はじめに

昨年11月から12月にアラブ首長国連邦で開催されたCOP28のニュースに関心を持たれた方も多いのではないでしょうか。会期を延長するほど議論が白熱した結果、「2030年ごろまでのおよそ10年で化石燃料(石炭や石油、天然ガスなど)から脱却を加速する」との表現で合意されました。

地球温暖化への対応は世界的に取り組むべき重要な課題のひとつであることは言うまでもありません。日々の生活で省エネを心がけることはもちろん大切ですが、継続する気温上昇に歯止めをかけるためには新たな環境技術を広く普及させることが必要です。

三井住友トラスト・アセットマネジメントでは、カーボンニュートラルに貢献する注目分野について日本総合研究所と協働調査を実施しました。そのなかで、政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」における14の重要分野を前提に、解決すべき課題こそ多いものの、脱炭素への社会的インパクトが相対的に大きく、日本企業が技術優位性を発揮しやすい分野として、(1)水素、(2)蓄電池、(3)カーボンリサイクルを取り上げています(注)。本稿では、協働調査の成果を踏まえつつ、気候変動問題で注目される3つの分野について基本的な情報をご紹介しましょう。

(注)日本総合研究所との協働調査に関する詳細は三井住友トラスト・アセットマネジメント「STEWARDSHIP REPORT 2022/2023」(p.11-16)をご参照ください。

水素:環境関連の最重要分野、日本企業の活躍余地も大きい

化石燃料からの脱却を実現するうえで、水素は貢献度の最も大きい代替エネルギーと考えられます。地球上にある様々な資源から製造することができ、燃料電池や発電など様々な用途で利用することができます。しかも、水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しません。気候変動対策の切り札であると同時に、どの国でも再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電など)と水さえあればつくれるので、エネルギー安全保障の観点からも水素に対する注目度が高まっています。

一方で、水素の最大の課題はコストにあります。資源エネルギー庁によると、水素の発電価格はLNG火力発電に比べて約7倍も高い。しかし、水素を「つくる」、「はこぶ」、「つかう」のそれぞれのサプライチェーンで大型化や効率化のための技術が開発されており、大量生産と需要創出の好循環によって将来的には大幅なコスト低減が期待されています。

(出所)資源エネルギー庁ホームページ「原発のコストを考える」、「アンモニアが“燃料”になる?!(前編)〜身近だけど実は知らないアンモニアの利用先」より三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

2023年6月に政府が改訂した「水素基本戦略」では、水素のサプライチェーンに対して今後15年間で官民合計15兆円超の投資が計画されました。2050年における水素の発電コストはLNG火力発電を下回る水準が目標とされていますが、政策的な後押しによって技術開発が順調に進捗すれば時期を前倒しで達成できる可能性もあるでしょう。

出所:経済産業省「水素を取り巻く国内外情勢と水素政策の現状について」、「水素基本戦略」、「水素基本戦略の概要」より三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

水素の関連する主な企業として、「つくる」ところでは旭化成、「はこぶ」ところでは川崎重工業、「つかう」ところでは燃料電池自動車を手がけるトヨタ自動車などが挙げられます。このうち、旭化成は水を電気分解することで水素をつくり出す装置の主要プレーヤーになります。また、川崎重工業は水素を液化して海外から運搬するための船をつくっています。トヨタ自動車については補足する必要がないかもしれませんが、量産車として世界初の高級セダン型燃料電池車「MIRAI」を2014年から販売しています。

海外にも有力な企業が見られますが、そもそも日本は水素の技術を世界に先駆けて開発してきたことから、政策的な後押しもあって長期的な観点で収益機会が期待できるでしょう。

蓄電池:EV用途の二次利用にポテンシャル、異業種連携の好事例も

電気自動車(EV)の市場成長が「蓄電池」の需要拡大につながることはご存知でしょう。経済産業省の資料によると、EV用蓄電池の市場は2035年に現在の約14倍に膨らむとの予測もあります。しかし、EV用途のポテンシャルはそれだけではありません。二次利用の可能性も注目されます。

(出所)経済産業省「蓄電池産業の現状と課題について」より三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

たとえば、EV用途としては役目を終えた蓄電池を再エネの調整電源に転用する可能性が想定されます。天候頼みの太陽光発電や風力発電は電力供給を不安定にするリスクがあります。それを安定化させるには蓄電池を活用することがひとつの解になります。でもコストが高い。それならばリユース・リサイクルを活用すれば良いということになります。

日本総合研究所との協働調査によると、新車EVの蓄電池が10年後に中古市場に流通すれば、その市場規模は原発6基分(600万kW)にも膨らむとの試算もあります。循環型経済(サーキュラーエコノミー)の観点からも注目できる動きといえるでしょう。

蓄電池のリユースに関連する主な企業として、日産自動車と住友商事が挙げられます。両社は2010年に合弁会社フォーアールエナジーを設立しました。同社はセブンイレブンの店舗運営用電力やJR東日本の踏切バックアップ電源などにEVの使用済み蓄電池を提供した実績を有しています。本件に見られるのは自動車メーカーの技術力と総合商社の販売力のシナジー効果であり、まさに異業種連携の好事例と考えられます。

カーボンリサイクル:CO2を資源化する技術、関連企業にとっては長期的に収益獲得の好機

カーボンリサイクルはCO2を「へらす」ための有望な技術と位置づけられます。主なフローとしては、工場や発電所から排出されたCO2や大気中のCO2の回収から始まります。回収したCO2を地中深くに埋めてしまえば「CCS」(Carbon dioxide Capture and Storage)、CO2を資源として利用すれば「CCU」(Carbon dioxide Capture and Utilization)。カーボン「リサイクル」ですから、注目すべきは後者のCCUということになります。

カーボンリサイクルの主な用途は化学品や燃料、建築資材(コンクリートやセメントなど)です。燃料の例として、「SAF」(Sustainable Aviation Fuel)という言葉を目にしたことはないでしょうか。持続可能な航空燃料を意味するSAFは、CO2を吸収したバイオマスや廃油などからつくる環境に優しいバイオ燃料で、EV化が困難な航空機のカーボンニュートラルに貢献する燃料として期待されています。

経済産業省によれば、カーボンリサイクル製品を国内で製造するときに使われるCO2の量は2050年で1億トンから2億トンと試算されます。日本の年間のCO2排出量は約10億トンなので、1〜2割に相当する規模を「へらす」ことができる計算になります。コストの問題で本格的な普及には時間を要する見通しですが、CO2の排出自体を削減するだけでなく、すでに排出されてしまったCO2を回収して再利用する技術は温暖化対策に欠かせません。

(出所)経済産業省「カーボンリサイクルロードマップ」より三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

カーボンリサイクルの関連企業は多岐にわたりますが、CO2を回収するところでは三菱重工業や千代田化工建設、日揮ホールディングスなどが挙げられます。また、CO2を再利用するところではユーグレナがSAFのメーカーとしてよく聞かれるでしょう。2022年6月にユーグレナのSAFを用いてへリコプター飛行が成功したほか、10月には国際線のフライトも実施されました。政府がカーボンリサイクルを産業競争力強化の重要な柱のひとつに位置づけていることもあり、関連する企業にとっては長期的な観点で収益獲得の好機となるでしょう。

ご留意事項
・当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
・ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
・投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益は全て投資者の皆様に帰属します。
・投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではありません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。
・当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また、今後予告なく変更される場合があります。
・当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を示唆あるいは保証するものではありません。
・当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開発元もしくは公表元に帰属します。

(提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント)