執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
「パニック障害」という病名を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
 
しばしば芸能人などが発症していたことを告白していますね。
 
しかし、発症したことのない人には、どのような病気なのかイメージがつかないかもしれません。
 
そこで今回は、パニック障害とはどういう病気なのか、基本的なことを解説します。
 
 
◆パニック障害(パニック症)の代表的な症状:パニック発作
 
パニック障害(パニック症)は、「パニック発作」がくりかえされる病気のことをいいます。では、パニック発作とはどんな症状なのでしょうか?
 
パニック発作は、さしたる理由がないのに、突然、動悸、呼吸困難、胸の痛み、めまい、吐き気などの身体症状が現れ、不安におそわれることをいいます。
 
アメリカ精神医学会が発行している『DSM-5:精神疾患の分類と診断の手引き』では、次のうち、4つ以上の症状があてはまるものを、パニック発作としています。
 
(1)動悸、心悸亢進(前胸部に鼓動を強く感じる状態)、または心拍数の増加
 
(2)発汗
 
(3)身震いまたは震え
 
(4)息切れ感または息苦しさ
 
(5)窒息感
 
(6)胸痛みまたは胸部不快感
 
(7)吐き気や腹部の不快感
 
(8)めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
 
(9)冷感または熱感(ほてり)
 
(10)異常感覚(感覚麻痺、またはうずく感じ)
 
(11)現実感消失(現実ではない感じ)、離人症状(自分自身から離れている)
 
(12)コントロールを失うことや、気が狂うことに対する恐怖
 
(13)死ぬことに対する恐怖
 
 
このような症状は、発作が起きてから数分以内にピークに達します。
 
数分から数十分経過すると治まりますが、発作が起きている間は「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖に襲われます。
 
 
◆パニック発作だけではない!診断のポイントとは
 
パニック障害のことを「パニック発作がくりかえされる病気」とお伝えしましたが、診断の際は、「予期不安」や「回避行動」などがあるかどうかもポイントになります。
 
それぞれどのようなものなのかを説明します。
 
 
・予期不安
 
予期不安とは、文字通り、実際にはまだ起こっていないことに対して不安を覚えることをいいます。
 
パニック障害の場合、一度パニック発作を経験すると、「また発作が出たらどうしよう」という不安に襲われます。
 
この予期不安が患者のストレスとなって、さらなるパニック発作を誘発することがあります。
 
 
・回避行動
 
パニック発作が続くと、発作が起こりそうな場所や状況を避けるようになります。これを回避行動といいます。
 
とくに単独行動や公共への外出に不安を覚えるため(広場恐怖)、次のような状況を避けることが多いようです。
 

・バス、電車、飛行機などの公共交通機関
 
・市場や橋、大型駐車場などのひらけた場所
 
・デパート、映画館などの閉ざされた場所
 
・行列などの混雑した場所
 
・独りでの外出

 
このように、パニック障害は、パニック発作だけでなく、それにともなって上記の症状が現れます。
 
『DSM−5』では、パニック発作後に予期不安と回避行動のどちらか(もしくは両方)が1か月以上続き、かつこのような症状がほかの病気によって起きているのでないときに「パニック障害」と診断される、としています。
 
 
◆パニック障害はどんな人に多いのか:統計調査の結果
 
精神科医の貝谷久宜氏らが過去に国内で行った健康調査(※)では、罹患率は男性が1.8%、女性が5.4%であり(全体では3.4%)、女性の方が罹患率が高いという結果が報告されました。
 
この結果が示すように、パニック障害には罹患率に性差があり、女性の方が発症しやすいことがわかっています。ただ、現在のところ、その理由はわかっていません。
 
初発年齢は男女ともに20〜30代の若い世代が多く、患者のおよそ60%は35歳までに発症するといわれています。
 
また、貝谷氏は患者の低年齢化を指摘していて、小学生でも発症した例があったといっています。
 
 
◆パニック障害の要因はさまざま
 
これまでの研究で、パニック障害は脳のはたらきに異常をきたすことや、遺伝的な要因が関係しているのではないかといわれています。
 
ただ、遺伝的な要因があれば、だれでも発症するわけではなく、ストレスなどの環境的な要因も大きく関係しています。
 
また、貝谷氏は、温度や湿度、カフェインやニコチン、炭酸ガスなどの物質が体内に入ることも関係していると指摘しています。
 
このように、パニック障害の発症はいろいろな要因がからみあって発症しているといわれていて、現在も研究が進められています。
 
貝谷氏は、パニック障害を「不安の病」と表現しています。このことは、冒頭でもお話ししたように、自分が経験していないとイメージしにくいかもしれません。
 
それでも、たとえば、パニック発作で苦しんでいる人をみかけたら、寄り添ってあげて、安心して発作が早く治まるように付き合えるとよいですね。
 
【※参考】
・医療法人 和楽会『最新版「パニック障害解説」 前編』


<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供