。

 こうした深刻な背景をふまえ、TUNEはアドフラウド対策の「TUNE Fraud Prevention」を発表した。この取組の斬新なところは、マーケターと広告パートナーがデータを共有できるので、両者が協働してフラウドを行っているパブリッシャーを特定して締め出せることにある。なお、このソリューションは「TUNE Marketing Console」の一機能として提供される。

 このソリューションはアドフラウドだと思われるトラフィックを特定しアドフラウドの統計分析を表示するだけでなく、デバイスや位置情報やキャンペーンのデータをもとにアドフラウドを行っているトラフィックソースを推定して、アドフラウドを除外するルールを自動でリコメンドしてくれるというもの。このルールをマーケターが承認すると以後はアドフラウドとしてフィルターして除外される。いわば、「守りのMA」としての役割をはたすわけだ。



●流入広告のクリエイティブベースで顧客をセグメント

 加えて、広告クリエイティブベースの計測ツールであるCeltraとのアライアンスは、「TUNE Marketing Console」の可能性をさらに拡大したといえそうだ。この連携によって、たとえば、どのクリエイティブの広告で流入した顧客がアプリ内でロイヤリティーが高いかを評価し、最も効果的だった広告クリエイティブに予算を集中することが可能になる。

 他にも、流入のきっかけとなった広告クリエイティブごとにユーザーをセグメントし、広告と同じクリエイティブをプッシュ通知にも表示させてエンゲージメントを深めるといったことも可能だ。



●位置情報とMA機能を連携させ、最適なタイミングでのコミュニケーションを実現

 位置情報はマーケターがTUNEのソリューションにおけるMA機能を活用して「しかるべき人に、しかるべき時と場所で」接触するために非常に有効な情報だ。たとえば、小売企業であれば、アプリをインストールしている生活者が店の中に入り、買い物をしているタイミングで、「In-App Marketing」の機能によってアプリ通知をオンにするといったことが可能になる。生活者にとって最も快適な形でアプリ通知を行うことができるわけだ。



●デバイスを越えた人単位の計測を可能にする「TUNE People Service」

 最後にハミルトン氏は、「TUNE Marketing Console」のデータ基盤再構築によって可能になった大型の新機能を紹介した。モバイル・Web・デジタルテレビの広告への反応データや、アプリ内行動データ、位置情報といった生活者の行動を人単位で計測する「TUNE People Service」機能である。

 この機能は、個々人のカスタマージャーニーを発見し、パーソナライズドマーケティングを実現して、ROIを正しく計測し、アドフラウドを発見するのに役立つものだという。

 従来の計測ツールでは、生活者がモバイル広告に接触したときに使用しているデバイスIDを取得していたが、同じ生活者が複数のデバイスを使っていたり、アプリやWebの両方を見ていたりすると、同一人物に関係するはずの膨大でバラバラのデータが生じてしまい、マーケターはお手上げとなるのが常だった。これに位置情報が加わるとデータはさらに複雑になる。データベースの「行」が「デバイス」である以上、特定の生活者のカスタマージャーニーを正確に描くことは実質的に不可能だった。

 そこでTUNEはデバイスではなく人に注目してデータ基盤を構築し直した。具体的には、データベースの「行」を「人」にしたのだ。バラバラのデータがどの生活者に紐づくものなのかを特定し、クロスチャネルの広告データとCRMのID、デモグラフィック情報、位置情報などといった情報をリンクできるようにした。

 「このように個人を軸として、広告配信やアトリビューション分析の機能を備えたマーケティングデータベースはいまだかつて存在しませんでした。いわばMAツールとアトリビューション分析ツールと、CRMデータベースが一つのシステムに備わっているようなものです。しかも、新しいデータが追加されれば既存の人の行へとひもづけられるのです」(ハミルトン氏)

 この新機能について、TUNEのCTOであるダン・コーチ氏は「one to manyのマーケティングの時代ははっきりと終わった。個々の生活者がどのような行動をとってきたのかを完全に把握し、パーソナライズされたマーケティングを行う方法をマーケターは求めている」と語っている。

 こうしてTUNEは、個人の行動を正確に把握し、個人のカスタマージャーニーを明らかにして、高度にパーソナライズされたマーケティングキャンペーンを行うためのデータ基盤を構築したといえそうだ。

 マーケターは「TUNE Marketing Console」にビルトインされた「TUNE People Service」機能を活用することで、アプリ内行動や広告接触データをもとに、自社の顧客が誰なのか、個人情報には触れずにはっきりと把握することができる。そのうえで、その特定の個人に対して最適なマーケティング施策を打つことができるようになる。先に紹介した位置情報も応用可能で、店舗に入る前に個人に最適化したオファーを送ることも可能だという。

 最後にハミルトン氏は、TUNEはマーケティングのパフォーマンスを計測・評価するという信念を、透明性・位置情報・顧客中心という3つのポイントを重視して突き詰めていくことを改めて述べ、来場者に対して「共に業界を作り上げてきましょう」と呼びかけ、講演を締めくくった。

MarkeZine編集部[著]