1つのビルですべてが揃うショッピングモールや商業ビルがある街は大変人気だが、八百屋、魚や、クリーニング屋、米屋、豆腐屋など、生活に密着した品を揃えた店が揃った商店街がある街は、一度住むと離れがたいもの。東京江東区にある「砂町銀座商店街」は、都内でもとりわけ活気があり、テレビで取り上げられることも多い商店街だが、いったい何がスゴいのか? ライターの金子則男氏が解説する。

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 都内には、テレビの商店街特集で必ず取り上げられる有名商店街がいくつかあります。生活に密着した商店街なら、品川区の戸越銀座や武蔵小山、板橋区の大山や北区の十条。観光地化した商店街なら台東区の浅草、上野(アメ横)、日暮里(谷中)、豊島区の巣鴨。中野区の中野や武蔵野市の吉祥寺も、他の街から人を呼び込める商店街です。

 砂町銀座商店街は、典型的な“生活密着系”の商店街ですが、他の商店街とはひとつ大きく異なる点があります。上であげた商店街はすべて駅前を起点として広がっていますが、砂町銀座には最寄り駅らしいものがありません。

 強いて言えば、東京メトロ・東西線の南砂町か、都営地下鉄・都営新宿線の大島が最寄り駅になりますが、どちらの駅からも徒歩で10分前後はかかる場所にあり、散歩特集の雑誌などでは、錦糸町か東陽町からバスを使うよう記されています。

 商店街の全長はおよそ700m。上述の商店街と比べても圧倒的に狭い道の両側に、八百屋、魚屋、パン屋、お茶屋、美容院、床屋、靴屋、タバコ屋、酒屋、豆腐屋、薬局、洋品店、時計店、果物屋、歯医者、整骨院……など、とにかくあらゆる店が軒を連ねています。

 惣菜店の充実度は素晴らしく、やきとり、もつ煮込み、揚げ物、かまぼこ、おでん、つけもの、寿司、和菓子、洋菓子、中華系、韓国系、エスニックなど、文字通りのよりどりみどり。今では見かけることも減った傘屋、質屋、金物屋があるのは、生活に密着した商店街ならではです。

 巨大な駐車場を備えた大型商業施設が幅を利かせるなか、このような商店街が生き延び、多くの人を集めていることは注目に値します。砂町銀座商店街の周辺を見ても、2008年には南砂町駅前に大型商業施設「SUNAMO」が、2010年には商店街から歩いてすぐの場所に大型商業施設「アリオ北砂」がオープン。しかし砂町銀座商店街がシャッター商店街になる雰囲気は微塵もありません。

 こういった奇跡のような商店街がいまだに生き延び、ぶらぶら歩きを楽しみたい商店街として、他の街からも人を呼び込んでいることは、示唆に富んでいます。恐らくこれは、砂町銀座商店街には誰もが漠然と頭に思い浮かべる“商店街の原風景”が広がっているからではないでしょうか。人は本質的にノスタルジーには弱いもの。金太郎飴のように、どこを切っても同じような光景が広がる駅前の光景に違和感を覚えている人も少なからずいるのでしょう。

 ちなみに南砂町駅の家賃相場は、ワンルーム・1K・1DKで7.55万円(ライフルホームズ調べ、9月11日時点)、大島駅は7.82万円(同)ですが、商店街まではそこからだいぶ歩くので、商店街付近なら家賃は軽く1万円は下がります。商店街には飲食店も多数あり、店で食べて良し、惣菜を買って家に帰るも良しの二刀流。この奇跡のような商店街がこの先も繁栄し続けることを願って止みません。