〜投資対象の多さが「自由」とは限らない〜

現在、東証一部にはおよそ2,200社もの企業が上場しています。ソニーやトヨタなど、誰もが知っている大手企業から、ニッチな分野で事業を展開する中小企業にいたるまで、多種多様な銘柄が日々取引されています。また東証二部や新興市場を含めると、国内の上場企業数、言い換えれば「投資することができる企業の数」は3,700社超に上ります(12月17日時点)。

株式市場は絶え間なく変化しますので、昨日の「正解」が今日の「不正解」になることも多々あります。これだけ沢山の企業が上場していると、投資する銘柄を決める際に迷ってしまう投資家の方も多いのではないでしょうか。

〜インデックスを用いて見極める株式市場の「イマ」〜

そこで、今回は東証が算出している様々なインデックス(指数)を用いて、市場のトレンドをキャッチする方法をご紹介します。

東京証券取引所は、上場企業を次の区分によりグループ分けを行い、銘柄属性別の株価動向を参照することが可能なインデックスを日々算出しています。これらのインデックスを用いて、マーケットでは「イマ」どのような銘柄が人気を集めているかを見極めることで、自分の投資方針に合った銘柄の選定がしやすくなると考えられます。

1. 時価総額と流動性による区分

最初にご紹介する区分は、銘柄の「時価総額」と「流動性」に応じたグループ分けです。

ほぼすべての東証一部上場銘柄は東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄となりますが、これらは時価総額と売買代金の多寡に応じて細かく分類されています。ただ大雑把には、「TOPIX 100(大型株)」、「TOPIX Mid400(中型株)」、「TOPIX Small(小型株)」の区分が明白でしょう。

東証はこの各区分の株価動向をそれぞれ「大型指数」、「中型指数」、「小型指数」として算出しており、3つの指数をチェックすることで現在株式市場においてどのような規模の銘柄が買われているのか、大まかな傾向を知ることができます。

これらは時価総額の規模に応じたインデックスであることから「東証規模別株価指数」と呼ばれています。他に、超大型株に特化した「TOPIX Core30」や比較的時価総額の大きい銘柄のみで構成される「TOPIX 500」などのインデックスがあり、これらをまとめて「TOPIXニューインデックスシリーズ」といいます。

<インデックスの見方>

例えば、マーケットで今後の景気見通しについて楽観論が強まった場合、投資家は積極的にリスクを取るようになるため、幅広い銘柄が物色されるでしょう。なかでも、大規模な生産設備を持つ自動車やエネルギー関連など景気変動の影響を受けやすい銘柄(景気敏感株)が選好されやすいと考えられます。景気敏感株には大企業が多いことから、このケースにおいては相対的に大型指数が中・小型指数をアウトパフォームする可能性が高いといえるでしょう。

半面、景気の先行きに懸念が生じた場合は上記パターンの逆、景気変動に左右されにくい特定の銘柄に資金が集中しやすくなります。その中でも、高い成長性を有する銘柄は中小型株に多く、大型指数よりも中・小型指数のパフォーマンスが良くなるケースが多く見受けられます。

また、ファンドなどの機関投資家は健全な運用を担保する定款(ルールのようなもの)などを遵守する必要があるため、それらの規制に抵触するハイリスクな銘柄(過度に時価総額・売買代金が小さい銘柄など)はあまり選好しません。一方で、短期的なリターンを重視する個人投資家などは値動きの大きい小型株を選好する傾向があります。

このように東証規模別株価指数をみることで、足元の経済情勢や市場参加者の動向などを「なんとなく」想像することができます。今後のマーケットがどのように変化していくのか、「順張り」か「逆張り」か、自身の相場観に沿った銘柄選定に役立つのではないでしょうか。

2. PBRによる区分

次にご紹介する区分は、PBR(株価/一株当たり純資産)によるグループ分けです。

PBRは企業の純資産と比較して株価が割高か割安か判断する指標ですが、東証はこのPBRに応じた「TOPIXスタイルインデックスシリーズ」を算出しています。

TOPIXスタイルインデックスシリーズでは、PBRが高いグループを「グロース」、低いグループを「バリュー」と定義しています。東証はそれぞれのグループに属する銘柄の株価を集計し、「TOPIXグロース」と「TOPIXバリュー」という株価指数を算出しています。

また、前述のTOPIXニューインデックスシリーズと組み合わせた「TOPIX500グロース/バリュー」や「TOPIX Smallグロース/バリュー」なども算出しています。私たちはこれらのインデックスを参照することで、現在株式市場で投資家が何を重視しているか推測することができます。

<インデックスの見方>

近年、世界では先進国を中心に緩和的な金融政策、つまり金利の低い状態が続いています。背景には、世界的な経済成長ペースの鈍化などがあり、企業の業績においても「低成長」が常態化しています。ですが、技術革新に伴い新たな製品・サービスは日々創出されるなか、半導体や電子部品、情報通信など一部のハイテク企業は高い成長率を維持しています。低温経済下では「成長性」そのものが希少価値とみなされるため、ここ数年はグロース株の方が選好されやすい環境であったといえるでしょう。

一方で、PBRの低いバリュー株には景気敏感株が多いことから、低温経済ではやや手掛けにくい状況でした。もっとも、最近では新型コロナワクチンの普及による景気回復期待を受けてバリュー株を見直す動きも散見されています。

このように、現在の株式市場を取り巻く環境に応じて投資家が重視するものも変化します。TOPIXスタイルインデックスシリーズを用いて株式市場で「イマ」何が重要視されているのか推測できれば、大局観を持った銘柄選定を行うことができるのではないでしょうか。

大局を見据え、投資の最適を

もちろん、インデックスは複数の銘柄の集合ですから、それだけでは「真の優良銘柄群」にはたどり着けません。ですが、株式市場で「イマ」何が起きているのか、多くの投資家がどこに注目しているのかを推測するうえで、インデックスは有効なツールであると考えています。インデックスを活用し数千社もの上場企業をふるいにかけることで、最適な投資判断に一歩近づくのではないでしょうか。

(岡三証券 投資戦略部 日本株式戦略グループ ストラテジスト 河上 晃大)