※この記事は2021年11月05日にSODATTEサイトで公開されたものです。

「ESG投資」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ここ数年、世界の投資家たちが注目し、積極的に行なっている新たな投資手法です。テーマは環境や社会。それがなぜ、投資対象として関心を高めているのか。また、資産運用として私たち個人投資家でもトライできるものなのか。日本でも徐々に広がりを見せている中、専門家の方にお話を伺いました。

●お話を伺った専門家
夫馬賢治さん
株式会社ニューラルCEO。経営戦略・金融コンサルタント。ESG投資における第一人者としてメディア出演、講演などでも活躍。政府のESG関連の委員の他、ニュースサイト「Sustainable Japan」編集長も務める。著書『ESG思考』『超入門カーボンニュートラル』『データでわかる 2030年 地球のすがた』他。

ESG投資とは

市場環境の転換期に求められるもの

ESG投資の「ESG」とは、「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「ガバナンス=企業統治・法令遵守(Governance)」のそれぞれの頭文字を合わせた言葉です。これらを意識し、経営に積極的に取組んでいる、そういった企業へ投資を行なう手法を、ESG投資といいます。

具体的な取組みとして、どういったものがあるでしょうか。一例として、「環境」であれば電力を再生可能エネルギーに切り替える、「社会」であれば女性従業員の採用と活躍の場を広げる、また、「ガバナンス」では社外取締役を取締役会の50%以上にするといったことが該当します。

▲出所/GPIFの公式ホームページより

この投資手法、従来とは大きく異なる点があります。これまでは、投資先の価値を判断する主な材料として、売上、収益率、自己資本比率など、数値としての財務内容がありました。一方、ESG投資は、地球環境や社会への貢献、そして企業としての法令遵守といったものが判断材料として加わります。それは一見すると、企業業績や成長性とどう結びつくのかが想像しにくいものです。

では、なぜそのようなESG投資が注目され、そして拡大しているのでしょうか。経営戦略・金融コンサルタントの夫馬賢治さんは、今までの市場環境と将来の市場環境が大きく変わるという認識が、投資家たちの中にあるからだと考えています。

「例えば、ガソリン車が将来もずっと売れ続けるかといえば疑問です。自動車に限らず、さまざまな産業が今や大きな転換期を迎えています。その中で、今まで業績が良かった企業が将来も期待できる、という判断がしにくくなってきました。そうなると、未来にどう対応できるかという持続可能性の観点で企業を見ます。そのときのテーマとして、環境面や社会面での変化への適応力、あるいはガバナンスの視点が、投資家にとって重要な要素になってきたわけです。そのうえで、企業である以上はしっかりと利益を出す必要があります。ESGは単なる社会貢献ではなく、将来的な利益を生むための手段といえるでしょう」(夫馬さん)

ESG投資とSDGsとの関係

「持続可能な社会」の実現は民間企業に託された

ESG投資が拡大する背景について、もう少し見ていきましょう。そのヒントとなるのが、今やその名を聞かない日はない「SDGs」です。実は、両者はネーミングが似ているだけでなく、投資において密接な関係にあります。

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連に加盟する193カ国すべてが合意採択した「持続可能な開発目標」のこと。気候変動対策や貧困撲滅、格差是正など17の目標が設定されています。そして、ここで注目すべきは、こういった課題解決の中心に政府ではなく民間企業が躍り出てきたということです。

SDGsのいわば牽引役を任された企業は、積極的にその取組みを行なうことで、次第にその企業価値が高まっていきます。同時にそのような企業の増加は、「持続可能な社会」という価値が共通する「ESG投資の有望な投資先」が増えることを意味します。結果、ESGに積極的な企業に資金が集まり、事業機会も増えていくという循環を生んでいるのです。

ESG投資の国内拡大の背景

GPIFがESG投資に本格参入

現在、全世界のESG投資額は20兆ドルを超えると言われ、投資のトレンドとなっているESG投資ですが、日本で本格化したのは2015年から。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるESG投資への参入が大きなキッカケとなりました。

GPIFはその名のとおり、国民年金と厚生年金の積立金の管理・運用を行なっている独立行政法人です。その運用資産額は実に186兆円(2020年度末時点)。2020年度はわすが1年で約37兆8,000億円もの運用益を生んだ、「クジラ」とも称される、世界最大規模の機関投資家でもあります。

「投資市場では、GPIFは規模も、その存在感も圧倒的です。日本の投資市場そのものを動かすほどの影響力があるといってもいいでしょう。そのGPIFがESGを考慮して投資することを表明しているわけですから、業界全体が一斉に動くのも当然といえば当然です」(夫馬さん)

