高校家庭科での金融経済教育がスタートするなど、投資やお金についての“学び”が重視されている昨今。そんな中、投資を学べるアプリを開発し、投資家デビューを後押しする会社がある。渋谷のベンチャー企業のグリーンモンスターだ。

同社が提供するアプリは、デモトレードや投資シミュレーションができる「体験型投資学習コンテンツ」。これまでにリリースしたアプリは累計400万以上インストールされ、実際に証券口座を開設した人も20万人超に上るという。

また同社は、投資家層の裾野拡大に貢献してきた臼田琢美氏が在籍する企業でもある。臼田氏は、ネット証券の先駆けであるカブドットコム証券(現:auカブコム証券)の設立に携わり、また、投資家コミュニティとして当時、国内最大規模だった「かぶこーネット」を立ち上げた人物。「る〜さ〜!」のペンネームでも知られる。そんな臼田氏は、これからの時代、どのように「投資の普及」をしていきたいのか。

そこで今回は、グリーンモンスターの藤沢亜理沙氏(取締役)と臼田琢美氏(広報室長)に取材。同社の事業を紐解きながら、未来の投資普及について考える。

投資を知らない人が、簡単に学び、行動に移せるアプリ

近年、金融以外の会社が金融経済教育事業に携わるケースが増えている。グリーンモンスターもそのひとつ。同社はデジタルマーケティングを強みとしており、その上で、さまざまな体験型投資学習アプリを提供している。この記事では、その中から株式投資に関連した2つのアプリを取り上げたい。

1つ目に取り上げるのは「株たす」というアプリ。株取引のデモトレードができるもので、東証の株価データを取得し、実際の値動きを反映する。

それに加えて特徴的なのが、投資を学べるコンテンツの充実ぶり。藤沢氏が説明する。

「投資を知らない方が、簡単に学び、行動(デモトレード)に移せる設計を重視しています。『株の選び方』といった入門的なコンテンツもありますし、株式投資を学ぶマンガも掲載しています」

そのマンガは「日本株式ばなし」というタイトルで、浦島太郎ならぬ“株島太郎”が主人公のストーリー。長年、金融業界に身を置いた臼田氏は、この漫画の印象をこんな風に表現する。

「投資を学ぶコンテンツは多数ありますが、マンガで学ぶのは入りやすいですね。我々のような金融出身だとつい専門用語を使いがちですが、このマンガは、言葉遣いや表現も投資未経験者に分かりやすくなっています」

マンガもテキストのコンテンツも「難しい用語を噛み砕き、投資初心者にも伝わる表現を心がけています」と藤沢氏。具体的にどう工夫しているのか、その秘訣は記事後半で改めて触れたい。

「株たす」ではIPO投資を体験できるのも特徴。これから上場する本物のIPO銘柄について、上場前の申込から上場後の株価推移まで、一連の体験ができる。「デモトレードのアプリでここまでIPOが充実しているものは他にないのでは」と臼田氏はいう。

そのほか、「株たす」ではチャート分析を学ぶこともできる。過去の値動きを参考に、自分が投資した場合の結果を見たり、その値動きを振り返りながら、「テクニカル」と呼ばれる、チャートの形状から将来の値動きを予想する手法についても学ぶことができる。

たとえば、テクニカルで言われる「ゴールデンクロス」というチャート形状が発生したポイントをユーザーに知らせ、その後、株価が実際に上がったかを見られるのだ。

続いて、同社のアプリで取り上げるのが「トウシカ」だ。こちらのメイン機能は、つみたてNISAやiDeCoを運用したらどう資産が変化するかを見られる「つみたてシミュレーション」だ。

「老後の不安から、つみたてNISAやiDeCoにチャレンジする方が若い世代を中心に増えています。とはいえ、その仕組みやどのくらいの可能性がある投資なのかを詳しく知らない方も多いと感じています。そこで、少しでも投資の有益さを実感していただきやすいように、毎月のつみたて額や年率などを入力していただくだけで簡単に、数十年後の資産をシミュレーションします」(藤沢氏)

