今から41年前、ボクシング世界ヘビー級王者のモハメド・アリと、プロレスラーのアントニオ猪木が対戦した。世界中から注目された異種格闘技戦である。試合前から激しい舌戦が繰り広げられた。アリが「このペリカン野郎め」と言えば、猪木は「日本語を教えてやる。アリは小さな虫けらのことだ」と応じた。言葉の応酬が熱を帯びるほどに、試合への関心は盛り上がる。プロレスの世界の「お約束」だろう。だが、国際政治の場でこんなやりとりを見せられてはたまらない。北朝鮮はグアム近海へのミサイル発射計画で米国を挑発する。トランプ米大統領は「見たこともない炎と怒りに見舞われる」と物騒この上ない。無法を続ける北朝鮮の瀬戸際外交は、緻密に計算されているのか。トランプ氏はいらだちをぶちまけただけなのか。双方の真意は分からない。行動の予測できないトップ同士だけに、ひやひやものだ。ここにきて北朝鮮は「米国の行動をもう少し見守る」と軟化する兆しを見せた。米国の国務長官らも対話の用意があると表明した。いずれにせよ、ミサイル発射の強行は絶対に許されない。プロレス興行にも関わった経歴のせいか、トランプ氏の言動は虚実ないまぜに見える。圧力だけでも、対話だけでもうまくいかない国が相手である。超大国のリーダーの本音は「戦争は避けたい」と信じたいが、どうだろう。