2022年4月、東京証券取引所はすべての世代に正しい金融知識を届けられるよう、「JPXマネ部!ラボ」を立ち上げた。学校教育や企業研修を中心に、投資初心者や投資に無関心な層に向けた情報の発信、教育の場の提供を行っていくプログラムだ。

その一環として、7月27日に行われた「STOCKPOINT for MUFG」のイベント開会式に、東京証券取引所も参加。東京証券取引所社員が講師を務め、イベントに招待された親子に向けて、株式の仕組みについて紹介した。その様子をお届けするとともに、「JPXマネ部!ラボ」の取り組みについても紹介しよう。

社会人にも学生にも金融知識を届けられる多様なプログラムを展開

個人株主数・NISA口座数・iDeCo加入者数の増加や、学習指導要領の改訂により高校の家庭科に資産形成の視点が織り込まれたことなどを受け、東京証券取引所としても金融経済教育活動を強化・改善するべく、「JPXマネ部!ラボ」を設置。以下のようなプログラムを展開していく。

JPXマネ部!ラボの「5つのマネ部!」プログラム
・資産形成解説ウェブメディア「東証マネ部!」
・一般社会人向けセミナー「セミナーマネ部!」
・企業向け金融教育研修「出張マネ部!」
・小・中・高校生対象「スクールマネ部!」
・大学生対象「キャンパスマネ部!」

これまでも個々のプログラムは存在していたが、ひとつのブランドに統合することで連携を図りやすくなり、企業や学校、個人にとっても利用しやすいプログラムになっていくだろう。

プログラムのひとつである「スクールマネ部!」は、小・中・高校生向けの授業支援のほか、親子向けイベントや教員向けセミナーも開催。具体的な取り組みとしては、次のようなものが挙げられる。

東証見学+受け入れ講義
小・中・高校生が社会科見学や修学旅行で東証見学に訪れた際に、見学の一環として、株式市場や投資の仕組みなどを伝える講義を行う。(現在は感染対策等のため休止中)

出張講義
全国の小・中・高校や教員のリクエストに応じて、オーダーメイドで金融経済の授業を展開する。講義内容や教材は授業によって変わり、座学だけでなく、株式模擬売買や体験型ボードゲームなどを用いた授業も行う。

中・高校向け教材の提供
教員が効果的な金融経済教育の授業を実践できるよう、証券知識普及プロジェクトでの活動のひとつとして、教員用手引書付き教材『金融クエスト』を展開。2021年度は全国の約1100校、約10.5万人の生徒に利用された。

また、これらの取り組みに加え、WEBサイト「スクールマネ部!『なるほど!東証経済教室』」も展開している。経済や投資の仕組みがわかる記事や動画、東京証券取引所の仕事を紹介するコンテンツなどを、子どもにもわかりやすい形で届けているため、家庭でのお金の勉強にも取り入れやすいだろう。

スクールマネ部!「なるほど!東証経済教室」
https://www.jpx.co.jp/tse-school/

株式投資は企業を応援すること、それが社会貢献につながる

「スクールマネ部!」の取り組みの一環として、ポイント投資アプリ「STOCKPOINT for MUFG」の期間限定イベントの開会式で、小・中学生向けに「経済と株式のおはなし」というテーマで講義を開催した。その内容の一部を、ここで紹介しよう。

今回の講師・町田さんがまず伝えたのは、東京証券取引所のこと。さっそく「東京証券取引所では1日にどれくらいの株式が取り引きされているでしょう?」というクイズが出題され、正解は「2兆円」。「その半分の1兆円を一万円札で1枚ずつ重ねていくと、東京スカイツリーも富士山も超えて、飛行機の安定飛行の高さになるんです」と解説すると、子どもたちも思わず「えー!?」と驚きの声を上げた。

