今や個人投資家から大人気の「株主優待」。株主優待を目的に株式投資をしている人も多いのではないでしょうか。各企業の優待内容は、企業のホームページで確認できると思いますが、優待導入の背景や開発秘話はなかなか知ることができません。

そこで、人気企業の株主優待担当者にインタビューを敢行!株主優待導入の背景や現在の優待に決まった経緯、裏話までセキララに語っていただきました。

今回は、日本の伝統調味料であるしょうゆを中心に、つゆ・たれ・うちのごはんなどの和風調味料、デルモンテブランドの洋風調味料や飲料、本みりんやワインなどの酒類、豆乳などの販売を手がける、大手食品メーカー「キッコーマン株式会社」の株主優待です。

聞き手・執筆:優待好きFP 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。早速ですが、なぜ、株主優待を導入しようと思ったのですか?

当社の株主優待は、2002年3月基準日から導入しております。この時期は、他の食品メーカー様も優待を導入し始めていた時期でした。

当社は、食品メーカーですので、エンドユーザーである個人の方に株主になっていただき、中長期にわたって当社の株を保有していただきたいという想いで優待を導入しました。

当初は、1,000株以上保有の株主様に2,500円相当の自社商品を贈呈していました。

――御社の株価を拝見すると、優待をもらうための条件が1,000株以上だと、ハードルが高い感じがしますね。

現在は、おかげさまで株価は8,000円を超えていますが、優待を導入した当初の株価は1,000円を切るくらいでしたので、当時としてはハードルが低かったと思います。

しばらくの間、1,000株以上保有の株主様に2,500円相当の自社商品を贈呈させていただく形を継続していましたが、2017年4月に単元株を1,000株から100株に変更しましたので、それをきっかけに、これまで以上に多くの方に当社を応援してもらいたいとの想いから優待制度を拡充しました。

2018年3月基準日からは、100株以上1,000株未満かつ1年以上継続保有の株主様には1,000円相当の当社グループ商品、1,000株以上かつ1年以上3年未満継続保有の株主様には3,000円相当の当社グループ商品、1,000株以上かつ3年以上継続保有の株主様には「3,000円相当の当社グループ商品+2,000円相当の株主様オリジナル調味料セット」、もしくは、「3,000円相当の当社グループ商品+2,000円相当の株主様オリジナル飲料セット」、もしくは、「3,000円相当の当社グループ商品+2,000円分の株主様オリジナルクオカード」というカテゴリーを追加しました。また、認定NPO法人国連WFP協会への寄付5,000円分も新設しました。

個人の株主様には、当社の株を長く保有していただきたいので、2018年3月基準日から所有期間の条件も追加しています。

――2018年3月基準日からは、かなり充実した内容になりましたね。

ありがとうございます。さらに、今年から優待内容がパワーアップしています。

というのも、今まで以上に株式関連の仕事に力を入れるべく、昨年6月に株式グループが発足しまして、私は昨年からこちらの部署に異動になりました。

株式グループが発足したミッションの1つに、多くの方に株主になっていただき、当社のファンになっていただきたいというのがあります。

株主優待は、個人の投資家の方が非常に関心を持たれているところでもあると思いますので、優待には力を入れていきたいと思っています。

その一環で、今回2022年3月基準日から100株以上1,000株未満かつ3年以上継続保有の株主様に2,000円相当の当社グループ商品の贈呈というカテゴリーと、1,000株以上かつ3年以上継続保有の株主様が選べる商品に5,000円相当の当社グループ製造ワインを追加しました。

――そうなんですね。どんな狙いがあって新規のカテゴリーを追加したのですか?

株主様の保有状況を調べたところ、10年以上継続保有してくださっている方が非常に多いことがわかりました。

また、3年以上継続保有してくださると、その後も長期に保有してくださる傾向が高まることもわかりました。そこで今回、100株以上1,000株未満かつ3年以上継続保有というカテゴリーを新設しましたが、100株以上1,000株未満の株主様の実に7割程度の方が3年以上継続保有してくださっています。

ですから、新規の株主様にも、継続保有してくださっている株主様にも、どちらにもご満足していただきたいという理由で新たな優待のカテゴリーを設けました。

ワインは、長野県の千曲川ワインバレーで栽培されるぶどうを原料として、当社のグループ会社であるマンズワイン小諸ワイナリーで製造している日本ワインです。こちらのワインは、国賓級VIPの宴で度々使用され、国内外のコンクールで受賞を重ねてきたプレミアム日本ワイン「ソラリス」シリーズです。マンズワイン最高峰の品質をそのままお届けするために、株主様の元へはクール便による温度管理配送でお届けします。

また、ワインは、当社のグループ会社の事業内容も知っていただきという想いもあり、選択肢に加えました。対象の株主様の約10%の方がワインを選択されていましたので、ワインを追加したことについてご好評をいただいたのではないかと思います。

――ワインは異色な感じがしましたが、御社のグループ会社の商品だったんですね。

意外に知られていないのですが、ケチャップやトマトジュースなどの「デルモンテ」ブランド商品も1963年から販売しています。優待の商品にグループ会社の商品も入れることによって、当社の事業内容をより深く知っていただければと思っています。

――グループ会社も含めると、御社は本当に多くの商品がありますよね。優待の商品を選定する上でご苦労はありますか?

