2月後半から3月前半にかけては、確定申告のシーズン。今年も新型コロナウイルス感染防止のため、令和2年分の期限は4月15日まで延長されたが、個人事業主はもちろん、投資やふるさと納税を行った給与所得者も、申告が必要になる場合がある。

ただ、初めての確定申告はちんぷんかんぷんで、何から手をつけたらいいかわからないという人も多いだろう。そこで、サラリーマンの税金に関するお悩み解決を行うトランス税理士法人の代表税理士・中山慎吾さんに、確定申告初心者が抱きがちな質問に答えてもらった。

Q.青色申告と白色申告って何が違うの?

「青色申告は、税務署に青色申告の申請を出し、認められた人ができる申告方法です。青色申告をしない人は、自動的に白色申告になります。申告方法によって必要となる書類や経費として認められる範囲が異なるため、
個人によって選択すべき方法は変わってきます。一概にどちらが有利ということはありません。ちなみに、どちらの方法を用いるにしても、帳簿類は7年間、領収書などの証票は5年間保存しなければいけません」(中山さん・以下同)

青色申告
「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかがある個人事業主が対象の方法。原則として、申告する年の前年の3月15日までに、住んでいる地域の税務署に「青色申告承認申請書」「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要がある。(1月16日以降に新規開業した場合は業務開始から2カ月以内、1月1日〜1月15日に開業した場合は3月15日が提出期限となる)

青色申告の場合、生計を一にする家族への給与(専従者給与)として収入から差し引ける額は、妥当性のある金額であれば上限が設けられていない(「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要)。過去の赤字を3年間繰り越すことも可能。利益が出た年に前年の赤字を繰り越すことで、支払う税金を抑えることができる。また、売掛金を経費とみなすことができる「貸倒引当金」を設定できるというメリットもある。

「青色申告特別控除として最大65万円を所得から控除できるところも、青色申告のメリットの1つです。ただし、65万円の控除を受けるには『事業所得か事業的規模の不動産所得がある』『複式簿記で記帳している』『貸借対照表及び損益計算書を添付して申告期限内に提出する』『帳簿が現金主義でないこと』『e-Taxなどによる電子申告又は電子帳簿保存を行うこと』といった条件があります。条件に当てはまらない場合、青色申告特別控除の上限は55万円になります」

白色申告
青色申告以外の人が用いる方法。青色申告と比べて、帳簿は細かくなくてもいい。ただし、専従者給与として差し引ける額は配偶者86万円、その他の親族50万円と上限が設けられる。また、赤字の繰り越しや「貸倒引当金」の設定はできない。

「記帳がラクという部分がメリットといえます。国税庁のHPによると、『記帳に当たっては一つ一つの取引ごとではなく日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよい』とのこと。つまり、家計簿やおこづかい帳のようなレベルの記帳で良いということになります」

Q.経費として認められるものは何?

「個人事業主の場合は事業内容によって異なりますが、事務経費だけでなく自宅家賃、光熱費、交通費、家族への給料など、経費として認められる範囲はかなり広いといえます。原則として、必要経費に該当するかどうかの判断は納税者自身が行い、税務署が明確に事業と関係ない支出だと認識した場合は否認されることもあります。一方、給与所得者の場合は、給与所得控除が55万〜195万円(※)あるため、経費計上は簡単ではありません。『給与所得者の特定支出控除』という制度を利用すれば可能ですが、一定の条件があります」

※年収850万円を超えて、適用対象に当てはまる場合は「所得金額調整控除」がプラスされる

給与所得者の特定支出控除
給与所得者が下記の(1)〜(7)の特定支出をした場合に、一定の計算により導かれた金額を給与所得控除後の所得金額から控除できる制度。会社が業務に必要と認めた上で、給与所得者自身が自己負担した費用が対象となり、会社からの「特定支出に関する証明書」が必要。

特定支出
(1)通勤費
(2)職務上の旅費
(3)転居費(転勤に伴う転居の場合など)
(4)研修費
(5)資格取得費
(6)帰宅旅費(単身赴任などで、居所と自宅の間を行き来する費用)
(7)勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費など、職務の遂行に必要なものの費用。上限は65万円)

Q.経費の領収書をなくしても大丈夫?

