本記事は、フランクリン・テンプルトン・インベストメント・インスティテュート「Global Investment Outlook(2022年9月)」の翻訳版を抜粋・再構成したものです。

資本市場を支える環境

来年表面化してくる様々な出来事の結果の多くは、世界経済の見通しの変更によって左右されることになるでしょう。

パンデミックによる供給の混乱から世界中の紛争に至るまで様々な要因により、製品市場および労働市場における多くの財やサービスの製造、流通、分配に影響を与えました。経済活動の再開や、かつてない規模の財政・金融刺激策に支えられた経済活動の活性化に加えて、需要を下回る供給が物価上昇や賃金インフレを引き起こし、世界のほとんどの主要国や多くの中小国で積極的な金融引き締めが必要とされました。このことは、資本市場を支える環境に、5つの重要な変化をもたらしました。

1. 大半の国債市場におけるイールドカーブのフラット化もしくは逆イールド化
2. 米ドル高
3. 大半の資産クラスにおけるボラティリティの上昇
4. 流動性の低下や金利上昇など、中央銀行の金融市場に対する支援策の縮小
5. コモディティ価格の高騰

ここでは、こうした足元の環境が収益性、リスクプレミアム、バリュエーションに与える影響など、主要資産クラスの将来のパフォーマンスの可能性に対してどのような意味を持つのか、さらに詳しく見ていきます。

逆イールドは景気後退の予兆か?

逆イールドは、現在ほとんどの先進国と新興国で進められている金融引き締め政策の結果です。

中央銀行が短期金利を引き上げると、将来の成長率とインフレ率の低下見通しから短期金利が長期金利を上回り、イールドカーブが右肩下がり、すなわち逆イールド化する傾向があります。足元の異常に高いインフレ率から予想される金融引き締め期間を考慮すると、イールドカーブは今後12ヵ月のほとんどの期間で、フラット化もしくは逆イールド化したまま推移するリスクがあります。

逆イールドは、資産リターンやポートフォリオのパフォーマンスに深刻な影響を与える可能性があります。債券投資家の多くは、価格感応度の低い債券の利回りが、より高リスクの債券の利回りを上回った場合、保有している債券のデュレーションの短期化に走ります。

これは特に国債で顕著に見られ、デュレーションの短いハイイールド債や変動利付債の投資機会をもたらします。同時に、イールドカーブにおける長期の利回りも、短期ほど急速ではないものの上昇しているため、長期デュレーションの米国債や投資適格社債に投資することで、債券ポートフォリオのクオリティが高まり、キャピタルゲインを獲得する機会が生まれると考えています。

株式投資家にとって、逆イールドは通常、景気循環株やバリュー株に比べて、利益が安定した優良グロース株への選好を高めることにつながります。この背景にはいくつかの理由があります。

第1に、相対的にみて、健全な将来見通しを持つ企業(例えば、グロース株や生活必需品セクターなど)は、景気サイクルが短い景気循環株に比べて、将来利益の現在価値の改善の恩恵を受けます。第2に、逆イールドは通常、景気の減速あるいは後退の前兆となり、利益の不確実性あるいは減少を示唆します。そのため、投資家は不況期に強いビジネスモデルを持つ銘柄に注目する傾向があります。

しかし、このような市場コンセンサスがある一方で、事業固有の状況によっては、依然として魅力的なバリュー型セクターもあります。例えば、金融セクターは、2007〜2008年の世界金融危機以前に比べて資本が大幅に増強されているにもかかわらず、その評価には景気後退に対する懸念が織り込まれています。

米ドル高はグローバル投資の機会か?

