新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年4月末から始まった国民1人に「現金10万円」の特別定額給付金。「DVを受けていて別の場所で生活をしている家族がいる」などの理由で、世帯主名義の口座に一括で振り込まれることに対しては疑問の声も出ているが、世帯主が給付金を独占するのは許されないことなのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 10万円の給付金について相談があります。我が家は4人家族。妻と中学生になる2人の息子なので、計40万円が振り込まれる予定です。息子たちは喜んでいますが、世帯主の私が住民税などを払っているんです。以上により、40万円は私が独り占めしてもかまいませんよね。竹下先生のご判断をお聞かせください。

【回答】
 ご質問の給付金は、正確には「特別定額給付金」です。実際の給付事業は、国が市町村に行なわせ、給付金の全額を市町村に補助金として負担する仕組みです。同種の特定給付金は、10年前の消費税増税時にも実施されています。給付対象者は今年の4月27日までに住民基本台帳に記録がある者です。しかし、申請して受給するのは世帯主で、その世帯主名義の預貯金の口座に振り込まれます。

 政府は4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として、生活困窮世帯への支援となるよう世帯主の所得を基準とした、一世帯当たり30万円の給付を決定していました。ところが、国民から批判を受け、4月20日に「迅速かつ的確に家計への支援を行なうこととし、一律に1人当たり10万円の給付を行なう」と変更したのです。

 世帯当たりから、1人当たりになったのですが、給付対象が世帯の各人なのに、世帯主を「受給権者」としたのは、各個人ごとの給付では「迅速かつ的確」に給付できないから。市町村への請求は世帯主ですが、各人は給付を望むか否かを決定できる扱いになっており、給付対象はあくまで各個人となります。

 各人の意向を踏まえて世帯主が申請、市町村に対し、世帯主が受領する権利を持つものの、給付金は家計支援のためのもので、世帯主の独り占めは制度趣旨に反します。ただ、世帯主が個々の構成員を代理して申請する形ではなく、構成員に分配することを予定しているとも思えません。

 閣議決定は自粛生活が必要で、団結してコロナの克服のために支給するとしています。自粛したのは、それぞれ各人です。一方、団結も大切です。給付金の使途も家族でよく話し合い、お互いに納得した上で使うべきでしょう。

【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号