執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
「夫が原因となって妻のカラダやココロに不調が起きる」のが「夫原病」です。
 
医学的な病名ではありませんが、男性更年期外来で中高年の夫婦を診察してきた医師が命名した用語です。
 
夫原病は、「更年期障害」をこれまでとは別の角度からとらえた概念とも言えます。
 
今回はこの夫婦病について、ご紹介したいと思います。
 
 
◆夫の何気ない言動が妻のストレス!:夫原病とは

更年期障害はこれまでおもに、女性の生理から理解されてきました。
 
閉経を迎える40〜55歳ころ、卵巣機能が衰えて女性ホルモンの分泌が減り、ホルモンバランスが崩れて不定愁訴を発症するという説明です。起こりやすい症状は自律神経失調と似た、のぼせ、ほてり、多汗、動悸、めまい、しびれ、腰痛、肩こり、頭痛、手足の冷え、ドライ症候群、イライラ、不眠、不安感などです。
 
また、こうした更年期障害は、最近では「若年性更年期障害」と呼ばれる、20〜30代の女性でも見られることが指摘されています。
 
これもホルモンバランスの乱れによって説明されることが多いものの、閉経期ではないのでストレスや生活習慣など、環境要因の乱れが、発症の原因として強調されています。
 
そんな中にあって、「夫原病」の提唱者の石蔵文信医師は、男性更年期外来で男性の治療をする傍ら、夫婦で診察を受けてもらい妻も治療した経験から、この病名の提唱にいたりました。
 
つまり、妻に起こっている更年期障害の症状は、実は、夫の何気ない言動への不満や、ひいては、夫の存在そのものが強いストレスになっていることから生じているという見解です。
 
それで、閉経期だけでなく「プチ更年期」の場合にも散見されるというわけです。
 
 
◆夫原病のサインはなに?

石蔵医師によると、出張などで夫が不在のときには軽快したりなくなったり、反対に、夫の言動次第で重くなることがある場合、たとえば、次のような症状を呈するとき夫原病が疑われるとのこと。
 

・とにかく夫が家にいる週末は頭痛。平日も夕方からイライラする
 
・夫に急に怒鳴られたのを契機に動悸がはじまり、つばが飲み込みにくくなった
 
・めまいに悩んでいたが、夫が長期出張にでたら治った
 
・夫の身勝手な発言を聞くと、顔ののぼせやほてりが起こる

 
 また、次のような病気と診断され、通常の治療を受けても症状が改善されにくいときも、夫原病は疑われるそうです。
  

・本態性高血圧症
 
・突発性頭痛、突発性難聴
 
・メニエール病
 
・うつ病

 
◆夫原病になりやすい妻はどういうタイプ?
 
それでは、いわば病前性格として、夫原病になりやすい「妻のタイプ」はあるのでしょうか。
 
石蔵医師は次のようなタイプを指摘しています。
 
 
・がまん強くてあまり弱音を吐かない
 
・几帳面で責任感が強く、仕事や家事に手が抜けない
 
・感情を表に出すのが苦手で、人前で怒ったり泣いたりできない
 
・人に意見するのが苦手で、理不尽なことを言われても反論できない
 
・「よい妻」「よい母親」でありたい意識が強い
 
・外面や世間体を気にする
 
・細かいことにクヨクヨと悩む


まじめで完ぺき主義という、うつ病や不安障害になりやすいタイプと似ています。
 
 
◆夫原病のストレッサーとなりやすい夫のタイプ

では、妻を「夫原病」にしやすい夫のタイプはあるのでしょうか?
 
次のような「夫原病危険度チェック」をご紹介します。該当する項目が5個以上あれば夫原病が疑われるとのこと。
 
 
□ 人前では愛想がいいが、家では不機嫌
 
□ 上から目線で話をする
 
□ 家事に手は出さない(手伝わない)が口は出す
 
□ 妻や子供を養ってきたという自負が強い
 
□ 「ありがとう」「ごめんなさい」のセリフはほとんどない
 
□ 妻の予定や行動をよくチェックする
 
□ 仕事関係以外の交友や趣味が少ない
 
□ 妻が一人で外出するのを嫌がる
 
□ 家事の手伝いや子育てを自慢する自称「いい夫」
 
□ 車のハンドルを握ると性格が一変する

 
(出典:石蔵医師監修 eo健康『体調不良は夫のせい?夫が妻を病気にする「夫源病」』より)
 
 
◆閉ざされた夫婦関係が夫原病の温床?
 
夫原病の改善として、「プチ喧嘩のすすめ」「プチ別居のすすめ」が挙げられています。
 
夫婦といえどもお互いの本音をコトバにしてコミュニケーションすることや、お互いのありがたみ、距離感や自律といった、生活や夫婦関係そのものを再確認するなど、「再構築」がキーワードとなっています。
 
もちろん「夫原病」までいくと、もう自分(たち)では修復できないところまでいき、夫には極端な言動、妻にも不定愁訴や病気が発症している場合も多いので、石蔵医師は男性更年期外来を通して、夫婦関係の治療を行うことで、問題の解決にあたっているという次第です。
 
ちなみに、男性よりも女性の方に治りが早いという印象だそうです。
 
 
◆夫原病と対比をなす「妻原病」?:男性更年期の一原因?
 
妻だけでなく、夫も中高年になって家にいることが多くなると、働いていた時には気にならなかった妻の何気ない言動が気になって、息苦しさ、動悸、めまい、頭痛などの症状が引き起こされる「妻原病」もあるそうです。
 
ストレスに対する脆弱さが、学業や仕事だけでなく、夫婦関係にも表れているということでしょう。
 
そのうち、「親原病」「子原病」「孫原病」などが登場してくるかもしれませんね。
 
 
【参考】
石蔵文信『奥さん、それは「夫原病」ですね。』静山社文庫、2013.
 
 
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
保健師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供