日本市場では先週、コマツ(6301)、日立建機(6305)といった中国関連の代表銘柄が買われた。これら中国関連銘柄は5月下旬以降、米中貿易摩擦の激化や、足元の中国経済への減速懸念から、下落基調が続いていた。そうした中での反発、切り返しとなった。

 株価上昇要因として注目すべきは中国の政策変更である。李克強首相は7月23日、国務院常務会議を召集、財政金融政策の作用を更にしっかりと発揮するように、内需構造の調整を拡大し実態経済の発展を促すこと、弱点部分の補強を巡り、後方からの支えを増強し、民生に恵みをもたらすよう有効な投資措置を推し進めることなどを指示した。

 日本の多くのマスコミは、中国が内需拡大策を発動したと報道している。確かに、中国経済にはプラスに働く政策で、日本株中国関連の建機セクターには好材料ではあるが、全面的な景気刺激策とはなっていない。

 農業生産でよく行われる大量の水を流す灌漑方式のような強烈な刺激策は決して行わない。経済情勢の変化に基づき、機敏に先を予測して微調整を行う。ピンポイントで調整コントロールを行う。外部環境の不確実性にうまく対応し、経済成長速度が合理的な範囲に留まるようにする。財政、金融政策をうまくかみ合わせ、効果的に経済全体に力を発揮させるとしている。

 あくまで、生産過剰産業への投資資金の流入や、不動産バブルの拡大につながるような資金流入が起こらないように、慎重に、注意深く、本当に必要な投資にだけ資金が流れ、投資が実行されるようにするとしている。

 重要なポイントを列挙すると以下の通り。

・現在行っている減税政策などの積極財政政策を更に積極的に行う。
・穏健な金融政策は緩和、引き締めを適度に行う。
・国家融資担保基金が資金拠出を加速することで、毎年新たに15万件の零細企業に1400億元の貸出を行うといった目標を実現できるよう努力する。
・ゾンビ企業の清算を断固として行い、無駄な資金が使われないようにする。
・投資領域の規制緩和を深め、民間投資の積極性を引き出す。
・建設中のプロジェクトに関する資金需要をしっかりと保障する。
・発展と民生に必要な需要にしっかりと対応し、重大プロジェクトの建設や準備を推し進める。

 こうして中身を細かく見ると、目新しいことはない。「今行われている政策、改革を加速します」といった内容である。

 とはいえ、国務院は景気に配慮しているということが確認できた点は好材料である。景気は崩れ出すと、雪崩を起こすように一気に悪くなることがある。その場合、零細企業の破綻の急増、債券のデフォルトなどがきっかけとなることが多いが、そういうことが起きないように国務院は慎重に対応しようとしている。

 また、ピンポイントで投資を絞り、そこに資金が流れるようにする方針であるが、それは社会的に不足している部分の多いインフラ投資が一つの柱となっている。

 今後、景気が悪化する兆候が見えたり、中国本土株が下落したりする局面があるかもしれないが、その場合、国務院が何らかの対策を打ち出すはずだ。そうした安心感が強まったという点で、大きく下げている日本の中国関連株に対しても好材料である。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。