続いて、株式の仕組みを紹介。町田さんは会社が資金を集める手段のひとつとして「株でお金を集める」という方法を挙げ、「1人に1000万円借りようとしても難しいですが、1000万円を1000個に分割すれば『1万円ならお金を出せる』という人が出てくるはずです。その1万円を出した証明書となるのが株式」と、わかりやすくたとえながら解説。株主総会についても、「学級会では一人一票で物事を決めますが、株主総会では持っている株式の数に応じて票数が変わります。一株だったら一票、三株だったら三票持っていることになるんです」と、子どもたちが理解しやすい例を交えて紹介していく。

投資に関しては、「株式を買って会社を応援すること」という入り口からスタート。「好きな会社に投資をすると、そのお金で会社はもっといい商品やサービスを生み出し、人々の生活は豊かになります。商品やサービスが売れた会社は利益が増え、従業員は給料が増えて買い物をするようになり、周りの会社も利益が増えていくんです。そして、会社は株主への配当も増やすことができます」と、投資が株主と会社のお金の好循環を生み出すことに加え、大きなお金が動くことで景気を良くし、最終的に社会貢献につながることも、わかりやすい言葉で伝えていく。

投資先を選ぶ方法についても、町田さんはまず「暑い日が続くと、何が売れると思う?」「朝から今日ここに来るまで、どんな乗り物に乗ってきた?」と、子どもたちに考えさせる。生活を取り巻くあらゆるものを会社が生み出していることを実感させ、会社が身近な存在だと気付かせるのだ。そして、「いろんな会社に投資することで、会社ごとの違いが見えて、新たな発見があるはず。ひとつの会社に集中して投資すると倒産などのリスクがあるので、注意しましょう」と、分散投資の大切さについても言及した。

子どもたちはもちろん、一緒にイベントに参加していた保護者も興味深そうに講義に聞き入っている姿が印象的だった。大人も、改めて株式や投資についての理解を深める機会になったことだろう。

目指すは「誰もが金融リテラシーの向上を図れる環境の整備」

イベント後半の質問コーナーでは、「どうして株価は上がるのでしょうか?」という質問が挙がった。町田さんは、「売りたい人と買いたい人のバランス。夕方にスーパーに行ってお弁当が売れ残っていると、20%引きになっていたりしますよね。それと同じで買いたい人が増えると株価が上がり、売りたい人が増えると株価は下がります。そして、会社の成績が上がると買いたい人が増え、株価が上がるのです」と回答。

続いての質問、「どんな風に“いい会社”を選べばいいのでしょうか?」に対しては、「成長する会社は、世のなかにいいものを出し続けているところ。例えば、任天堂は花札やトランプから始まり、スーパーファミコン、Wii、Nintendo Switchと、時代に合わせてみんなが欲しくなるもの、幸せになるものをつくった会社です。そういう会社は日々の生活のなかで見つけられると思うので、アンテナを高くして過ごしてみてください」と、日常に寄り添った回答を伝えた。

「JPXマネ部!ラボ」で大切にしていることは、すべての世代に対して正しい金融知識をわかりやすく届け、誰もが金融リテラシーの向上を目指しやすい環境を整えること。今回の講義からも、その思いが伝わったのではないだろうか。

学生に限らず社会人に向けても、日本証券業協会と連携して講師の相互派遣をスタートするなど、企業が従業員向けに行う金融教育研修に対応しやすい体制を整えている。社会人向けのオンラインセミナーでは、iDeCoやNISAについての解説なども行っており、気になったタイミングで知識を取り入れてもらえる工夫も心がけている。

株式市場を提供するだけではなく、お金や投資に関する情報を発信し、正しい知識を届けていくことも東京証券取引所の大切な仕事。さまざまなセミナーや研修が、お金の使い方、投資の考え方を振り返るきっかけになることだろう。

(有竹亮介/verb)

イベント動画:「株ってなあに?」

7月27日に行われた「STOCKPOINT for MUFG」イベント開会式の動画はこちらからご覧ください。上記の町田さんの講義や三菱UFJ銀行による授業も視聴可能です。