高齢者が病気にかかった場合、住み慣れた自宅で受ける「在宅医療」が注目されているが、在宅医療と切り離せないのが「看取り」だ。自宅で親や家族を看取る際、費用はどうなるのか。最も一般的ながんのケースを考える。

 在宅医療を担う内科医の中村洋一氏(中村診療所所長)が解説する。

「たとえば、重いがんになった75歳以上の患者が看取りの在宅医療を行なう『在宅療養支援診療所』と契約すると、1割負担で月額7500円ほどの費用がかかります。症状が不安定になるとエコーや血液検査を行なうため、自己負担が月額1万円ほどに増えます」

 徐々に看取りの時期が近付くと、医師が「終末期」と認定する。

「医師の判断により、最大で半年前から『終末期医療』が始まります。往診料7200円(1割負担で720円)が回数分かかり、酸素吸入器4万円(同4000円)や看取り加算5万5000円(同5500円)などが加わり、さらに様々な検査代が加算されます。

 最終的な費用は約26万円(同約2万6000円)ぐらいが一般的ですが、高額療養費制度を使えば、このケースでは自己負担額が1万8000円で収まります」(前出・中村氏)

 さらに、看取り期には手厚い介護が必要となり、少なくない介護費用がかかる。多くの場合、介護保険を併用することになる。

 介護保険は「要支援1・2、要介護1〜5」と7段階の区分のうち、「より重度」と認定されるほどサービス給付の上限額が上がる。

 最も重い「要介護5」の支給上限は36万2170円(1割負担で約3万6000円)となる。介護費用に関しても、上限までの支払いで済む「高額介護サービス費」制度など使える制度がある。

 さらに、がんの終末期に限って使える医療費と看護費の「特別ルール」がある。ゆみのハートクリニックケアマネージャー沖野建三氏の解説。

「医師が“終末期”と判断すれば、訪問看護にかかったお金を介護保険ではなく、医療保険に組み込めます。高額療養費制度で支払いを抑え、空いた介護費用を訪問入浴や訪問介護といった他のサービスに充てれば、終末期の生活の質を高められるのです(別掲図3参照)」

 賢く制度を使えば、費用を抑えて手厚くケアできる。自宅での看取りを検討する上で知っておきたいことだ。

※週刊ポスト2020年7月10・17日号