野村アセットマネジメントでは、毎月、世界経済や金融市場の注目点を投資環境レポートとしてお届けしています。

11月の投資の視点は、「欧州経済の注目点」です。

<注目点>

●ユーロ圏経済は、米国をはじめとする他の主要先進国にやや遅れて回復している。今後も内需主導の景気回復が続くとみられる一方で、供給制約による輸出の減速やエネルギー価格上昇の影響には注意したい。

●「メルケル体制」後のドイツの行方を占う連邦議会選挙では、現財務相のショルツ氏率いる社会民主党が第一党となった。緑の党および自由民主党との連立協議を経た新政権の政策が注目される。

●より長い目線では、EUの共通予算および財政ルールを巡る議論が重要だ。選挙を経て、これらの論点に関する独仏のスタンスが改めて問われるだろう。

米国に遅れて回復するユーロ圏経済

ユーロ圏経済は、米国をはじめとする他の主要先進国にやや遅れて回復している。2021年4-6月期におけるユーロ圏の実質域内総生産(GDP)成長率は前期比で+2.2%となり、同時期における米国の成長率を上回ったものの、コロナ禍前の経済活動水準への回復度合いは、米国に後れを取っている状況だ。

ユーロ圏においてコロナ禍に伴う景気の落ち込みが大きく、かつその後の景気回復も遅れている主な理由としては、産業構造の違いが挙げられる。フランス中銀の分析によれば、GDPに占める観光業のシェアの大きさが、2020年におけるユーロ圏と米国の景気下振れ幅の差を生み出した最大の要因であったとの結論が導かれている。

実際、米国およびユーロ圏主要国の実質GDP水準を比較すると、観光業の比率が特に大きい南欧諸国において昨年の落ち込みが大きくなっており、景気回復の動きも遅れる傾向が確認できる(図2参照)。

足もとではワクチン接種の進展や欧州連合(EU)デジタルCOVID証明書の導入、渡航制限の緩和などを契機に観光業の回復の兆しが見えており、こうした動きが続けばユーロ圏の景気回復がさらに進むことが期待される。

加えて、昨年導入された欧州復興基金は、コロナ禍の影響を大きく受けた南欧諸国への補助金が手厚くなっており、これらの国々の景気下支え要因として機能することが見込まれる。

欧州復興基金の中核をなす復興・強靭化ファシリティ(RRF)は、一定割合をグリーンやデジタル関連分野への投資に充当することが定められており、これらの分野に関するユーロ圏各国の設備投資が喚起されることも期待できそうだ(図1参照)。

今後のリスク要因

ユーロ圏経済の先行きを巡るリスク要因としては、供給制約の影響が注目される。供給制約の深刻化・長期化に伴い、ドイツの製造業では幅広い業種で生産が受注に追いつかない状況が続いている(図3参照)。ユーロ圏経済は輸出動向の影響を受けやすいことから、供給制約に伴う生産の停滞が輸出の減速に繋がれば、観光業を含む内需に牽引される景気回復の動きが阻害されてしまう可能性がある。

また、供給制約はユーロ圏のインフレ動向にも大きな影響を及ぼしている。特にエネルギー価格は、天然ガス価格の高騰などに伴い足もとで急激な上昇を続けている。エネルギー価格の上昇は家計への打撃が大きく、景気減速要因となることに加え、過去にフランスで起こった「黄色いベスト運動」のように深刻な社会問題へ発展する可能性もある。

こうした事態を未然に防ぐため、欧州委員会は加盟国政府に対してバウチャーの提供やエネルギー料金の一部負担といった対応策の導入を提案している。また、エネルギー価格の上昇が長期化すれば、当面の間マイナス金利政策を維持することが見込まれている欧州中央銀行(ECB)の金融政策にも影響が及ぶことがあり得よう。

天然ガス価格上昇の背景には、経済活動再開などに伴う世界的なエネルギー需要の高まりや、天候要因による再生可能エネルギーの供給減少など需給両面の「一時的」要因が作用していることが指摘されており、これらに起因する価格上昇圧力は剥落へ向かう可能性が高い。しかしながら、上述した潜在的な影響の大きさを踏まえれば、エネルギー価格の行方には今後も注意が必要だ。

2021年11月号「投資環境レポート」の続きは、こちらからご覧ください。

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(提供元:野村アセットマネジメント)