町の蕎麦屋にも中華そばがあるって知ってました? しかも自家製麺、独自のスープという渾身の一杯で、これがしみじみと美味しいんです! 東京都内で楽しめる蕎麦屋のラーメンを探してきました。今度は「もり」や「かけ」じゃなく、ラーメンをぜひ!

『ほていや』@三軒茶屋

_28A7311_1623636478 ラーメン(550円)
スッキリしつつコクがあり、ほんのりダシの風味があるスープをまずはすすって。麺がよく絡み全体にやさしい味 _28A7297_1623637022 『ほていや』ラーメン(550円)

三茶で愛され続ける ほっこり感抜群の味

大正14年創業で現ご主人は三代目。3人の娘さんがチームワークも抜群に働くという何ともアットホームな雰囲気がいい。

創業当時からあるというラーメンは、まずスープが秀逸。鶏ガラで取るスープで焼豚も煮るゆえ豚肉からもエキスが。蕎麦屋の和風ダシも加わっている。きれいにしてほどよいコク。

ここに細めの縮れ麺がいい感じに絡む。ズズズっとやれば直球が投げ込まれた感じ。中華そばっていいなあってほっこりする。

「昔はストレート麺。和ダシも入れてなかったんだけどね」

という話で、徐々に改良された完成形がこの味だ。ぜひしみじみと味わっていただきたい。 旨さのポイント _28A7282_1623636632 秘伝のスープ。三姉妹いわく「この味は昔から変わってない」 _28A7274_1623636673 カツカレーライス(950円)
こちらも大人気メニュー。肉たっぷり。実はここにもスープが使われ、旨みとスパイシーさのバランスが抜群。バクバクいけてしまうこと必至 _28A7335_1623636750 左から、渡辺友子さん、原由美子さん、原直子さん
「心を込めてお迎えして心を込めて作ってます!」 [住所]東京都世田谷区太子堂2-32-3
[電話]03-3413-5701
[営業時間]11時45分~15時(14時半LO)、17時半~20時半(20時15分LO)
[休日]火、第4火・水
[交通]東急田園都市線三軒茶屋駅北口から徒歩7分 _28A7318_1623636932 『ほていや』

『朝日屋』@代々木上原

_28A7189_1623637000 タンメン(800円)
ほどよくコクのあるスープの中に野菜やコマ肉の旨みが溶け出して一体化。麺の喉越しもいい。さっぱりめなホッとする味が愛されている。野菜はキャベツの代わりに白菜のことも _28A7180_1623637042 『朝日屋』タンメン(800円)

スープと馴染んだ野菜がたっぷり

創業は大正8年。「ラーメンは昔からあって、みそラーメンは僕が中学のころから」と語るのは現ご主人。出前先で先生がリクエストしたのがきっかけ。地元に根ざした店なのだ。

タンメンもまたそれと前後して生まれた。豚ガラと鶏ガラを使って取ったスープがコクを感じさせつつ、さっぱりしていて人気だ。

タンメンの野菜は炒めたりせず、このスープでそのまま煮て塩・胡椒で調味する。ほどいい弾力のストレートの中華麺。これも昔からの自家製だ。野菜もたっぷり。

逆に麺をうどんや蕎麦に変えてオーダーする人もいるくらい。そんな気持ちがよくわかるやさしい味だ。 旨さのポイント _28A7169_1623637217 野菜は炒めずスープに直接投入。ほどよくクタッとして一体化  _28A7137_1623637255 生姜焼(900円)
定食はご飯なしの注文もOK。人気の生姜焼きは生姜がよく効いて、たっぷりのバラ肉の旨さが口の中に広がる _28A7219_1623637290 店主・吉田雅裕さん(左)、佳子さん(右)、小熊千恵美さん(中)
昔からの家族経営でみんなでやってます [住所]東京都渋谷区西原3-25-4
[電話]03-3466-0336
[営業時間]11時~20時
[休日]土
[交通]地下鉄千代田線ほか代々木上原駅北口2出口から徒歩7分 _28A7112_1623637371 『朝日屋』

『そば処 更科』@新宿御苑

_28A7353_1623641613 ラーメン(648円)
自家製の麺とスープに、メンマと青菜、焼豚、ネギがのる。デフォルトともいうべきシンプルさにして言うことないバランス。魚介は使わないが、店内に漂う蕎麦の香りが鼻をくすぐり、隠れたアクセントに
_28A7374_1623647376 『そば処 更科』ラーメン(648円)

シンプルにして抜群の完成度 戦後すぐから変わらぬ旨さ

昔ながらの町の蕎麦屋然とした佇まいもいいのだが、蕎麦よりもラーメンの注文が多いというくらいの人気の店がこちら。

創業は昭和10年、そしてラーメンは戦後すぐに誕生したという。「蕎麦が支給で手に入らず、荻窪の闇市で小麦粉を買って麺を打ったのが始まり」だそうで、以来、麺もスープも焼豚もすべて自家製だ。

