政府は医療費を抑えるための制度改革を次々と打ち出そうとしている。その第一弾として、政府は2020年6月に自営業者や退職後の元サラリーマン(75歳未満)が加入する国民健康保険の保険料を値上げする方針だ。そして、第二弾として準備しているのが、75歳以上の窓口負担を現行の1割から2割に引き上げる案だ。

 この保険料値上げ、窓口負担増に続く医療費改革が「薬代」の大幅アップだ。これはすべての世代に影響が及ぶ。

 現行制度では、風邪を引いて病院にかかり、処方箋を書いてもらえば薬代にも保険が適用され、69歳以下は原則として薬価の3割、75歳以上は1割の負担となり、市販薬よりはるかに安く入手できる。どうしても薬の使用量が多くなる高齢者の強い味方だった。

 しかし、「全世代型社会保障検討会議」では、ドラッグストアなどで購入できる市販薬と同じような効果の「市販品類似薬」を医療保険の対象から外し、全額自己負担で買わせることを検討している。

 保険対象外となる薬の候補は、風邪薬(漢方の感冒薬)や花粉症治療薬、湿布薬、ビタミン剤、皮膚炎や乾燥肌などの痒みを取る皮膚保湿剤などが挙げられている。

 この改革による薬代の負担増は想像以上に大きい。財務省は財政制度等審議会に提出した資料で医療用医薬品(保険薬)と同じ成分・分量の市販薬(OTC医薬品)の価格を比較している。

 その資料をもとに作成した図を見ると、「全額自己負担」が現実のものとなった際に、どれだけ出費が増えるかに驚かされる。

 湿布1袋の医療保険の薬価は320円で、窓口負担1割となる75歳以上の人は「32円」で購入できる。それに対して同成分の市販薬のメーカー希望小売価格は2551円なのだ。

 腰痛や関節炎でつらい思いをして病院で医療用(保険薬)の「湿布」の処方を受けていた75歳以上の人が、湿布が保険の適用除外になって、ドラッグストアで買わなければいけなくなると、支払う薬代は一気に約80倍にハネ上がる計算である。

 同様に計算していくと「ビタミン剤」の薬代は約76倍、「漢方薬(感冒薬)」は約46倍、「皮膚保湿剤」は約22倍に負担が膨れあがることがわかる。

 年金生活の高齢者にとって風邪を引いても高くて薬が買えないという状況に直面しかねない。医師の間にも、「市販品類似薬」の保険適用を除外すれば、高齢者の薬の買い控えが起き、病状を悪化させてかえって医療費の増加を招くと懸念する声が上がっている。

 医療改革は保険料、窓口負担、薬代アップという家計へのトリプルダメージになる。

※週刊ポスト2020年1月3・10日号