日本における“投資の選択肢”を増やしたいー。そんな思いから誕生したサービスが急拡大を見せている。「Funds」である。

Fundsとは、わかりやすくいえば、企業に間接的に資金を貸し出す形で投資ができる「貸付投資」のサービス。投資家は一定期間、企業にお金を貸し出す代わりに、その期間を終えると、元金に利息がついて戻ってくる。1円から投資できるのも特徴だ。

なぜ、このサービスが“投資の選択肢”を増やすのか。そしていま、この時代に人気を集めている理由はどこにあるのか。ファンズの代表取締役を務める藤田雄一郎氏に聞いた。

「投資家は、誰もがハイリスク・ハイリターンの投資を求めているわけではない」

Fundsのサービス開始は2019年1月。誕生のきっかけを聞くと、藤田氏は背景にあった思いを語ってくれた。

「日本には『投資の選択肢が少ない』という課題感がありました。株式投資や投資信託、あるいは暗号資産(仮想通貨)などは、高いリターンを得られる可能性もあれば、逆に大きな損を被るリスクもあります。一方で損をしにくい、リスクが低い投資としては国債などが挙げられますが、こちらは期待できるリターンも大幅に低くなります。投資の選択肢が二極化している中で、その中間に当たる商品を作りたいという思いがありました」

藤田氏はサイバーエージェントに入社後、個人から資金を集めて企業に貸し出す「ソーシャルレンディング」の可能性に着目した。そのときに感じていたのが「投資家は、誰もがハイリスク・ハイリターンの投資を求めているわけではない」ということだった。

こういった気づきも手伝い、国債よりはリターンが期待できるものを作ろうと考えた。

「日本は先進国の中でも現預金比率(家計の金融資産に占める預貯金の割合)が高いと言われますよね。その状況を変えて『貯蓄から資産形成へ』という流れを加速させるためには、投資の裾野を広げることが必要。選択肢を増やすことはその一助になると思いました」

やがて藤田氏は、大手ソーシャルレンディングサービスの立ち上げを経て、クラウドポート(現ファンズ社)を創業。Fundsというサービスを世に出した。

Fundsでは、個人投資家が1円から企業にお金を貸し出せる。といっても、直接個人が企業に貸し出すことは法律上できない。企業が資金調達のために組成したファンドに対して投資する。

「さまざまな企業がファンドを組成しており、それぞれ資金使用の目的(資金用途)と予定利回り(%)、予定運用期間、募集金額などが定められています。利回りは1〜3%(予定、年率、税引前)が中心、運用期間は1〜3年が多くなっていますね」

投資をしたら、運用期間中は“待つだけ”。相場による値動きはないので、日々何かをチェックすることもない。運用期間が終わると、元金に利回りがプラスされて戻ってくる。

さらにファンドの中には、株主優待ならぬ「Funds優待」を提供しているものもあり、投資するとクーポン券やイベント招待といった特典がつくケースも。過去の例では、大阪王将のファンドで運用期間中は何度でも使える「10%割引券」などがあった。

月次の募集額は1年で3.25倍に。企業はなぜFundsで資金調達を行うのか

冒頭で述べた通り、Fundsの人気は急拡大している。個人投資家の会員数は、サービス開始1年後の2020年1月に2万人、2021年2月に3万人を突破。そして同年10月には4.5万人を超えた。

また、お金を借りる側の企業もFundsの活用が進んでおり、一月あたりにFunds上のファンドで募集された金額の合計(月次募集額)を見ると、2021年10月には、前年同月比3.25倍の16.9億円を記録した。

これらのデータからわかるのは、資金を間接的に貸し出す個人投資家、そして資金を借りる企業の両方がFundsを求めているということだ。その理由について、藤田氏はこう考えている。

「まず個人投資家については、ここ数年で個人がインターネットを通じてお金を投じる行為がメジャー化したことが大きいと思います。加えて、それまでインターネットを使った資金調達というと、中小企業やベンチャー企業が行うイメージだったはず。Fundsでは、上場企業をはじめ、広く名前の知られている企業が多いため、投資できるのではないでしょうか」

現在、Fundsを利用する企業の8割は上場企業。馴染みがある大企業だからこそ、個人投資家がお金を投資しやすいのだろう。

一方、お金を借りる企業はFundsにどんな魅力を感じているのか。まず前提として、企業が資金調達を行う際、2つの代表的な手段が挙げられる。「株式」による資金調達と「借入」だ。このうち、Fundsが担うのは「借入」の部分になる。

「企業が借入をする場合、多くは銀行から行います。特に上場企業は財務も健全なため、低金利で銀行からお金を借りられるでしょう。むしろFundsで資金調達すると、銀行よりも利息が高くなり、企業にとってはコストが上がってしまいます」

それでも企業がFundsを利用する理由はどこにあるのか。藤田氏は2つの理由があるという。ひとつは、銀行より依然高いとはいえ、徐々にFundsにおける利息が下がってきたこと。

「初期から上場企業を中心にファンドを展開してきたことで、個人投資家の方からFundsは安心感のあるプラットフォームだと認知していただきました。結果、利回りが以前より低くても、投資家の方が“安心感”を求めて投資する環境ができています。それは、企業にとって低い利息、つまり低コストで資金調達することにつながります」

とはいえ、それでも銀行よりはコストが高い。だが、そのデメリットを補って余りある魅力がFundsにはあるという。それこそが、企業がFundsを使う2つ目の理由だ。

「Fundsを通じて、個人投資家とつながることが企業のメリットになっています。個人投資家に対して会社や自社サービスを知ってもらう機会になりますし、実際に投資した人はその企業のファンになりやすい面もあります」

つまり、Fundsが資金調達としてだけでなく、ファンづくりという付加価値を生んでいる。企業のマーケティングにもなっているのだ。このメリットこそ、借入コストが高くても企業がFundsを利用する動機になる。

ファンド審査では、運用期間における企業の財務状況をシミュレーション

先ほど「参加企業の8割は上場企業が占める」いう話が出たが、残り2割の企業についてもファンズ社として厳正な審査を行っているとのこと。

「審査で何より重視するのは、運用期間後にお金を返済できる能力があるかどうか、です。たとえば運用期間2年のファンドなら、その企業の2年間のキャッシュフローや、2年後の現預金残高をシミュレーション。それもコロナ禍のように、経済に大きな打撃を与える出来事が起きた場合まで想定し、それでも返済能力のある企業のみ審査を通過します」

なお、これだけの審査をしても、企業の倒産などによる貸し倒れリスクはゼロではない。だからこそ「あくまで余裕資金で投資してください」と藤田氏。また、ファンドに投資したら運用期間が終わるまではお金を戻すことができない。この点も株式投資などとは違うので、注意が必要だ。

サービス拡大の勢いはいまだ続いており、2021年12月には三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)のファンドが登場した。日本の金融の本丸が、このスキームに初参加した形。「銀行からお金を借りるのではなく、個人が銀行にお金を貸すというユニークな体験が生まれたと思います」と藤田氏は笑顔を見せる。

「未来の不安に、まだない答えを」。取材中、藤田氏が口にしたFundsのミッションである。その言葉通り、このサービスはこれまでにない挑戦をしてきた。投資の選択肢を増やしたこと、個人が銀行にお金を貸すという体験……。この先、未来のFundsは何をつくるのか。まだ誰も予想もできない、新しい“答え”が生まれるかもしれない。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年1月現在の情報です