執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
亜鉛は体内では生成できない必須ミネラルのひとつ。
 
ですから、体の外から取り入れることが必要です。
 
日本人に推奨される一日の亜鉛摂取量は、成人男性で10ミリグラム、女性で8ミリグラム。
 
厚生労働省の調査報告によると、平均摂取量は男性9ミリグラム、女性7ミリグラム前後で、亜鉛を十分に摂取できていない人は多いと見られています。
 
今回はこの不足しがちな亜鉛の働きと、不足したときの影響についてみていきましょう。
 

◆亜鉛の働きと亜鉛不足になりやすい人
 
亜鉛は身体にとって重要なミネラルです。
 
体内には、体重70キログラムの成人男性でおよそ2グラムと、わずかな量しかありません。
 
亜鉛は、筋肉・皮膚・骨・髪の毛・肝臓・眼球などに存在しますが、とくに濃度が高いのは舌にある「味蕾(みらい)」という味覚を感知する器官と生殖機能にかかわる前立腺や精巣です。
 
どちらも細胞分裂が活発におこなわれていて、細胞の入れ替わりである新陳代謝に亜鉛が重要な働きをしていることがわかります。
 
亜鉛はおよそ200種類以上の酵素の構成成分になっています。
 
冒頭でお伝えしたように、日本人全体として摂取推奨量を下回っていますが、とくに次のような人たちは亜鉛欠乏症になりやすいと指摘されています。
 

・偏った食事、極端なダイエット
 
肉や魚類に多く含まれる亜鉛。
一方、青菜に含まれるシュウ酸や食物繊維は亜鉛の吸収を阻害します。
 
そのため、ベジタリアンや高齢者、さっぱりしたものを好み、肉などをあまり食べない人は亜鉛が不足しやすいといえます。
 
 
・食品添加物を含む加工食品やレトルト食品ばかり食べる
 
これらに含まれているポリリン酸などの食品添加物は、亜鉛の吸収を阻害します。
 
 
・お酒をよく飲む
 
アルコールの代謝に必要な酵素は亜鉛を必要とします。
さらにアルコールは亜鉛を尿から排出することも促します。
 
 
・アスリートやスポーツ選手にも多い亜鉛不足
 
汗や尿から排泄されやすいことと、ハードなスポーツが原因で起こる「スポーツ貧血」のなかには亜鉛欠乏性貧血があります。
 
 
◆亜鉛欠乏症が引き起こす症状
 
慢性的に亜鉛が不足すると次のような症状が現れます。
 

・成長障害
 
亜鉛は細胞の分裂や増殖に欠かせないミネラル。
たんぱく質やホルモンの合成、DNAの複製などに深く関与しているので、欠乏すると細胞の成長を阻害します。
 
 
・免疫力低下
 
免疫にかかわる細胞の働きにも関与するため、欠乏すると免疫力が低下して感染症や自己免疫疾患にかかりやすくなります。
 
 
・味覚障害
 
舌にある味蕾は味を感知する器官で、新陳代謝が活発です。亜鉛はこの働きを促進しています。
よって不足すると、味がわからない、苦く感じるなどの味覚障害に陥ることがあります。
 

・皮膚や爪の異常、抜け毛
 
粘膜や皮膚・爪の状態を良好に保つためにも亜鉛は欠かせません。
かゆみや慢性湿疹、爪の異常や脱毛などに亜鉛欠乏が関与していることがあります。
 
 
・ED(勃起不全)への影響
 
亜鉛は男性の性機能のうち、精子やテストステロンの生成に関わっています。
不妊男性には亜鉛不足が見られ、亜鉛は精子の数や運動率にも関わっているといいます。
亜鉛欠乏がED(勃起不全)をひき起こすことも指摘されています。
 
 
◆亜鉛欠乏症への対処
 
亜鉛欠乏症には「ノベルジン」という治療薬が用いられます。
 
低出生体重児、低身長の子ども、味覚障害などに処方薬として服用されるようになりました。
 
しかしながら、服薬よりも先ずは食事によって十分な亜鉛を摂取することをおすすめします。
 
亜鉛を多く含む食材は、
カキ・アワビ・タラバガニ・するめ・豚レバー・牛肉・卵・チーズ・高野豆腐・納豆・エンドウ豆・切り干し大根・アーモンド・落花生などの、肉、魚類、穀類、木の実・種などです。
 
また、白米よりも胚芽米、パスタも胚芽入りの方が亜鉛の含有量は多くなります。
 
なお、亜鉛不足を気にするあまり、亜鉛を多く含む食品に偏って食べる、サプリメントを多く摂る、など過剰摂取にはご注意ください。
 
吐き気や腹痛、低血圧などの症状がでることがあります。
 
亜鉛は通常の食生活をしていて摂り過ぎになるようなことはありません。
 
 
【参考】
一般社団法人日本臨床栄養学会『亜鉛欠乏症の診療指針2016』


<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供