2018年7月の相続法の大改正を受け、遺産相続に関する新ルールが次々と施行されている。そのうちの主なものを表にまとめたが、これら新制度にうまく対応していくことが、「兄弟姉妹」が円満に相続財産を分け合う上でのカギとなる。相続実務士の曽根恵子氏(夢相続代表)が解説する。

「財産目録のパソコンでの作成が認められたり、法務局で保管してもらえたりするなど、自筆の遺言書を残しやすくなりました。

 ただ、親が遺言書を残しても、遺産分割に偏りがあって残された子供たちの間に不満が生じると、遺留分(相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた制度)を請求する争いなどに発展してしまうことがあります。それを防ぐには、親が子供たちに対して、遺言書の内容をあらかじめ知らせ、きょうだい間で納得する話し合いを済ませておくことが大切です」

 法定相続人ではない“長男の妻”などが介護や看病にあたった場合、遺産の一部を請求できる「特別の寄与」も新たに認められるようになったが、大切なのはやはり、親子間と子供同士での情報共有だという。

「親が亡くなってから後出しで“妻がこんなに介護していた”と言い出すと、きょうだい間の揉め事のタネになる。介護が始まった時点から、全員にどのくらいの負担があるかを伝えることです。

 特別の寄与が認められるために介護記録が必要という話を聞くかもしれませんが、これも単に“請求の材料”と考えるのではなく、親の状態を知らせて共有するために活用したい。理想は、親から“世話になったので嫁にもこのくらい残したい”という話を子供たちにして、遺言書にもきちんと記してもらうことでしょう」(同前)

 葬儀などの費用として、故人の預金口座から一定額(ひとつの金融機関につき上限150万円)が払い戻せる新制度もスタートした。遺産分割協議がまとまる前でも使える便利な仕組みだが、これも残された子供たち同士での話し合いを前提に利用したい。

「仲が悪いと“勝手に親の預金を使い込んだんじゃないか”という不信感を生みかねません。払い戻したお金を何に使ったか記録を残すのはもちろんのこと、できる限り親が生きているうちから預金口座や残高などの情報を子供同士で共有しておくのがいちばんです」(同前)

 必要な情報共有や話し合いができれば、新ルールを円滑な相続のために活用できる。それを実現するための準備に時間を使いたい。

※週刊ポスト2020年5月8・15日号