執筆:吉村 佑奈(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
今年も暑い日がだんだん増えてきました。
 
気温の高まりとともに、増えてくるのが熱中症の患者さんです。熱中症を予防するために、普段どのようなことを行っていますか?
 
今回は、今からできる熱中症の予防法についてお伝えします。
 

◆熱中症の基礎知識
 
予防法を紹介する前に、熱中症について説明しましょう。
 
ヒトの身体には体温を一定に保つしくみが備わっていて、体温が高いときには放熱や発汗によって下げようと働きます。
 
外気温が高い夏季などには、血管が拡張して放熱をする働きがより促されます。
 
さらに、気化熱によって体温を下げるようと、発汗量も増えます。
 
ただし、その際、放熱が優先されるために、身体の重要な臓器への血流が相対的に減ってしまいます。また、発汗させるために、血液中の水分も足りなくなるため、身体に循環する血液の量も減ります。
 
このとき、水分や電解質が充分に補給されていないと、めまい、立ちくらみ、筋肉の硬直(こむら返り)など、熱中症の症状が現れるのです。
 
さらに脱水状態が進むと、発汗や放熱ができなくなり、体温を下げることができなくなってしまいます。その結果、さまざまな臓器の障害を起こしたり、最悪の場合は死に至ることもあります。
 
 
◆なぜ今から予防する必要があるの?
 
「本格的な夏はまだ先。今から熱中症を予防する必要なんてある?」と思っている方もいるかもしれません。
 
しかし、今年もすでに多くの熱中症患者が出ています。
 
環境省の「全国の暑さ指数(WBGT)の観測状況及び熱中症による救急搬送者数と暑さ指数との関係について(平成29年度第1報)※」では、2017年5月1日〜7日までの間に全国6都市(東京、大阪市、名古屋市、新潟市、広島市、福岡市)で救急搬送された人は400名以上、死亡者も1名であると公表されています。
 
この数字からも、なぜ今から熱中症予防が必要なのかをお分かりいただけるのではないでしょうか。
 (※出典元:環境省 熱中症予防情報サイト『平成29年5月1日〜5月7日までの全国の暑さ指数(WBGT)の 観測状況及び熱中症による救急搬送者数と暑さ指数との関係について (平成29年度第1報)』)
 

ここまでのお話したように、熱中症は命に関わることがあります。ですから、決して甘く見てはいけないのです。
 
 
◆今からできる熱中症予防
 
健康で、楽しい夏を過ごすためにも、今からできる熱中症の予防法について知っておきましょう。
 

その1:熱中症になりやすい状態を知っておく
 
今から熱中症になりやすい状態を知っていれば、事前の対策が立てやすいですね。
 
環境省は、熱中症を引き起こす条件として、次の3つを挙げています。
 
 
・環境
気温・湿度が高い、日差しが強い、風が少ない、急激に気温が上がるなど
 
・からだ
年齢(高齢者・乳幼児はなりやすい)、脱水状態、持病(糖尿病や精神疾患など)、体調不良、低栄養状態など
 
・行動
長時間での屋外作業、慣れない運動、激しい運動、水分補給できない状況など
 
このような条件が当てはまる場合は、熱中症のリスクが高まります。
 
上記にあるように、高齢者や持病がある人などはもちろん注意が必要ですが、健康な若い人たちも他人事ではありません。
 
ふだんは少しくらい体調が悪くても問題は起きないもしれません。
 
でも、暑い日に二日酔いの状態で外出をしたり、屋外でのイベントに参加するなどすれば、熱中症を発症する可能性はぐっと高まります。
 

その2:熱中症対策に役立つツールを活用する
 
現在、熱中症対策に役立つツールが各機関から出されています。
 
このようなツールを事前にパソコンやスマホのブックマークなどに入れておき、必要なときに確認できるようにしておくのもよいでしょう。
 
参考までに、次の2つのサイトを紹介します。
 
・環境省「熱中症予防情報サイト」
 
各地点の「暑さ指数」を調べることができます。暑さ指数は、熱中症予防のために作られた指標で、気温や湿度、輻射熱(ふくしゃねつ;高温の固体から低温の固体に電磁波として伝わる熱のことで、地面や建物、身体などからも出ている)の効果をもとに算出されています。
 
このような指標をチェックして、熱中症のリスクを事前に把握しておくことも予防する上では重要でしょう。
 
 
・日本気象協会「熱中症ゼロへ」
 
自分がいる地点、年代、活動レベルなどの情報を入力することで熱中症危険度をセルフチェックすることができます。
上記のサイトでは、熱中症のリスクをチェックすることだけではなく、熱中症の症状や応急処置の方法について学ぶこともできます。ぜひ見てみてくださいね。
 
 
その3:運動の習慣を身につける
 
熱中症は、同じ暑さ指数でも、身体が「暑い環境」に慣れていない人の方が、発症のリスクが高くなることがわかっています。
 
ですから、たとえば低い気温が続いていたのに、いきなり気温が上がった日などは熱中症の患者数が増えやすいといえます。
 
そのため、熱中症のリスクを減らすためには、身体を「暑い環境」に慣れさせておくこと(暑熱順化;しょねつじゅんか)もポイントの1つになります。
 
日常生活で暑熱順化させるために効果的といわれているのが、運動です。
 
これまでの研究では、運動強度が最大40%程度(「やや楽」と感じる程度)の有酸素運動を1時間30分程度行うことを1週間程度続けると、熱中症になりにくい身体づくりができるといわれています
 
この運動は、「早歩きなどでもよい」とされています。
 
ですから、通勤時にいつもより早く歩く、散歩の時間を増やすなど、気軽に取り組むことができますね。
 
【参考】
・埼玉医科大学 総合医療センター 救急科『今から始める熱中症対策』
 

<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供