「まあ、そのー」は、独特のだみ声で演説する田中角栄元首相。「あー、うー」という口癖は大平正芳元首相。政治家の物まねをして、権力を笑い飛ばすのは庶民のささやかな楽しみである。最近、政治家の物まねをあまり聞かなくなった気がする。個性的で人間味のある政治家が少なくなったということか。茶の間の関心が政治の世界から離れつつあるとすれば気がかりだ。安倍政権の閣僚の問題発言が止まらない。「出て行きなさい、うるさい」「学芸員はがん。連中を一掃しないと」。発言の真意はさておき、敵意むき出しのとげとげしさだ。物まねのネタとしてもふさわしくない。事実誤認まであるとは情けない。大英博物館が改装に反対した学芸員を解雇したというエピソードは大臣の記憶違いだった。思い込みでやり玉に挙げられた学芸員たちはさぞ悔しかろう。「自分の発言が日本、全世界にどういう影響があるかを考えた上で初めて一言を発していた」。大平氏の口癖について、秘書官として仕えた元衆院議員の森田一氏の見立てである。なるほど、政治家にとって言葉は命そのものに違いない。それなのに、大臣たるものが人に厳しく、自分に甘くでは、政治離れが加速するばかりだろう。安倍1強の下、慢心や緩みがあるのではないか。「国会議員の発言は国民大衆の血の叫び」と訴えた田中氏のだみ声が懐かしい。