このアプリにも初心者にやさしい工夫がある。たとえば、ユーザーはシミュレーションを始めるにあたり、「年齢」や「毎月のつみたて額」、「運用タイプ」などを入力する必要があるのだが、それらはアプリ内でチャット形式の質問に答えていくだけで必要項目が自然に埋まり、即座にシミュレーションが行われる。

質問に答えるだけなので、ユーザーが感じる負担は少ないだろう。臼田氏は「ファイナンシャルプランナーと話しながら行う感覚に近いかもしれません」という。この辺りの“手軽さ”も初心者には重要だ。

初心者向け投資コンテンツを作る上で、つねに思い浮かべる人とは

2つのアプリをきっかけに、口座開設をして投資デビューを達成した人も少なくないとのこと。また、最近は学校で同社アプリが使われるケースも出ており、今年3月、共立女子中学高等学校で行われた春期講座「18歳から大人 大人になったときに知っておきたいお金の話」の教材としても「株たす」や「トウシカ」が使用されたという。

こういった投資初心者向けのアプリだからこそ、噛み砕いた表現を心がけているのは先述の通り。具体的にどう工夫しているのか、藤沢氏はこんな考えを教えてくれた。

「いつも意識しているのは、自分の実家の両親にもわかるような表現にすることです。また、社内には投資に詳しくないメンバーも多数います。彼ら彼女らが投資を知らない状態でも興味を持ち続けられる内容をつねに心がけています」

「株たす」では投資を学ぶマンガが掲載されているが、実はそのマンガを描いているのは藤沢氏本人。絵もすべて自作だ。マンガの掲載を始めた理由も、やはり初心者がよみやすく理解しやすいコンテンツを追い求めたからだ。

そして、こういったマンガコンテンツを載せたあたりから、グリーンモンスターの投資関連アプリの利用者数が伸びていったという。金融出身ではないからこその感覚が、投資初心者に刺さったのかもしれない。

「世の中には投資アレルギーを持つ方もいると思います。それを初心者の気持ちに寄り添ってサービス開発を進めていきたいですね。加えて、私たちの得意とするデジタルマーケティングのスキルを使い、投資初心者の方にも私たちのつくったサービスを知っていただけたらうれしいです」(藤沢氏)

こういった“非金融”のベンチャー企業に、臼田氏のような金融出身の人が入った。臼田氏は、非金融の会社で投資の普及に挑む意義をどう捉えているのだろうか。

「金融機関も投資家層の裾野拡大に力を入れていますが、どうしても金融機関だけでは拾いきれないターゲット層がいます。そこに非金融の会社が参加し、違う角度からアプローチすることで、いままでタッチできなかった層に手が届くはず。それが、いまの日本で投資を普及させるために必要ではないでしょうか」

だからこそ、臼田氏もこの会社に身を置き「自分の経験を活かしてチャレンジしたい」と続ける。

最後に、グリーンモンスターは今後の展望をどう考えているのか。藤沢氏は「3段階の目標」があると話してくれた。

まず、第1の目標は「投資デビュー支援」であり、これは現在のアプリで一定数できているとのこと。しかし、アプリによって投資デビューした人が損をしたりつらい経験をしては投資の普及につながらない。

そこで、第2の目標として「Investor Success(投資家の成功)」を追求するという。「その実現に向けて、AIやbotなどを通じた継続的な学習ツールの開発、情報提供に取り組んでいきます」と藤沢氏。

そして、第3の目標としてこんな思いを口にする。

「いずれは、お金のためだけの投資ではなく、ESG投資のような『社会への支援としての投資』にも取り組みたいですね。よく日本ではイノベーションが起こりづらいと言われますが、投資が普及することで挑戦の土壌ができ、日本発のイノベーションにつながると思います。投資を基点に、人々と社会の関わり方を変えていきたいですね。投資を通して皆さんが『消費者から支援者に』なっていただくこと、これが第3の目標です」

非金融のメンバーが作る会社に、ネット証券の黎明期を支えた人物が加わって、投資デビューを支援するグリーンモンスター。さまざまな背景を持つ人たちが、金融の未来をつくろうと力を合わせている。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2022年6月現在の情報です