執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
生活不活発病は別名「運動不足病」とも呼ばれています。
 
かつては東北大震災で話題になりましたし、もともとは、高齢者や障害者の「リハビリテーション医療」の分野で、「廃用症候群」と呼ばれてきました。
 
現在では、便利な都会生活で、若者にもよく起こるものとして注目されています。
 
それでは「生活不活発病」とはどういうものなのか、詳しくご紹介していきます。
 

◆「生活不活発病」とは?

生活不活発病は、動かないことによって、生活が不活発になって起こります。最初は全身の運動機能が低下し、筋肉や骨が衰えます。
 
さらに不活発が続くと、やがては、「少し動くと息切れがする」「外出するのが面倒」「人と話をするのがおっくう」など、精神面や社会生活にも悪影響が及んでいきます。
 
そのことが拍車をかけて、さらに身体を動かさないでいると、全身の機能が低下したり、抑うつ状態や認知症といった精神疾患にいたったりする場合もあります。
 
 
◆生活不活発病の由来
 
生活不活発病は1960年代以降、リハビリテーション医療の分野では「廃用症候群」と呼ばれてきました。
 
身体を動かさない生活をしていることで、全身の器官が機能低下していく症状を指します。
 
筋力低下、体力の衰え、心臓機能低下、便秘、食欲減退、認知症、抑うつ状態など、身体と精神のどちらにも影響します。そして、こうした機能低下が、やがては仕事や人間関係など社会生活を大きく不活発にしていきます。
 
たとえば、筋力低下は1日動かさないと3〜6%も衰え、回復するには1週間を必要とします。そんな日々が積み重なると、少し動いただけで息切れがしたり、部屋でじっとテレビばかり見ていたり、人に会うのが面倒になったり、外に出るのが億劫になってしまいます。
 
これが、生活不活発病の悪循環です。
 
「廃用症候群」という用語の生みの親、大川弥生医師は「やることが無くて動かなくなる悪循環を改善するため、本人がやりたいことを見つけることが何より大切」と言っています。
 
 
◆若者にも広がる生活不活発病:運動不足病
 
生活不活発病は別名「運動不足病」とも呼ばれています。
 
これは、元来この病名が高齢者や病気の方、障害者などによく見られた「リハビリテーション医療」の用語だったのが、生活が便利になった最近では、そうした人々に限らず、子どもから働き盛りの人にも身近な問題となっているからです。
 
たとえば、部屋や家に引きこもって終日、ゴロゴロしながら、テレビやインターネット視聴に明け暮れるといった生活をしていると、知らないうちに生活不活発病に陥ります。
 
ですから、ふだんから運動不足にならないようにすること、もしなってしまったら、急に無理をすると達成も長続きもしませんから、大川医師の言う「できることから始める!」という実行可能な目標を設定することがポイントです。
 
いちど達成して自信がつくと、「もっとやってみよう」という気持ちになって、運動の範囲が広がります。
 
たとえば次は、部屋の掃除や家事をするようになるといった具合です。
 
さらには、外に出て、知人と話しをし始めて、交流会や運動会参加に拡がったり、ついには、勉学や仕事に取り組めるようになれば「しめたもの」です。
 
 
◆震災時の避難所で実施された「生活不活発病」対策から
 
自分の意思でなくて、不幸にも震災などに遭遇して、長時間避難所に退避し、そこで、あまり動けない・動かない時間ができてしまうと、生活不活発病は起こります。
 
これを防ぐには、自発的に行動することが大切ですが、そうはいっても、被災地や避難所で「やりたい」を見出だすのは、難しいかもしれません。
 
そこで、たとえば次のような工夫が必要になってきます。
 

・少しでも動く
 
周囲の人に挨拶をしたり、積極的に人と話をしたりするなど目的をもって行動をする、また、高齢者やケガをしていて歩くのがつらいなら、伝い歩きや杖を使うなどしてみるのもいいでしょう。
 
また、独りでいると思いつめてしまいがちなので、話をしたり、用事を作って歩いたり行動したりすると、身体だけでなく、心もふさぎ込みがちだったのが元気になります。
 

・掃除をする
 
何も手につかなくなって、避難所の掃除を怠ることもあるかもしれません。
 
そこで「部屋の様子は頭の中の状態」などと喩えられるように、モノを片づけたり捨てたりすることが奨励されました。
 
これによって頭の中が整頓されます。
 
また、掃除は必然的に身体を動かすという行為となり、運動不足の解消も果たします。そのうちに、自分がやりたいこと、やるべきことが、ハッキリと見えてくるかもしれません。
 

・記録をつける
 
避難所で何もしないでい続けると、うつ病や認知症を発症するリスクも高まります。
 
脳の衰えを防ぐには、生活記録をつける習慣をもつのも一つの工夫。
 
とくに「今日起こったこと」よりも「昨日経験したこと」を想い出しながら書くほうが効果的といわれました。
 
 
「どうせできないから・・・」「面倒だから・・・」ではなく、どんなに些細なことでも「自発的にやりたいことを見つけ」行動していくことが何よりも効果的といわれる生活不活発病。
 
「動かない」から「動く」へ、さらには、「動くのが楽しい」に変わっていくよう、周囲を巻き込んで、協力しながら改善をしていくことが大切なようです。
 
 
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供