AI(人工知能)技術の進化に伴い、私たちの未来はより便利なものになると予想されている。その一方で、従来の仕事の中にはAIに取って代わられて“なくなる仕事も多い”とまことしやかに言われているが、現在、働いている人は、どう思っているのだろうか。自分の仕事が10年後にAIに奪われる可能性があると思うか、様々な職業の人たちに話を聞いた。

「陳情への対応は人間じゃないとできない」

 ベテラン総務スタッフである40代の女性・Aさんは、会社の労務や経費精算のほか、お弁当や事務用品の発注などの細かな業務も行っている。一部の業務は、すでにシステム開発により自動化が進んでいるが、総務の仕事がなくなることはないと考えているという。

「トイレの不具合や、落とし物の問い合わせ、オフィスの暖房が効かない等の陳情への対応は、すぐに現場に駆け付けて、現状を把握して解決する必要があります。これは、人間じゃないと出来ない仕事。代表電話の取り次ぎ一つを取っても、社内の動向を把握して最適な部署に割り振ることは、決してAIにはできないと思いますね」(Aさん)

 飲食店で調理の仕事を行う20代の男性・Bさんも、AIが自身の業務領域を侵すとは考えていない。

「科学的に美味しいと感じる味の分析は進みそうですが、人間は人間が作ったものを食べたいはず。人手不足に悩むファミレスであれば、調理や接客が自動化するかもしれませんが、料理を作る仕事がなくなるとは想像しにくいです」(Bさん)

早く「AIに代替して欲しい」という業務も

 一方で、AI化によって、雑多な業務が軽減されることを予見し、それを期待する人もいる。企業で広報を担当する30代の女性・Cさんだ。

「将来的にAIが得意な分野で、仕事の置き換えはあり得ると思っています。メディアや記者への情報共有はその一つ。情報が蓄積されてさえいれば、メディアの優先順位付けの判断や、テンプレートでの返信は、AIの方が精度高くスピーディに対応できるはずです。また、データを蓄積したAIの分析により、炎上や風評被害などといったリスクを回避しやすくなるのでは」(Cさん)

 営業職に就く20代の男性・Dさんは、AI化によって顧客からの“無茶振り”が減ることに期待している。

「人の営業マンに期待されるのは、無理な納期調整などのイレギュラーな仕事。例えば僕が『無理』と言っても聞く耳を持ってくれないことはありますが、AIが『無理』と言うなら顧客も諦めが付きそう。資料送付などの誰にでも出来る作業と一緒に、早く無茶振りがなくなってほしいです」(Dさん)

AIとうまく付き合っていきたい

 大手IT企業に勤める30代の男性・Eさんは、自らの仕事がAIによってなくなることはない、と考えている。

「AIを使いこなす立場なので、仕事を奪われる危機感よりも、うまく付き合う方法への関心が高いですね。AIに何ができて何ができないかを、一番間近でみて理解している職種。10年後の世界がどうなっているか分かりませんが、最もリプレイスされにくい仕事なのかなと思っています」(Eさん)

 AIの進化が私たちの働き方にどんな影響を及ぼすのか。AIに仕事が奪われることを心配するよりも、無駄な手間やコストを削減してくれることを期待する声は少なくないようだ。