公的医療保険制度の充実した日本は、世界でも国民の医療費負担が少ない国のひとつと言われてきた。確かに戦前生まれの“焼け跡世代”はその恩恵を享受して、少ない自己負担で高度な医療を受けてきた。その一方、続く人口のボリュームゾーンである団塊世代の医療費負担は増え続けている。

 国による団塊世代の医療費狙い撃ちの始まりは2008年に導入された「後期高齢者医療制度」だ。70歳から74歳の被保険者のうち、現役並み所得のある人以外の負担金は2割負担であったが、軽減措置により1割負担になっていた。しかしこの措置が2014年から変更された。

〈2014年4月1日以降に70歳になる人は70歳になる月の翌月以降の診療分から2割負担になる〉。その一方で、〈2014年3月31日以前に70歳に達した人は従来通り1割負担のままである〉。

 同じ70歳にもかかわらず、1日生まれた日が違うだけでその負担は倍違うという制度変更が行なわれたのだ。

「国が団塊世代の医療費の自己負担を増やすため、周到に準備をしたと見て間違いない。団塊世代が70歳に到達することを見越しての“作戦”だったと考えられます」(経済ジャーナリストの荻原博子氏)

 導入時は、「高齢者を前期、後期に分けるのか」とネーミングばかり話題になったが、裏には団塊世代から医療費を毟り取ろうという国の深謀遠慮があったわけだ。

 厚生労働省の「医療保険に関する基礎資料」によると70〜74歳の2割負担の患者の医療費の推計は7万4313円である。1割負担の人と年間3万7156円の差が出ることになる。これが5年間続けば18万2680円も損する人が出ることになるのだ。

※週刊ポスト2018年5月25日号