老後の生活に癒やしを求め、犬や猫を飼おうという人は多い。“新たな家族”は毎日の暮らしに彩りをもたらすが、老後の蓄えをペットのために切り崩すことにもなりかねない。4年前に中型犬を飼い始めた男性(75)が言う。

「夫婦の会話が減り、家の中を明るくしようと思って飼い始めました。散歩で毎日外に出るので運動にもなる。本当に可愛くて、すぐにかけがえのない存在になりました。

 しかし、愛犬が3歳になったとき、ペット用トイレに血便が残っていた。慌てて動物病院に連れていくと、『悪性リンパ腫』と診断されたんです。

 ほぼ週3回のペースで診察・治療に通って、2回の入院、抗がん剤治療などで治療費は60万円以上になった。夜間に血便が出て、タクシーで動物病院の時間外治療に運んだこともありました。

 半年以上の治療の末に亡くなって、葬儀費用も5万円かかった。わずかな年金で暮らしている身には痛い出費でした。愛犬を失った悲しみは大きかったけど、“これ以上治療が続いたらお金を出せなかった”と少しだけホッとしました」

 かわさき高齢者とペットの問題研究会で代表を務める渡辺昭代氏は「飼い始める前にペットの健康、治療費まで考える人は少ない」と指摘する。

「動物病院は自由診療のため、全額が飼い主負担となります。その上、現在は20年以上生きる犬猫も珍しくなく、治療費がかさむ例は多い。犬であれば毎年のワクチン接種・予防薬などが年間3万〜6万円。歯磨きを怠ると心臓病を招くので歯石取りに2万〜3万円程度かかる。

 人間と同じように病気にもなります。犬や猫の白内障では点眼薬代が毎月1万円程度、小型犬に多い心臓病では薬代が年間6万〜7万円程度かかる。悪性リンパ腫などの病気では手術代、さらに高齢犬ホームに入居すれば300万円以上はかかります」

 もし飼い主に持病や急な手術が必要となれば、自らの治療費と動物病院の負担がダブルでのしかかる。ペットのために老後の生活が破綻しては、本末転倒だ。

※週刊ポスト2020年3月13日号