スープの材料は鶏ガラ、豚骨、ネギのみとシンプル。豚骨が前に出すぎることはなく、いい塩梅のコクがある、きれいな醬油味。

「まず麺から食べてほしい」という麺は、のびがよくつるりと食感がいい。麺といいスープといい、余計なものはなくして抜群のバランス、完成度なのだ。

思わず懐かしい、変わらぬ旨さがここにある。 旨さのポイント _28A7381_1623641763 自家製の麺は細めのストレート麺。少しもちもちっとした食感で旨みがある _28A7344_1623641797 もつ煮込み(540円)
やわらかくとろけるように煮込まれたもつは、コクのある味噌味。ラーメンの前にこれで1杯も悪くない _28A7391_1623641829 三代目・髙橋 正さん、敦子さん
「期待を裏切らない普通を大事に。愛情が勝負です」 [住所]東京都新宿区新宿1-30-5
[電話]03-3351-2951
[営業時間]11時半~15時、17時半~20時半
[休日]土・日・祝
[交通]地下鉄丸ノ内線新宿御苑前駅2番出口から徒歩3分 _28A7387_1623641972 『そば処 更科』

『そば処 池乃屋』@氷川台

_28A7508_1623644791 チャーシューメン(750円)
スープに馴染んだ肉々しい焼豚のルックスに、ひと目で食欲をそそられる。濁らないように丁寧に仕込まれたスープは、しっかり輪郭のある醬油味。ナルト、メンマ、カイワレものる _28A7514_1623647415 『そば処 池乃屋』チャーシューメン(750円)

透き通ったコクありスープに縮れ麺、焼豚の旨さが秀逸

庶民的な小さな商店街の一角。昭和32年創業の店は、町の食堂として親しまれている。ラーメンは創業当時からあり、ワンタン、味噌、辛味ちゃんぽんなどもあって種類が多いのも特徴だ。

自家製の肉々しく大きな焼豚が入ったチャーシューメンは、「いつもコレ」というお客さんもいる人気メニュー。

鶏ガラとゲンコツ、ネギを使い、チャーシューの煮汁も半分戻すというスープは見た目はスッキリ。醬油味の向こうに旨みとコクがある。

そしてやはり自家製の縮れ麺の具合がいい。細めでコシがありスープとよく絡む。水から丁寧に煮込まれた焼豚はやわらかくも、噛みしめるほどに旨くて思わずニンマリ。

輪郭のしっかりした、また食べたいと思わせる一杯だ。 旨さのポイント _28A7498_1623647450 天候によって水分も加減し、毎朝打つという自家製麺。まとめるタイミングで縮れ具合が決まる。豚肩ロースを水から煮込んだ立派な焼豚にはファンが多い _28A7491_1623647476 カツ丼(750円)
丼物も人気高し。トンカツに蕎麦用のつゆとカエシを使った少し濃いめの味がいい _28A7528-1_1623647508 三代目・大根原政人さん
「毎日仕込む焼豚は数量限定なので売り切れ御免です!」 [住所]東京都練馬区氷川台4-16-6
[電話]03-3933-3322
[営業時間]11時~15時、17時~20時
[休日]日
[交通]地下鉄有楽町線ほか氷川台駅1番出口から徒歩9分 _28A7479_1623647583 『そば処 池乃屋』

おと週無形文化遺産に認定!

武内(以下武)「いやあ出揃いましたね、蕎麦屋のラーメン。けっこうあちこち行きましたよね」

池田(以下池)「うん。改めて意識してまわってみると、これがなかなか楽しいんだよね」

武「へー、どんな印象が?」

池「旨い蕎麦屋のラーメンは、心温まる老舗にあり、かな」

武「昔からの町の蕎麦屋というか、丼物があったり、カレーライスもあったり……」

池「そうそう。お品書きの端に〈中華の部〉とかあったりして、さりげなくラーメンとかチャーシューメンとか書かれていて。スタートは昭和の頭とか、戦後すぐとか。絶滅危惧種ではあるけど、馴染みの客に愛され続けて残っている味は……」

武「シンプルだけど旨い」

池「それだ! 基本は鶏ガラベースの醬油味かな。そこにメンマ、焼豚、ネギ、青菜あたりがデフォルトで」

武「うん、うん」

池「でも具材も店ごとに微妙に違って、ナルトやワカメ、海苔、青菜もチンゲン菜がのったりとか。またその店の味とフィットしてるんだよな」

武「スープもシンプルゆえに味わい深い気がします」

池「うん、同じ醬油味でも少しずつ違う。蕎麦屋の和ダシをちょっと加えたところもあるし。澄んだスープのコクと風味をじわっと味わいたいね」

武「麺はどうですか?」

池「これまた自家製麺のところも多いんだよね。昔ながらの手作りで丁寧に打っている」

武「なんか、ズズズってやったときの食感がそれぞれ。スープと絡んでよく出来! って感じ」

池「焼豚の旨さもそれぞれ楽しみだし、ともかく全体のバランスが秀逸で完成度が高いよね」

武「醬油味以外もありますね」

池「うん、店によってタンメンがあったり、みそラーメン、五目中華そばとか。実はそんなバリエーションも密かに楽しみ」

武「五目中華そばには伊達巻とかかまぼこのってる店もあった」

池「だよね。でも、何れにしても主張し過ぎない、ホッとするような味ってのが共通している気がする。しみじみ旨い、これがラーメンだよなあって味。おと週無形文化遺産に認定!」

武「うああ、食いたい~!」 撮影/小澤晶子 取材/池田一郎
※店のデータは、2019年2月号発売時点の情報です。

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