新大阪駅周辺の再生計画

 大阪府市は新大阪駅(大阪市淀川区)周辺の新しいまちづくり方針をまとめた。リニア中央新幹線延伸などを見据えて駅周辺を抜本的に変える構想で、新大阪の新都心化が動き出す。

 春らしい暖かさが戻った3月末、東京からの新幹線が到着するたびに、新大阪駅の改札前に長い列が生まれる。欧米やアジア各国からやってきた訪日外国人観光客の団体で、改札を抜けると、添乗員の案内で構内の大阪メトロ御堂筋線やJR京都線へ向かう。訪日客の目的地は、大半が大阪市の繁華街だ。

 米国カリフォルニア州から来た若い会社員の女性は初来日。同僚とともにツアーに参加したそうで、

「大阪はおいしい食べ物がたくさんあると聞く。待ち遠しい」

と笑みをこぼす。だが、駅を出て新大阪駅周辺に足を向ける団体は見かけなかった。訪日客にとって新大阪駅は新幹線と在来線、地下鉄の“乗換場所”という認識なのだろう。

新大阪駅改札に並ぶ訪日客の団体(画像:高田泰)

新大阪駅の拠点化へ新たなまちづくり方針

 そんな新大阪駅の現状を変えようとする新しいまちづくり方針が、大阪市役所で開かれた新大阪駅周辺地域まちづくり検討部会で決まった。部会には、内閣府や国土交通省、鉄道事業者、経済団体の関係者、学識経験者も出席し、大阪府市が提出した素案を了承した。

 新方針は、新大阪駅周辺が2022年に都市再生緊急整備地域に指定され、北陸新幹線延伸で新駅の位置案が新大阪駅南側と示されたことなどを加えて旧方針を更新し、阪急電鉄十三駅(淀川区)、淡路駅(東淀川区)周辺のエリア計画を新たに含めている。

 新大阪駅は1964(昭和39)年の開業以来、大阪の玄関口になってきた。現在も新幹線や在来線、地下鉄の5路線があり、北陸や山陰、南紀などへ向かう特急も乗り入れるが、大阪都心部のJR大阪駅、大阪メトロ梅田駅(ともに北区)まではJR京都線や大阪メトロ御堂筋線で4〜6分の位置。新幹線で到着した観光客やビジネス客の多くが素通りしている。

 新方針では新大阪駅周辺に国内外から集まる人の交流施設や観光施設、商業施設などを整備し、西日本を引っ張る拠点にすることを目指している。想定する再整備の完了時期は20〜30年後。東京都港区から名古屋市を通って整備されるリニア中央新幹線、福井県敦賀市から京都市を経由して延伸する北陸新幹線の終着駅になることを意識した計画だ。

 地下に北陸新幹線の駅設置案が提示された新大阪駅南側広場に広域交通結節拠点の整備、山陽新幹線高架北側に新大阪駅と十三駅を結ぶ阪急電鉄の新大阪連絡線駅の設置が盛り込まれたほか、駅利用者が歩きたくなる街の形成を目標に掲げた。さらに、都市再生緊急整備地域内では複数の民間まちづくり組織が再開発を視野に動き始めている。

機能集約後の再開発が計画される大阪市の柴島浄水場(画像:高田泰)

阪急十三駅と淡路駅周辺をサブ拠点に

 新大阪駅から直線距離で2km足らずの十三駅と淡路駅は、新大阪駅を補完するサブ拠点と位置づけられた。十三駅は阪急電鉄の神戸線、京都線、宝塚線が乗り入れるが、阪急電鉄は新大阪連絡線に加え、大阪駅うめきたエリア地下ホームと結ぶなにわ筋連絡線の整備を計画している。完成すれば駅の利便性がさらに大きく高まることは間違いない。

 新方針には駅と周辺の一体整備が盛り込まれた。阪急電鉄が駅舎を建て替えて高層化する計画を持つからだ。駅を取り囲むように広がる商店街の活性化、淀川河川敷の魅力向上なども打ち出している。

 淡路駅は通勤特急以外の全車両が停車する阪急京都線と千里線の乗換駅で、大阪メトロ堺筋線の列車も乗り入れる。約300mの場所におおさか東線のJR淡路駅が2019年に開設され、新大阪駅からの移動が楽になった。

 再開発用地として挙げられたのは、大阪市が機能集約を計画している柴島(くにじま)浄水場(東淀川区)。浄水場用地約46万平方メートルのうち、約12万平方メートルで新大阪エリアを補完する都市機能整備を目指している。阪急線の連続立体交差事業で生まれる高架下の開発も推進する構えだ。

リニア延伸など大型計画が続く新大阪駅(画像:高田泰)

品川駅や名古屋駅に見劣り

 新大阪駅周辺は東海道新幹線の開通に合わせて駅が開業した当時、周囲に田園地帯が広がっていた。本来なら新幹線を都心部の大阪駅に延伸させたいところだが、大阪駅は当時から混み合っていたうえ、将来の山陽新幹線整備を考えると遠回りになる。このため、大阪駅から近く、開発の余地が大きい新大阪駅が選ばれた。

 大阪駅南側にあった繊維問屋街が1969(昭和44)年、新大阪駅北側に移転してきたのをはじめ、キーエンス、日清食品、ライフコーポレーションなど大企業の本社も徐々に集まって周辺が次第にビジネス街の様相を示してきた。しかし、線路だらけで歩行者動線が複雑な駅周辺は「迷路」と呼ばれ、新幹線を降りた乗客がくつろげる場所がそれほど多くない。

 民間の日本プロジェクト産業協議会関西委員会は2018年、リニア中央新幹線が通る予定の品川駅(東京都港区)や名古屋駅(名古屋市中村区)に比べ、新大阪駅が都市機能や交通インフラで見劣りするとして、駅周辺の再開発を求める提言を国交省近畿地方整備局長に提出している。

 西日本の巨大ターミナルを見ると、大阪駅、名古屋駅、京都駅(京都市下京区)とも開設当時、街外れに位置したが、運行路線の充実や駅周辺の開発で都心部といえる姿に進化した。新大阪駅も開業から60年余が経過してようやく進化のときを迎えようとしているように見える。大阪府市でつくる大阪都市計画局拠点開発室は

「新方針に基づき、官民の力を結集したい」

と意気込みを語った。リニア中央新幹線や北陸新幹線が乗り入れるころには、淀川をはさんだ新大阪駅と大阪駅がツートップとなって関西をけん引することを期待している。