イチロー選手の言葉にしては珍しく感情的に聞こえた。「空気感があるでしょ、4球の間に。面白くないね」。つい先日の試合で打席に入るや四球を告げられた。相手監督が敬遠の意思表示をするだけで一塁に歩かされる。試合時間の短縮を目的にした大リーグのルールはなるほど味気ない。同じ四球でも、25年前の夏の甲子園で石川・星稜高校の松井秀喜選手が受けた5打席連続敬遠は、一挙手一投足に緊張感がみなぎった。こちらのルール変更は高校球界に一石を投じるに違いない。来春の選抜大会から延長13回以降に採用するタイブレーク制である。国際大会にならうなら、点が入りやすい無死一、二塁をお膳立てする仕掛けだ。引き分け再試合をなくして投手の負担を減らす狙いという。このルールの下であの一戦はどんな決着を見たことか。1974年の夏、鹿児島実業の定岡正二投手が延長15回のシーソーゲームを1人で投げ抜いた東海大相模戦だ。球史に残る名勝負と語り継がれることはなかったかもしれない。“筋書き”に沿った攻防に違和感はぬぐえないが、タイブレークは戦術の幅を広げる可能性を秘めていよう。高校野球ファンとしてはそこに期待したい。選抜につながる九州大会の県予選が、きのう始まった。夢舞台を目指す球児がいる。そのはつらつとした空気感が何よりの魅力だと改めて気づかされる。