執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
歯周病は口のなかの病気ですが虫歯とは違います。
 
歯周ポケット(歯と歯ぐきのすきま)から侵入した細菌感染によって起こる炎症性の病気です。
 
歯や歯周ポケットの掃除が行き届いていないと細菌が停滞して歯垢が溜まり、炎症が進行して腫れることもあります。
 
さらに重症化すると歯を支える土台が溶けて、歯が抜けたり抜歯を余儀なくされたりすることになります。
 
皆さん、歯周病は高齢者に多いというイメージを持っていませんか?
 
実は日本の成人の約8割が、軽度であっても歯周病を持っていると指摘されています。
 

◆歯周病のセルフチェック
 
日本臨床歯周病学会のHPでは、次のような歯周病のセルフチェックを公開しています。
ご参考ください。(※)
 

・朝起きたとき、口の中がネバネバする

・ブラッシング時に出血する

・口臭が気になる

・歯肉がむず痒い、痛い

・歯肉が赤く腫れている(健康な歯肉はピンク色で引き締まっている)

・固いものが噛みにくい

・歯が長くなったような気がする

・前歯が出っ歯になったり、歯と歯の間にすき間がでてきた。食べ物が挟まる

 
<チェック方法>
・3項目該当・・・油断禁物
・6項目該当・・・歯周病進行の可能性あり
・全項目該当・・・歯周病がかなり進んでいる
 
※日本臨床歯周病学会『歯周病のセルフチェック』(http://www.jacp.net/perio/about/)
 
 
◆歯周病の原因はプラーク(歯垢)
 
歯磨きが不十分なために歯の表面や歯と歯の間に溜まる白いカス状の物質。
 
これはプラーク(歯垢)と呼ばれ、歯周病最大の原因とされています。
 
プラークは虫歯菌や歯周病菌などの細菌の塊です。
 
ですから、歯周病は感染症ともいえます。
 
歯周病はおおむね次のようなステージをたどります。
 

●健康な歯肉:ピンク色をしている
 ↓

●歯肉炎:歯とその隙間(歯肉溝)に溜まった歯周病菌が歯肉に侵入。歯肉が赤く腫れた状態。プラークも石灰化する(歯石)
 ↓

●歯肉炎が歯周炎に進行:歯と歯茎の溝が深くなって、プラークや歯石が歯の根元に潜り込み感染拡大。歯の周囲の歯槽骨(しそうこつ)が溶ける。最終的には歯が抜け落ちたり、抜歯せざるを得なくなったりする
 
 
◆油断大敵!歯周病は万病の元
 
歯肉の炎症は、白血球が身体にとって敵である歯周病菌と戦おうと集結するために起こる症状です。
 
やがてこの攻防が原因で、歯周病菌や白血球、細胞の残骸が溜まって歯肉が腫れます。
 
さらにこれらの残骸は、毛細血管を経由して全身におよび、さまざまな病気の発症に関与することがあります。
 
たとえば、歯周病菌が直接気管に入り肺炎を起こす誤嚥性肺炎(ごえんんせいはいえん)があります。
 
ほかにも、腎臓病や関節リウマチ、認知症、がん、早産や低出生体重児への影響も取りざたされています。
 
また、歯周病を放置して炎症物質が血管に入ると、すい臓から分泌されるインスリンの働きをブロックして糖尿病を悪化させることも知られています。
 
さらには、動脈硬化、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞にも影響をおよぼす原因の一つであることも分かってきました。
 
このように、歯周病は多くの疾患に影響を与え、発症や進行のリスク因子になることが研究により明らかになっています。
 

◆歯のために、全身の健康のために、歯周病予防を!
 
丁寧な歯磨きをサボっていると歯周病につながります。
 
歯周病はじめ歯の病気には、最新技術を駆使したさまざまな治療法があります。
 
しかし、たとえば、インプラント(歯を抜いた後を補う人工的な歯の根っこ)を入れても、その後普段のケアを怠っていれば再発します。
 
なにより日常の歯のケアが重要なのです。
 
そこで、歯周病予防には次のようなことに留意するよう歯科の専門医が提起しています。
 

・禁煙:タバコは歯周病最大のリスクファクター

・歯ブラシに血がついたら受診する:歯磨き時の歯肉の出血は、プラークの菌が感染して歯肉が腫れている証拠

・電動歯ブラシを使う

・フロス(歯間を掃除する糸ようじのようなもの)や歯間ブラシを活用する

・キシリトールガムを噛む:プラーク予防

・うがい薬を過信しない:プラークを落とす効果はうがい薬にはない

・1日1回舌ブラシ(タングクリーナー)を使って舌苔を落とす
 

◆定期的な歯科健診の必要性
 
虫歯と違って歯周病は気づきにくいといわれています。
 
また、手入れが不十分でプラークを除去できず、歯石化してしまうと自力では取れません。
 
現在、歯の点検は法定健診ではありませんが、自力で歯のケアをするのはなかなか難しいものです。
 
その点を考慮すると、自発的に1年に1〜2回、歯石除去を目的に歯科を受診する、という予防の姿勢は大切です。
 
人生100年時代、改めて「健康な歯」の重要性を考えて、定期的な予防治療をはじめてみてはいかがでしょうか。
 
 
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供