フィンテックのサービスにより、お金まわりが便利になるケースは増えている。だが、それだけでなく、フィンテックによって子どもへの教育や、親子のコミュニケーションにメリットをもたらすサービスも登場している。

その1つが「シャトルペイ」だ。子ども向けプリペイドカードを発行し、親から子に渡す。さらに親と子それぞれのアプリを用意し、そのアプリでお小遣い管理をして、親子で良いお金の習慣を身につけていくという。

どんなサービスで、これがどのように教育や親子のコミュニケーションへとつながるのか。サービスを開発したシャトル 代表取締役の見原思郎氏に取材した。

子どもの日々の買い物履歴を、アプリを通して見守れる

シャトルペイのサービスは、大きく2つのプロダクトから成る。1つはプリペイドカードで、子どもが普段の買い物に使うことを想定したもの。お店でもネットでも使える。

そして、もう1つのプロダクトが専用アプリだ。親と子それぞれにアプリが用意されており、親用アプリでは、子どもがプリペイドカードでどんな買い物をしているのか、買い物履歴を見ることができる。

「親用アプリでは、お買い物履歴をリアルタイムに通知。日々の買い物の様子を知るのに加えて、突然の高額出費などがあれば、トラブルの早期発見にもなります。また、毎月カテゴリ別のレポートも確認でき、お子さんのお金の使い方の変化や、どんなことに興味・関心があるかも分かります」

一方、子ども用アプリでは、自動のお小遣い帳という形で、子どもが細かくプリペイドカードの支出状況を振り返れる。「日々の支出を見ながら、お子さんがお金の良い習慣をつけられれば」と見原氏。加えて、貯金の目標を設定する機能も今後実装される予定だ。

「ただし、親御さんがお子さんのお金の使い方に干渉しすぎないことも重要です。このアプリはお子さんの自立を生むのが目的であり、監視が目的ではありません。お子さんの行動がある程度見えるからこそ親御さんの干渉が減り、お子さんも自尊心や肯定感を育みます。それが大切な部分だからこそ、アプリにもその考えを反映した工夫を施しています」

工夫の具体例として、親と子それぞれのアプリで買い物履歴を見られるものの、親用アプリで把握できるのは買い物の大まかな“カテゴリ”まで。どこで買ったかといった詳細な情報は子ども用アプリでしか分からないという。

このほか、シャトルペイの重要な機能として、アプリからプリペイドカードへの送金が手数料なしでできる。定期的に子どもにお小遣いを送るのはもちろん、急きょ子どもにお金を渡す必要がある場合、たとえば仕事が遅くなるので夕飯は買って食べてほしいといったケースでも、簡単に送金できる。

2022年7月にサービスの正式提供を開始しており、5カ月間は無料で利用可能。それ以降は月480円の利用料がかかるビジネスモデルとなっている。

なぜこのサービスが親子のコミュニケーションを後押しするのか


このシャトルペイについて、見原氏は「4つの代表的な親の悩み・要望」に届くものだと考えている。

1つ目は、子どもの安全や日々の様子を知りたいという親の思いだ。細かく監視したいわけではないが、最低限の様子を知れば安心できる。そのとき、シャトルペイが手助けになる。

「リアルタイムの買い物履歴を見て、塾の前にお子さんが食事をしているとか、スマホゲームにどのくらい課金しているかなどが分かりますし、高い食事代が発生していれば誰かに奢らされていないかといった気づきにもつながります」

2つ目は、子どもの興味を知りたいという思いだ。成長して徐々に子どもとの会話が減る中で、たとえば買い物履歴の内容や先述した貯金の目標設定から、いまの子どもの興味を知ることができる。

そしてこれが、冒頭で述べた親子コミュニケーションのきっかけになると見原氏は言う。

「たとえばサッカーに夢中で、筋トレ用の器具を買おうと貯金していると分かれば、お子さんがどれだけサッカーに真剣に取り組んでいるか理解できますし、親御さんが『半分出してあげるよ』と後押しすることもできます。コミュニケーションとともに、お子さんの好きなことややりたいことの支援にもつながるのではないでしょうか」

さらに3つ目は、将来お金で困らないようになってほしいという親の気持ちだ。そこで若いうちからお小遣い帳によって良い習慣を身につける。しかも自動なので継続しやすい。

最後の4つ目が、親子間での現金の受け渡しが不便という悩み。これを、先述したようにキャッシュレスの送金機能によってカバーする。

なお、シャトルペイのような親子向け金融アプリは、海外において続々と先行事例が出ている。有名なところではイギリスのgoHenry(2015年〜)や、アメリカのGreenLight (2017年〜)など。つまり、世界的なトレンドだといえる。

そういった流れの中で、シャトルペイは日本での普及を目指す。とともに、今後は事業の拡大も視野に入れるという。

「たとえば現在のサービスを起点に、子どもがアプリを通じて投資を行うなど投資領域への拡大、さらには大学生などの親離れするタイミングで、なおかつ親の仕送りも必要な時期の子に対するクレジットカードの発行、さらには銀行口座の提供なども検討していけたらと思います 。さまざまなハードルはありますが、事業を展開させていければいいですね」

シャトルペイのコンセプトは「家族をチームに」だという。親子がチームのように、お金の使い方をほどよく共有することで、良い習慣を身につけ、自立を促していく。フィンテックが子どもの教育や親子のコミュニケーションにつながる事例といえる。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2022年10月現在の情報です