米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めによる短期金利上昇の結果、米ドルは他のほとんどの先進国通貨と新興国通貨に対して上昇しています。また、地政学的な不確定要素、原油価格の高騰、中国およびその他の新興国における経済活動の低迷といった要因も米ドル高を支えています。

米ドル高が資産リターンに及ぼす主な影響は3つあります。第1に、米国からの輸入に依存する国では、米ドル高を受けて、インフレ圧力抑制のため利上げを余儀なくされる傾向があります。インフレ圧力は、特に新興国において顕著となります。その結果、金利上昇と自国通貨安が相まって、現地通貨建ての新興国債券の足かせとなっています。

第2に、米ドル高は、米国では輸入価格を下げるためインフレ率が低下し、その結果、生産の減少により米国の経済活動を弱める傾向があります。これは、逆イールドを促進することになります。

第3に、米ドル高は資本の大きい多国籍企業の収益を再分配する効果があります。海外から多くの収益を獲得している米国企業は、米ドルで換算した場合、収益が目減りすることになります。一方、欧州、日本、新興国の多国籍企業は、米ドル建ての利益を安くなった自国通貨に換算することで利益を上積みしています。

このことは今後、どのような意味を持つのでしょうか。債券の観点からは、特に金利サイクルが米国より先行している国々では、新興国ソブリン債のバリュエーションの魅力度が先進国市場を上回る水準に達する可能性があります。

株式については、米国外のバリュエーションの魅力度が相対的に増す可能性があります。米国企業の業績期待が依然として高水準にあることと相まって、ウクライナ紛争を中心とする問題が既に織り込まれている欧州などの地域で、投資妙味が増す可能性があります。

ボラティリティの上昇は、熟練した投資家にとって絶好の機会となるか?

当然のことながら、中央銀行が積極的に引き締めを行うと、あらゆる資産クラスで価格のボラティリティが上昇する傾向があります。この流れは既に進行中で、今後も続くものと思われます。

債券市場においては、インフレ鎮静化に躍起になる中央銀行は、もはや今後の政策の方向性について自信を持って投資家を導くことが不可能となり、ボラティリティが急騰しています。「フォワード・ガイダンス」に代わって「データに依存」せざるを得なくなり、足元のインフレをけん引する需要と供給のファンダメンタルズとの連動性が不透明なため、どの中央銀行も3カ月、6カ月、12カ月後の金利の行方について自信を持って伝えることができなくなっています。この結果、短期金利と債券利回りは、中央銀行が「ゼロ」金利を目標としていた時代よりも大きく変動しやすくなっています。

さらに、債券投資家は、「量的緩和」から「量的引き締め」への移行、すなわち中央銀行の資産買い入れ政策の縮小と反転によって、より困難な状況に置かれる可能性があります。政府債務と民間債務が大幅に増加する中で、債券の買い手としての中央銀行を失うことは、債券市場のボラティリティを引き続き上昇させると思われます。

金融引き締め策により、景気リスクや業績リスクが高まります。パウエルFRB議長は、多少の「痛み」はやむを得ないと述べました。業績見通しの不透明感が強まれば、株価のボラティリティが高まることになります。

最後に、積極的に引き締めを行うFRBやイングランド銀行などに対して、引き締めが緩やかな欧州中央銀行(ECB)、あるいは全く引き締めを行わない日本銀行など、中央銀行間で金融政策が大きく異なる結果、各国の国内利回り間の金利裁定が働き、為替レートが大きく変動しやすくなります。今年の米ドル高は、金融政策の乖離によって為替レートの変動が大きくなる典型的な例と言えます。

このようなボラティリティは本質的に、より特異な投資機会を生み出し、アクティブ・マネージャーはアルファを生み出しやすくなります。あらゆるセクター、資産クラス、地域について言及しているように思われるかもしれませんが、根本的なメッセージとして、足元の状況は、超過リターンの獲得において、アクティブな資産配分と思慮深い投資選択のスキルがより発揮される環境を創り出していると言えます。

「グローバル投資環境見通し:不確実な時代における積極的な投資機会の選択」レポート全文はこちらからご覧ください。

(提供元:フランクリン・テンプルトン・ジャパン)

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