GPIFは2017年には全資産の運用にESGの要素を考慮するという方針を打ち出し、2020年度のESG投資の運用資産額は10兆6,000億円に達しています。

ESG投資を始めるには

投資ビギナーや若い世代にこそお勧めの投資法

では、私たち個人投資家は、どのようにESG投資を始めればいいのでしょうか。そもそも、投資ビギナーでも可能な資産運用の方法なのでしょうか。夫馬さんは、実は投資をこれから始めようと思っている人や、若い人にこそ実践してほしい投資法だと言います。

「ESG投資は、そもそも長期の資産運用を前提としているので、リスクを抑えた投資がしたい、あるいは、将来の老後資金づくりをしたいという人にはとても向いた運用手法です。その性質上、すぐに結果が出ない、短期的に大きなリターンが得られないという側面はもちろんあります。しかし、それでも将来的な成長性は高いと考えていいと思います」(夫馬さん)

具体的な投資商品としては、大きく分けて2つあります。まず、ESGの取組みが評価されている個別企業の株式。もうひとつは、ESGをテーマとした投資信託、ETF(上場投資信託)です。

「私は投資信託、ETFを強くお勧めします。個別株の場合、その企業の10年後、20年後の姿を見通すには相当な専門知識を要します。その分析は、一個人の力では難しいでしょう。そうであれば、プロのファンドマネージャーが選別した銘柄に投資する投資信託や、指数に連動するETFのほうが、少なくとも投資ビギナーの方は気軽に始められるはずです」(夫馬さん)

また、投資信託やETFはそれ自体が複数の銘柄に分散投資していることになりますが、積立での購入であれば、時間の分散もできます。さらに、例えば月1万〜2万円といった少額でも、同時に数本の積立を行なえば、さらにリスク分散の効果が高まります。加えて、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用すれば、税制優遇も受けられ、さらに効果的と、夫馬さんはアドバイスします。

投資信託の選び方

目論見書にそのヒントがある

ESG投資は投資信託がお勧めとは言うものの、国内で扱われているESG関連の投資信託は100本を超えています。その中で、何を基準に選べばいいのでしょうか。

「最初は大変かもしれませんが、必ず目論見書をチェックしてください。特に、ファンドの目的や運用方針はよく理解しておきましょう。利益をしっかり出し、出資者に還元することを目指す運用方針かどうか。読めば明確に見えてきます。逆に、そこには触れず、社会貢献という視点のみで銘柄を組入れている投資信託は、運用成果そのものもあまり期待できない可能性があります」(夫馬さん)

すべての投資信託に必ず目論見書はあります。ネットからPDFでダウンロードして、中身を確認できますので、「ESG」と検索して、その部分を確認するのもいいでしょう。

ESG投資の注意点と今後

まだ上昇余地は十分にある国内のESG投資

最後に、ESG投資をする上での注意点、今後の展望を夫馬さんに伺いました。

まず気をつけたいのは、いろいろなメディアで目にする「推奨銘柄ベスト10」といったランキング情報。本当に信用できる情報なのか不透明なものも多いため、安易に購入することは避けてほしいとのこと。自分で納得できるまで調べてみるとよいでしょう。

さらに、ESG投資そのものが、日本国内では理解されていないと感じることが多いという点も指摘します。

「環境にいい会社、社会貢献に積極的な企業に投資をするのがESG投資だと、専門家によって語られることがよくありますが、プロの投資家たちはそんな曖昧な基準で投資はしません。重視するのはあくまで、ESGの取組みの先にある、企業の競争力です。

例えば、ダイバーシティが投資の世界でも着目されるのは、女性が働きにくい企業、性別や国籍の違いを理由に人材を活かせない企業に、これからの成長はないと判断できるからです。ESG投資はフワッとしたブームのようなものでなく、しっかりと歴史を刻んで成長してきた投資手法だと理解してほしいと思います」(夫馬さん)

また、ESGの取組みを行なわない企業から資金を引上げるという側面も、ESG投資にはあります。その結果、世界規模でESG投資への流れはより加速しているのです。あのGAFAM(※)でさえ、全社的にESGの視点によるオペレーションを積極的に行ない、ここ5、6年でESG投資の基準で見ても優良企業となっているのです。

※グーグル(アルファベット)、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト

「日本でも特に個別株は、人気が先行してすでに割高になっている銘柄も少なくありません。それでも欧米に比べて、本格的なESG投資の動きは約10年遅れていると言われています。国内投資のうち、ESG投資への資金の全体の25%もありません。今後、多くの資金が、ESG投資に集まってくる可能性は高いのではないでしょうか」(夫馬さん)

まだ十分に上昇余地が期待できる、国内でのESG投資。皆さんが目指す資産運用を実現するための、有望な選択肢として考えてみてはどうでしょうか。

取材・執筆/清水京武

(提供元:大和証券)

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