長い年月をかけて進められてきた年金受給者への課税強化。そしてこれからも、国民が知らぬ間に負担増を強いる国家の謀略は続く。すでに“スケジュール”は組まれているのだ。

 2018年税制改正で狙われたのは会社員だった。給与所得控除額の上限が引き下げられ、2020年1月から年収850万円超の会社員は一律増税となった。増税といっても、源泉徴収票から引かれる額がいつの間にか増えるだけ―負担増に気付きにくい会社員は、いつの時代も狙われてきた。

 また、納税者の“工夫”の余地も、今年からひとつ潰される。取引価格と比べ、相続税の評価額が低かったタワーマンションの高層階を購入し、子供に相続させる「タワマン節税」は今年から“規制対象”になる。

「2018年以降に引き渡しとなる新築物件を対象に、同じ棟でも階層が1階上がるごとに固定資産税率が約0.26%ずつ増税となりました」(税理士法人チェスター代表の福留正明氏)

 それだけ“節税効果”は薄れるということだ。

 社会保障も“給付減・負担増”が相次ぐ。介護保険では、8月から現役世代並みの所得がある人(単身世帯なら年収340万円以上)の自己負担は現行の2割から3割に引き上げられる。

 医療も所得区分に応じて、70歳以上の外来費の自己負担額の上限が引き上げられる。今年8月からは一般所得者(年収156万〜370万円)の場合は現行の月額1万4000円から4000円引き上げられる。

「一方、昨年から新たに医療費自己負担の年間上限が設けられた(年14万4000円)。一見利用者を守るような改定と併せて行なっていますが、実際は負担増のほうが大きい改定です。少しずつ外堀を埋め、いずれそれでも財源が足りないから増税する、という環境を整えていくのでしょう」(社会保険労務士の蒲島竜也氏)

 そして来年10月には消費税が10%に引き上げられる。大和総研が昨年10月に行なった試算によると、年収500万円の会社員と専業主婦、子2人の世帯では、可処分所得は年4万6600円も減るという。2020年1月には、公的年金等控除の引き下げも控えている。前稿で見たように、年金振込通知書上の天引額が、少しずつ増えていく。

国は守ってくれない

 ファイナンシャル・プランナーの森田悦子氏はいう。

「少子高齢化が進むなかで、国の“老後のお金は自分で準備しろ”という姿勢は鮮明です。生活防衛のためには国が新たに認めた税制上の優遇策は最大限活用したほうがよいと考えます」

 今年1月から始まった「つみたてNISA」はそのひとつ。運用益への課税はゼロで、年40万円を上限に最長20年積み立て可能だ。森田氏によると、対象の投資信託に毎月3万円を積み立て、年2%の運用ができた場合、20年の運用益は164万円になる。約20%の所得税・住民税約33万円が課されるところ、制度を利用すればゼロで済む。

 今年から「配偶者控除」も変わった。従来は妻の年収が「103万円まで」ならば夫の所得から38万円が控除される仕組みだったところ、それが「150万円まで」に拡大。この制度改正を活用する“賢い働き方”が必要になる。

「配偶者控除が拡大されたからといって、妻が103万円を超える働き方をしても、かえって手取りが減ることがあります。会社の規模によって変わりますが、たとえば妻の勤務先が従業員数501人以上の会社の場合、年収106万円を超えると社会保険料負担が発生する。妻がこの『106万円の壁』を超えて働くなら、少なくとも年収125万円以上にしないと手取りが減ってしまうのです」(税理士の落合孝裕氏)

 巧妙に負担が増やされていく以上、制度を熟知した生活防衛が必要となるだろう。

※週刊ポスト2018年3月9日号