ロシア民話の「おおきなかぶ」は、子どもたちに人気の物語だ。彫刻家・佐藤忠良さんの挿絵がついた福音館書店の絵本に親しんだ人たちも多いのではないか。とてつもなく大きく育ったカブはなかなか抜けない。おじいさんがおばあさんや孫娘を次々に呼び、犬や猫たちまで動員して「うんとこしょ、どっこいしょ」と掛け声をかける。長く連なって引っ張るイラストはユーモラスだ。さらに大勢が連なればカブどころか人命の救助までできてしまうようだ。米南部フロリダ州で先日、海水浴客ら約80人が浅瀬から100メートル近くの「人間の鎖」を作り、沖に流された一家9人を助けた。最初に子ども2人が沖合から戻れなくなった。救助しようとして両親や祖母ら7人が次々に海に入ったが全員が流されてしまう。「天使のような人たち」に救われたと感謝する母親の言葉は心から出たものだろう。一家が流されたのは、離岸流とみられる。海水の循環現象で岸から沖に向かう急激な潮の流れである。泳ぎの達者な人でも流れに逆らって抜け出すのは難しい。国内でも毎年のように巻き込まれる事故が起きている。県内の多くの公立学校が夏休みに入った。海水浴に出掛ける機会も増えよう。「うんとこしょ」と助けてくれる「人間の鎖」はどこにでもあるわけではない。離岸流のほか天候の変化などにも気を配って安全に楽しみたい。