「代金を支払ったことの証明として領収書は必須なので、いくら探しても見つからない場合は、領収書を再発行してもらいましょう。ただ、再発行してもらえるかはお店次第です。また、次のもので代用することも可能です」

レシートで代用する
レシートには、代金を支払った日時や購入したものなどが記載されているため、事業で使用したことが証明されれば経費として認められる可能性が高い。ただし、感熱紙のレシートは時間の経過とともに印刷が薄れてしまうため、注意が必要。

利用明細や振込明細及び通帳記録で代用する
クレジットカードや銀行振込で購入したものであれば、利用明細や通帳記録、購入確認メールなど、改ざん不可能な書類で代用することもできる。

Q.確定申告の期限を超えたら罰則はある?

「副業の給与が20万円を超える給与所得者、事業所得・不動産所得が20万円を超える個人事業主など、確定申告をしなければならない人が確定申告の期限内に申告をしなかった場合、『無申告加算税』などのペナルティが発生します」

無申告加算税
期限後に申告を行った場合、納付税額の15%(納付税額50万円以上の場合は20%)の無申告加算税が課され、無申告加算税を納付するまでは延滞税(年率2.6〜8.9%)も付加される。税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告を行った場合は、無申告加算税は5%に軽減される。

青色申告特別控除の減額
申告期限が過ぎると、青色申告特別控除の上限65万円が10万円まで減額されてしまう。

重加算税
税額の隠蔽や仮装など、税務当局が悪質だと判断した場合は、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税に代えて35%(無申告加算税に係るものは40%)の重加算税が課される。無申告加算税と同様に、納付するまでは延滞税が付加される。

「確定申告の提出期間は、例年2月16日から3月15日(令和2年分は4月15日)まで。その期間に申告書を提出しないと、ペナルティが発生します。しかし、事実上の申告期限は3月29日なのです。平成18年度の税制改正で、申告期間から2週間以内に申告をして納付期限内に税金を納めた場合は、無申告加算税が課せられないことになりました。つまり、3月15日までに納税だけ済ませ、3月29日までに申告を行えば、ペナルティは発生しないというわけです。書類の準備に時間がかかりそうであれば、先に想定より多めに税金を支払い、後で申告して還付してもらうという方法も取れます。詳しくは、税理士などの専門家に相談してみましょう」

令和2年分の確定申告で多い質問もチェック

税制改正や社会の変化の影響で、令和2年分においてよく聞かれる質問があるとのこと。そのいくつかをピックアップしてもらった。

Q.「令和2年中に証券会社を通じて売却した上場株式の譲渡益」と「証券会社を通さずに売却した非上場株式の譲渡損」の通算はできる?

「ここ数年の投資に関する法改正を把握していない方は多いのですが、この質問は要注意です。平成28年1月1日以降、株式の譲渡に関しては、上場株式と一般株式は譲渡益を区分して計算することになりました。そのため、現在は上場株式の譲渡益と非上場株式の譲渡損を通算することができません」

Q.令和2年中に個人間売買(消費税の課税対象外)で中古住宅を取得した場合、住宅ローン控除の適用額は最大の40万円になる?

「2020年は住宅購入する方が多かったので、住宅ローン控除に関する質問が多い印象です。このケースの場合、消費税の課税対象外となる中古住宅の取得は『特定取得』に該当しないため、住宅ローン控除の上限額は20万円になります」

「特定取得」とは、住宅の購入、新築、増改築の費用に8%または10%の消費税がかかった場合のことを指し、当てはまれば住宅ローン控除の上限額が40万円になる。

令和2年分は申告期限が4月15日までと、例年より猶予があるとはいえ、確定申告に慣れていないと手間取る部分もあるだろう。早めの動き出しが肝心だ。
(有竹亮介/verb)