実は、私はこちらの部署に来るまでは、営業を担当していたんです。

実際に営業で消費者の方と近いところで仕事をしていた身からすると、これまでの優待商品の品揃えと株主(=消費者)の方が求めるものがマッチしていないと感じるところがありました。

ですので、優待の商品を選定するにあたり、大きな枠組みを考えました。

まずは、1,000円相当の当社グループ商品については、当社の株式を持ち始めてくださったビギナー株主様向けに、当社の主力商品であるしょうゆ、豆乳、ケチャップなどを中心に入れることにしました。

今回新規に追加しました100株以上1,000株未満かつ3年以上継続保有の株主様向けの2,000円相当の当社グループ商品については、3年以上継続してくださっている株主様なので、新商品も楽しんでいただきたいということで、比較的新商品を多めに入れております。

3,000円相当の当社グループ商品については、たくさんの商品を入れられますので、当社グループ商品の幅の広さを楽しんでいただきたいということで、定番商品から新商品、グループ会社の商品に至るまで幅広い商品を入れております。

今回から優待商品に「優待商品のご案内」という冊子も入れ、カラー写真での商品説明や優待商品を使って作るレシピも掲載しております。

――優待にすごく力を入れているのが伝わってきますね。

ありがとうございます。実際のところ、各部署からこの商品を優待に入れてほしいという要望が多くありまして、その多くは新商品というケースがほとんどです。

もちろん、新商品を株主様に試していただきたいという想いもありますが、新商品の場合、今後もずっと市場に残り続けるかどうかはわからないところがあります。

せっかく株主様に気に入っていただいても、スーパーなどの店頭にその商品が置いていないとあまり意味がありません。ですから、商品の店頭での取り扱い状況も確認したうえで決定しています。

これまでは優待に新商品が多く入っていたのですが、本当に株主様が期待している内容に沿っているのかということを再考した結果、先ほどお話した形になりました。

――新商品も良いですが、御社といえば、やっぱりしょうゆですよね。しょうゆは古くからある調味料というイメージがありますが、御社はいつ頃、創業されたんですか?

当社のしょうゆづくりの始まりは、江戸時代初期になります。現在の千葉県野田市で、江戸へのしょうゆ供給地としてその礎を築きました。野田は、関東平野に育まれた良質な大豆と小麦、江戸湾の塩など、原料の確保に適した土地でした。また、良質な水、江戸川・利根川の水運にも恵まれ、しょうゆのふるさととして大きく発展と繁栄を続けました。

そして、1917年に野田・流山の醸造家8家が合同して設立したのが「野田醤油株式会社」でキッコーマンの前身となる会社です。

――うわー、そんなに古くからしょうゆは作られていたんですね。すごく歴史を感じます。

今でこそ、当社ではたくさんの商品を製造・販売していますが、やはり一番のオススメ商品はしょうゆですね。

しょうゆは、空気に触れてしまうと酸化して黒ずみ、味や香りも徐々に落ちてしまうのですが、この課題を克服するために当社では、「密封ボトル」を開発しました。密封ボトルは、しょうゆが空気に触れない構造になっているので、開封後も90日間、しょうゆの味、色、香りを常温で保てるようになりました。このイノベーションにより、長年の課題であった常温での生しょうゆ(火入れをしていないしょうゆ)の販売も可能になりました。

中でも、「減塩しょうゆ」は一押し商品ですね。健康志向がますます高まってきており、近年では、減塩しょうゆは大人気です。一般的に減塩しょうゆというと、希釈法(濃厚に仕込んだしょうゆを希釈して食塩分を減らす手法)で主に製造していますので、しょうゆのうま味成分や華やかな香りも薄まってしまいます。

しかし、キッコーマンでは脱塩法(しょうゆ中の食塩分をイオン交換膜を用いて選択的に除去する手法)で減塩しょうゆを製造していますので、しょうゆのうま味成分や華やかな香りはそのままに、食塩分だけをカットしています。そこが、キッコーマン減塩しょうゆのおいしさの秘密です。

そのおかげで、今では、キッコーマンの減塩しょうゆは、全国どのエリアでもトップシェア(減塩カテゴリー)を獲得しています。(出典:インテージSCI 2021年4月〜2022年3月)

――私も御社の減塩しょうゆを使っていますが、おいしいのに塩分控えめで、すごい技術力だなと思います。
今後の優待も楽しみですし、御社の今後のご活躍にも期待しています。それでは、最後に株主の方にメッセージをお願いします。

2007年に当社では、“キッコーマンの約束”として、「こころをこめたおいしさで、地球を食のよろこびで満たします。」を宣言しました。

この約束を実現するために、一人ひとりが、誠実に丁寧に、創意工夫を重ねながら、日々の仕事において、新たな挑戦を続けています。世界中の食卓に笑顔が広がっていくよう、伝統を守りながら、進化してまいります。

今後とも株主様におかれましては、当社グループ商品をご愛用いただくとともに、末長くご支援をいただきますようよろしくお願いいたします。

――本日は貴重なお話しをいただきましてありがとうございました。

【株主優待のプロフィール(データは2022年3月31日時点)】

年に1回実施。
100株以上かつ1年以上継続保有の株主様に保有株主数に応じて、当社グループ商品の詰め合わせセットを贈呈します。

優待内容は、 2022年3月基準日。

●優待商品例:キッコーマングループ商品詰め合わせセット(3,000円相当)

・年間予想配当金:61円(予定)
・最低投資金額:856,000円(100株単位)
・優待に必要な投資金額:856,000円(100株より)
※データは2022年8月31日時点

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