近年、飲食店を悩ませ続けている「無断キャンセル」問題。予約を入れたものの、行けなくなってしまった然るべき理由があって、事前にそれを伝えていれば、店側もそれなりの対応ができる。が、近年急増しているのは、悪質な「ドタキャン」「バックレ」だ。

 飲食店員が客のいないところで交わす「No show(ノーショー)」という言葉は、「姿を現さない」という意味で「キャンセル客」を指す。経済産業省の『No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート』によると、当日の無断キャンセルが飲食業界全体に与えている損害額は、年間で約2000億円。さらに、通常の予約のうち、1日前、2日前に生じるキャンセルも加えると、その発生率は6%強に達し、被害額は約1.6兆円に及ぶ、と推計されている。

 こうした無断キャンセルの軽減に一役買い、飲食業界で話題になっているのが、レストランの予約・顧客管理システムを飲食店に提供している『テーブルチェック』社が開発・提供するネット予約・顧客管理のための台帳システムだ。

 写真が実際の台帳画面だ。台帳には、客の好きな食材、苦手な食材、アレルギー、誕生日や記念日、来店回数等々の詳細な情報が記載されている。予約時や会計時に得た情報を基にデータは随時蓄積され、より適切なサービスの提供に役立てられている。

 このシステムが無断キャンセルの軽減に有効性を発揮する要因は3点ある。1点目は、予約内容によってはクレジットカード情報の入力が必要になることだ。それによって導入店では「ノーショーがほぼゼロになった」というケースもある。

 2点目が、ショートメッセージやメールによる予約リマインド機能だ。予約の前日にショートメッセージや確認メールが自動送信されるため、客は「うっかり忘れ」を防ぐことができる。

 3点目は、このシステムが主要なグルメサイトとつながっている点だ。システムは、『食べログ』『ぐるなび』『ホットペッパーグルメ』など22のサイトと連携している。つまり、この台帳システムを介して予約をした客の情報だけでなく、グルメサイトでネット予約した客の情報ももれなく管理できるのだ。

 台帳システムには、一般的な顧客情報のほか、キャンセル履歴も残されるようになっている。しゃぶしゃぶやすき焼きをメインに供する『銀座 瀬里奈』支配人の田坂信介さんが言う。

「無断キャンセルをした人のデータを集められるようになってから、予約時点で、過去の履歴をチェックして対応できるようになりました。ノーショー履歴が2回以上ついているかたには、予約を受けたとしても人気のない席を用意したり、来店時間を調整させていただいたりします。

 ノートで管理していた時は見過ごしもありましたが、今は漏れなくキャンセル履歴が把握できるので、お客様によっては、席が空いていてもきっぱりお断りすることもあります。当店を気に入ってご来店いただくお客様に、より心地よく過ごしていただきたいからです。そう考えると、このシステムは、“顧客管理という名のブラックリスト”といえるかもしれません」

 現在、同システムは世界19か国に導入され、約4000店舗が加入している。日本でも、グローバルホテルチェーンや有名レストラングループが導入している。前出『瀬里奈』であればグループ5店舗で情報共有できる。グループ店舗ですべての予約実績を横断的に見ることができる。

 本来は「適切なサービス提供」を目指して導入されたシステムながら、多岐にわたる顧客情報が過去の“悪い履歴”をも蓄積し、心ない客に対しては店側がそれを有効利用できるようになったのだ。テーブルチェック社の仁木有花さんが語る。

「これまでは『お客様は神様です』というような風潮もあり、強い姿勢での対応が難しかったと思います。しかし、マナーのよいかたが適切にレストラン、飲食店を利用できるように、お店とお客様が対等な立場になっていくのが望ましいと思っています。

 今後は、個人情報の扱いに慎重を期しながら、無断キャンセルなどの履歴を含む顧客データを活用し、店側にも客側にも双方にメリットを享受できる仕組みを開発していきます」

 気まぐれで無責任なキャンセルがなくなるのを祈りたい。

※女性セブン2019年7月25日号