iDeCo(個人型確定拠出年金)は、専業主婦(夫)も加入できます。加入するメリットは、受取時の税額控除を受けられる点や自分名義の資産をつくれることです。

本記事では、iDeCoに専業主婦(夫)が加入するメリットに加え、注意点も解説します。

専業主婦(夫)もiDeCoに加入できる

iDeCoとは、積み立てによる老後資金づくりを国が支援している個人型確定拠出年金制度のことです。当初、加入できる人は自営業者などに限定されていましたが、2017年1月からは専業主婦(夫)も利用できるようになりました     。

ここでは、iDeCoの概要について簡単に紹介していきます。iDeCoの詳しい制度概要については、以下の記事も参考にしてください。

個人型確定拠出年金(iDeCo)とは自分で始める年金制度!概要やメリットも解説

2017年よりほぼ全ての人が利用可能

iDeCoの加入対象者が拡大するきっかけとなったのが、2017年1月1日に施行された確定拠出年金制度改正です。本改正により、専業主婦(夫)、企業年金のある会社員、公務員もiDeCoに加入できるようになりました。

さらに、2022年5月1日に新たな改正があってからは、60歳以上65歳未満の会社員や公務員、60歳以上65歳未満の国民年金任意加入者、海外在住の国民年金任意加入者もiDeCoの利用が可能となりました。

年に一度掛金額の変更が可能

加入者は、iDeCoの運営管理機関に「加入者掛金額変更届」を提出することで、毎月の掛金額を変更できます。ただし、一年に一度しか掛金額を変更できない点に注意が必要です。

掛金の上限額については後述しますが、専業主婦(夫)になる前からiDeCoに加入していた方は、収入が減少することを踏まえて退職時に掛金を変更することも検討しておきましょう。

専業主婦(夫)がiDeCoに加入するメリット3つ

2019年3月時点で37,392⼈だったiDeCoの第3号加入者数は、3年後の2022年3月には102,776⼈まで増加しました。iDeCoの第3号加入者には、専業主婦(夫)が含まれます。

以下のようにさまざまなメリットが期待できる点が、専業主婦(夫)の加入者数が増加している要因といえるでしょう。

1.運用益の非課税や受取時の税額控除を受けられる
2.自分名義の財産をつくれる
3.就職しても続けられる可能性がある

本章では、それぞれのメリットについて解説します。

1.運用益の非課税や受取時の税額控除を受けられる

iDeCoでは、運用益が非課税で再投資される点がメリットです。通常、預貯金の利子や上場株式等の譲渡益・配当には20.315%の申告分離課税が課されます。

最終的に受け取る際にも、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」という税額控除の対象です。

2.自分名義の財産をつくれる

専業主婦(夫)の場合、原則として配偶者の収入で生活費をまかなうことになりますが、iDeCoに加入していれば、最終的に自分名義で資産を受け取れる点がメリットです。

そのため、万が一離婚することになった場合や老後の資産に不安がある場合にも、iDeCoで形成した資産が役に立ちます。

3.就職しても続けられる可能性がある

現在は専業主婦(夫)でも、子どもの成長などライフスタイルの変化に伴い正社員として仕事に復帰する可能性はあるでしょう。就職して正社員になってからも、専業主婦(夫)時代に加入していたiDeCoを続けられる可能性がある点もメリットです。

ただし、就職先が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している場合、iDeCoの資産が企業型DCに移換されることがあります。その際は、iDeCoで運用している金融資産を一旦現金化して、新たに企業型DCで扱っている金融商品に配分することになりますが、その際に利益が出ていても税金はかからないので、安心です。

iDeCoに加入する際の注意点3つ

さまざまなメリットが期待できる一方で、専業主婦(夫)がiDeCoに加入する際にいくつか気をつけなければならないこともあります。主な注意点は以下のとおりです。

1.掛金は夫(妻)の所得控除には利用できない
2.掛金の金額範囲が限定されている
3.就職・復職する際は勤務先に確認が必要

3つの注意点について、詳しく解説します。

1.掛金は夫(妻)の所得控除には利用できない

iDeCoに加入するメリットのひとつが、掛金が全額所得控除の対象となる点です。所得税(10%)、住民税(10%)とすると、毎月の掛金が1万円の場合、所得税・住民税あわせて年間約2.4万円の税額が控除されます。(2022年6月現在)

