給与にかかる税金や将来のための投資手法など、お金に関する知識は、学校ではなかなか教えてもらえない。そのため、社会に出ても、知らないまま過ごしている人は多いだろう。

そんな日本の現状に対して、「お金の教育を義務教育に!!」と警鐘を鳴らしているのが、税理士の大河内薫さん。「日常から切っても切れない“お金”の知識を、なぜ教育しないのか?」という疑問を掲げ、お金にまつわる情報を発信している。

では、子どもの頃からお金の知識を蓄えていくと、どのような大人に育つのだろうか。大河内さんに、お金の教育の必要性を聞いた。

親が植えつけがちな「マイナスな価値観」

大河内さん自身、親や教師からお金に関する知識を与えられたというわけではないそう。ただし、偏った感覚を植えつけられたこともなかったという。

「多くの家庭で、親は『お金のことは外で話すもんじゃない』とか『お金をくれた人の前ではしゃがない』とか、お金に関してマイナスな教育を施しますよね。でも、僕は親から何も言われませんでした。だから、お金を卑しいものだと思ったことはないんです」(大河内さん・以下同)

また、大学進学時には学費の高い芸術学部を志望したため、親と話し合い、初年度の学費は自分で支払うことを約束したそう。

「学費という大きな金額を前にして、お金がないと自由になれないことを18歳で知りました。もし、ここで親に払ってもらっていたら、お金のことは意識していなかったでしょうね」

お金のことを考えさせないための教育

日本には「お金の話をするのは卑しい」という風潮があるため、親も子どもにマイナスな教育をしてしまうのかもしれないが、その原因はどこにあるのだろう。

「僕は“パーフェクトコントロール”といわれた徳川家康の時代にさかのぼると思っていて、当時の身分制度『士農工商』では、商人が一番下。今は『実在しなかった制度』といわれていますが、もし実在していたとしたら、お金を扱う人は意地汚いと思わせることで、国民からお金の教育を遠ざけたんだと思います。お金は使い方によっては武器になるし、謀反も起こせますから」

現代の日本においては、お金の教育の機会がないどころか、そのことに疑問を持つ人も少ないだろう。

「疑問を持てるほど、知識が与えられていないんですよね。何もしなくても納税できる源泉徴収制度などがあるので、会社員でいる限り、『税金って大変』とは感じないはず。給与明細も、手取額だけを見て終わりって人は多いと思います」

この意識を変えるためには、国民全員が「お金の教育がないこと」の違和感に気づくことが必要だという。

お金を使いながら「使う意味」を教えていく

「まずは、今の子どもたちを中心に、教育していく必要があると思います。まだ価値観が偏っていない子どもたちにお金の知識を与えれば、彼らが大人になった時に社会が変わっていくと思うんです」

教育機関でお金を学ぶ機会がない今、親が子どもたちに教育していく必要がある。

「第一に、親が『お金は卑しいもの』『外でお金の話をするな』といった、マイナスなことを言わないことが大切。子どもにとって親の言うことは絶対なので、不要な知識は入れない方がいいと思います」

そのうえで、大河内さんが推奨している教育法は、おこづかいやお年玉を使う方法。

例えば、おこづかいを隔月で渡して、その使い方を学ばせる。おこづかいをもらった月に使い果たしてしまえば、翌月は0円になってしまうという経験が勉強になるのだ。また、親が「マスクが欲しいけどないから、誰かが作ってくれたら買うのにな」とヒントを出し、おこづかいで材料を買って作らせ、実際に親が材料費の倍程度の額で買い取るという一連の流れで、稼ぐことを教えるツールにもできる。

「お年玉は大きな金額が動くので、投資を教える手段にできます。お年玉の半分を子どもに渡して、『使わなかった分は、月末に2%増えるよ』と伝えます。月末、子どもの手元に10万円残っていたら、2000円あげるんです。金利の勉強になりますよね」

家計簿の公開も、お金の教育につながるとのこと。収入や支出、支払っている税金などを家族で共有することで、「なんで今月は支出が多いんだろう」「これだけ貯金できていれば海外旅行に行けそう」など、家族のコミュニケーションが生まれ、お金の話もしやすくなるからだ。

「家庭での教育から、『浪費』『消費』『投資』という支出の区分を教えてあげられるとベストです。日々の食費は『消費』とか、お金を使って稼ぐことは『投資』とか分けて見ていくと、子どもはお金を使う意味を理解していくと思います。お金の使い方は、実際に経験しないと学べないので、使わせてあげましょう」

「幼い頃からお金の使い方を意識させると、成長してからの生活に影響するでしょう」と、大河内さんは話す。

「高校生や大学生になった時に、バイトで稼いだ5万円を『浪費』しちゃったって気づくだけで、来月の給料はパソコンを買うための貯金=『投資』に回そうとか、その先のお金の使い方が変わると思います。子どもの頭を、お金の意味を考えられる状態にしてあげられるといいですね」

まだお金の価値観の土台がない子どもにマイナスなことは伝えず、実践を通してお金の使い方を学ばせる。それこそが大河内流お金の教育だ。しかし、そのためには教える側の親のリテラシーも高くなければ、成り立たないのでは?

後編では、親が得ておくべき知識、お金の教育が浸透した先の社会について、大河内さんに聞いていこう。
(有竹亮介/verb)

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