執筆:吉村 佑奈(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
「低血圧のせいで朝に弱い」という話を聞いたことがある人は多いと思います。
 
しかしこれ、本当なのでしょうか?
 
また低血圧が原因で、「朝や午前中、体調が悪くなってしまう」ということも耳にすることがあるかと思います。
 
今回は、そこでこの記事では、低血圧について解説します。
 
 
◆血圧の正常域と低血圧
 
そもそも、低血圧とはどのような状態を指すのでしょうか?
 
日本高血圧学会(※)によると、成人の正常域血圧は、至適血圧、正常血圧、正常高値血圧に分けられ、それぞれ次のように定義されています。
 

・至適血圧

収縮期血圧が120mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満の場合
 

・正常血圧

収縮期血圧が120〜129mmHg、拡張期血圧が80〜84mmHgの場合
 
 
・正常高値血圧

収縮期血圧が130〜139mmHg、拡張期血圧が85〜89mmHgの場合
 
 
そして、正常高値血圧を上回る場合、つまり収縮期血圧が140 mmHg、拡張期血圧が90mmHgの場合に、高血圧となります。
 
一方、低血圧については、すべてのケースで病気の可能性があるわけではないこともあり、国内には明確な定義がありません。
 
そのため、一般的にはWHOの基準として、収縮期血圧が100mmHg以下、拡張期血圧が60mmHg以下のどちらか一方、あるいは両方がつねに当てはまる場合に「低血圧」とみなされています。
(※日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2014』)
 
 
◆低血圧症とは
 
低血圧であっても何も症状が現れない人もいますが、中には何らかの症状が現れる人もいます。
 
この場合を「低血圧症」といいます。低血圧症は大きく次の3つに分けられます。
 
 
・本態性低血圧
 
つねに血圧が低い状態であるが、きっかけとなる病気がないタイプ。
 
立ちくらみやめまい、倦怠感などの症状が現れます。
 
本態性低血圧は遺伝が原因のこともあるため、別名を「体質性低血圧」といいます。
 
 
・起立性低血圧
 
急に立ち上がったり、身体を起こしてから3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、拡張期血圧が10mm以上下がるもの、あるいは収縮期血圧が90mmHg以下になるものを起立性低血圧といいます。
 
ヒトは本来、身体を起したときでも充分な血流が上半身に届くように、自律神経が調節をしています。
 
ところが、この自律神経が何らかの異常をきたすと、その役割を果たせなくなり、脳への血液量が少なくなってしまいます。その結果、立ち上がったときや身体を起したときに、立ちくらみやめまいなどの症状が現れると考えられています。
 
また、動脈硬化が進んだ高齢者が起立性低血圧を起こすと、脳梗塞や心筋梗塞のきっかけになることがあります。
 
起立性低血圧はさらに2つに分類され、原因となる病気がない場合を「起立性本態性低血圧」、病気が原因で起こる場合を「起立性症候性低血圧」といいます。
 
 
・症候性低血圧
 
病気が原因で低血圧になっているタイプ。心筋梗塞や狭心症、出血や脱水など循環血液量の減少、降圧剤などの影響による薬剤性のものなどが原因となります。
 
症候性低血圧の中には、頭部や全身の血流が悪い場合があり、それによって頭痛やめまい、不整脈、発汗や冷えなどが現れることがあります。
 
 
◆「低血圧は朝に弱い」のは自律神経が原因
 
「低血圧のせいで朝に弱い」という場合、原因として考えられるのは自律神経による影響です。
 
自律神経には、ヒトの意思と関係なく、身体のさまざまな機能を調節する働きが備わっていて、血圧も自律神経によってコントロールされています。
 
血圧は活動時に優位になる交感神経の働きによって上昇し、反対にリラックス時・睡眠時に優位になる副交感神経の働きによって下降します。通常、交感神経は日中に優位になるため、血圧も日中の活動とともに上昇します。
 
しかし、低血圧症の人は、自律神経の働きが充分でないことがあり、朝、目覚めても交感神経が優位にならず、なかなか身体が活動モードに切り替わらないことがあります。
 
その結果、血圧も上昇せず、めまいや立ちくらみなどが起こり、いわゆる「朝に弱い」状態に陥ると考えられます。
 
「朝に弱い」という状態は、先ほど挙げた低血圧症のどのタイプでも起こりうる症状です。
 
 
◆朝に強くなるためには
 
ご紹介したように、低血圧には、症候性低血圧のように、重大な病気の症状として症状が現れる場合があります。そのため、低血圧で症状が出ている人は、まずは病気の可能性がないか、病院で調べてもらうようにしましょう。
 
検査の結果、病気が見つかった場合には、もととなる病気の治療を行うことになります。
 
一方、原因が分からない場合で症状が軽い場合には、自律神経のバランスを整えることで改善が期待できることがあります。
 
自律神経のバランスを整えるためには、朝の生活を変えてみるとよいでしょう。たとえば、
 
朝ご飯を食べたり、熱めのシャワーを浴びる、あるいは軽い運動をするなどの習慣を取り入れると、交感神経が活発になり、身体が活動モードに切り替わります。朝に新しい習慣を取り入れるためにも、1日の生活リズムを整え、規則正しい生活を送るように心がけたいものですね。
 
 
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供