横浜市内で野宿をするなど、親の虐待のために学校に通わずに育ち、17歳の時に祖父母を殺めてしまった少年事件を題材にした本「誰もボクを見ていない」を執筆した毎日新聞記者・山寺香さんを招いたトークイベントが、7月23日午後、さくらWORKS<関内>(横浜市中区相生町3)で開催される。当日の参加費は一部を除き、少年の教育・更生のために使われる。(ヨコハマ経済新聞)

 トークイベントでは「なぜ横浜で救えなかったのか」という制度の限界・改善点にフォーカスしながら、社会の側が一歩踏み込んで声を出せない子どもたちに気づき、セーフティネットにつなぐために何ができるのかを参加者とともに考える。

 事件は、2014年3月に発生。埼玉県川口市で73歳と77歳の高齢者夫婦が殺されているのが発見され、約2カ月後に孫である17歳少年が強盗殺人容疑で逮捕された。
さいたま地裁、東京高裁、最高裁まで争われた裁判の過程で明らかになったのは、ギャンブル依存と経済観念のない親たちに振り回され、義務教育も満足に受けることができずにいた少年の過酷な生育歴だった。

 山寺さんは、さいたま支局の司法担当としてこの少年の裁判報道に関わった。その裁判を通じて「周囲の大人の誰かが、犯罪に手を染める前に、少年を救い出すことはできなかったのだろうか」という疑問が膨らんでいったという。

 その疑問を、山寺さんは新聞の連載記事で報道したが、さらに刑に服している少年との手紙や面会を重ね、少年の手記も加え、内容を充実させたうえで上梓したのが2017年6月に出版された「誰もボクを見ていない」だった。

 横浜でトークイベントを行うきっかけは、少年が一時、横浜市中区に居住し、生活保護につながっていたことがあるなど「ゆかりの場所」でもあったからだ。直前まで横浜公園付近で乳児の妹の世話をしながら野宿生活をしていた少年は、短い生活保護生活の間に、フリースクールに通うなど、つかのま学びの機会を得た。

 しかし、母親が「生活を管理されたくない」と、定められた住居から逃げたことで、また「居所不明児童」になってしまった。その後、失踪した義父に代わって働き始めた少年だが、母親の浪費癖は治らず、さらに生活が苦しくなり、2014年の事件にまで追い詰められてしまった。

 山寺さんは「ハイリスクな親に育てられている子どもの情報を関係機関が共有できていれば、少年は救えたかもしれない。また、あと一歩、大人の側が踏み込めていたら救えたかもしれない。けれども少年の姿は私たちに見えませんでした。少年の声を伝えしながら、考えていきたい」と話している。

 イベントは12時30分開場、13時開始。参加費は1,000円。参加費は一部を除き、少年の学び・更生に使われる予定。問い合わせはinfo@yokohamalab.jpまで。