しかし、専業主婦(夫)で収入が一定額を下回る場合、もともと所得税や住民税を払っていないため、所得控除の恩恵を受けることはできません。また、専業主婦(夫)が加入するiDeCoの掛金を夫(妻)の所得から控除することもできません。

2.掛金の金額範囲が限定されている

iDeCoでは、国民年金の加入区分に応じて掛金の上限額が定められています。そのため、自営業者(国民年金の第1号被保険者)は月額上限6.8万円に対し、国民年金の第3号被保険者にあたる専業主婦(夫)は2.3万円までしか掛金を設定できません。

ちなみに、国民年金の第2号被保険者である会社員も月額2.3万円(確定給付企業年金に加入している会社員は1.2万円)、公務員は1.2万円が上限です。(2022年6月現在)

3.就職・復職する際は勤務先に確認が必要

就職(復職)した場合、会社の企業型確定拠出年金に加入しない場合はiDeCoに引き続き加入可能です。一方、就職先で企業型確定拠出年金に加入する場合、iDeCoの資産を就職(転職)先の企業型確定拠出年金に移換することになります。

ただし、企業型確定拠出年金規約で認められている場合、企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入も可能です*。別途手続きが必要となる場合もあるため、就職(復職)する際は勤務先に確認するとよいでしょう。

*2022年10月1日に、企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入要件が緩和予定です。以降は、従来企業型年金規約の定めからiDeCoに加入できなかった人でも加入できるようになります。ただし、各月の企業型の事業主掛金額と合算して月額5.5万円を超えない、掛金が各月拠出、マッチング拠出を利用していないことが条件です。

主婦(夫)と税金の関係を整理しておく

iDeCoに加入することで、主に税制面でのメリットが期待できます。そのため、加入前にあらかじめ主婦(夫)と税金の関係を整理しておくことが大切です。

主婦(夫)の税を考える上で、年収100万円・103万円・130(106)万円がひとつの境界線となります。各年収と住民税・所得税・扶養の関係性について確認していきましょう。

年収100万円が住民税の壁

個人住民税には、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、所得金額にかかわらず定額で課税される「均等割」の2種類があります。原則住民税(所得割)の非課税限度額は45万円です。

55万円までは給与所得控除できるため、専業主婦(夫)がパート収入を得たとしても年収100万円(45万円+55万円)までは住民税(所得割)がかかりません。そのため、年収100万円を住民税の壁と表現することがあります。

ただし、住民税(均等割)の非課税限度額は各自治体によって異なります。パート収入が100万円以下であっても、お住まいの市区町村によって住民税(均等割)がかかることもあるため注意しましょう。(2022年6月現在)

年収103万円が所得税の壁

所得税の基礎控除額は48万円です。基礎控除額とは、所得税額を計算する際に総所得金額から差し引ける金額を指します。

また、給与所得控除額は55万円のため、専業主婦(夫)がパートで働いていても年収103万円(48万円+55万円)までは所得税がかかりません。年収103万円を所得税の壁と表現することがあります。(2022年6月現在)

年収130(106)万円が社会保険上の扶養の壁

専業主婦(夫)は、社会保険上、夫(妻)の扶養に入れます。扶養に入ることで、自分で保険料を支払わずに健康保険や厚生年金保険に加入できる点がメリットです。

ただし、年収が130万円を超えると社会保険上の被扶養者から外れ、社会保険料負担が新たに発生します。また、専業主婦(夫)がパートで働く勤務先が一定の条件に該当する場合、年収106万円を超える時点で保険料を負担をしなければなりません。

そのため、年収130(106)万円を社会保険上の扶養の壁と表現することがあります。(2022年6月現在)

参考:国税庁「家族と税」
参考:厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」

専業主婦(夫)もiDeCo加入で将来に備えよう

2017年1月1日より対象が拡大したため、専業主婦(夫)もiDeCoに加入できるようになりました。専業主婦(夫)がiDeCoに加入するメリットは、運用益の非課税や受取時の税額控除を受けられる、自分名義の財産をつくれるなどです。

仕事に復帰しても続けられる可能性があるため、専業主婦(夫)の時からiDeCo加入を検討し、将来に備えましょう。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚

監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。