「立派なものでなくとも、死んだら見すぼらしくない墓に入りたい」「家族に墓の手配で迷惑をかけたくない」──こうした思いから、生前にお墓の購入を検討する人は少なくない。ところが、せっかく予約しておいたはずの墓地に、死後に入れないケースが続出している。

 妻に先立たれて独り暮らしをする中部地方在住のA氏(86)は、先祖代々の墓地には骨壺を納めるスペースが足りないため、地元の民間霊園の土地を購入した。死後は妻の遺骨とともに、新たな墓に入れてもらおうと考えていた。

 ところが、A氏は離れて暮らす息子夫婦に心配をかけまいと、墓を購入したことを伝えていなかった。購入後に心筋梗塞で急逝するとは思わずに……。

 息子夫婦は当然、A氏が新たな霊園を予約し、永代使用料を納めていたことを知らなかった。東京から地元まで墓の管理に通うわけにもいかないため、墓じまいして関東近郊の通いやすい納骨堂にA氏の遺骨を移すことにしたという。お墓にまつわる利用者の相談を受け付ける日本仏事ネットの寺田良平氏が語る。

「こうしたケースでは、後になって故人の知人などから“お墓を買っていたはず”という話を聞いたり、購入した墓のある霊園から更新書類などの郵便物が届いて初めて気づくことがある。購入した区画を返還しても料金が戻ってこない場合が多く、墓を建てていたら処分のため余計に費用がかかってしまいます。

 生きているうちに墓を手配しても“家族から精神的に弱っていると思われたくない”“費用のことで気を遣わせたくない”とその事実を伝えられない人は多い。ですが、伝えないまま亡くなればお金が無駄になるので、事前に家族間で話し合うべきです」

 また、「業者選び」を誤るリスクもある。早くから墓を予約していても、霊園の経営母体が倒産して入れなくなった事例もある。

 2007年には大阪府豊中市の霊園(約740区画)が競売にかけられ、所有権が宗教法人から民間の墓地管理会社に移った。民間会社が未納骨の区画の契約者に対して、追加の使用料を請求したことも物議を醸した。

 2010年には福井県あわら市の寺院が経営破綻。墓地や納骨堂の所有権が民間の管理業者に移り、中には墓の移転や骨壺の返還を申し出る人もいたという。こうした霊園は決して珍しくない。

 墓は家族の生活に関わるもの。子供たちと相談のうえ、冷静な決断が欠かせない。

※週刊ポスト2020年3月20日号