東京五輪をめぐっては世論も「予定通り来夏開催」と「中止」で割れている。日本にとって最良の決断とは何なのか。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏(49)は、経済に与える影響の観点から次のように考える。

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 経済的な影響を鑑みれば、どんな形にせよ開催するに越したことはないでしょう。五輪開催国は、株価、通貨価値が上昇し、経済にプラスの効果を及ぼしてきたことは疑いがありません。

 1984年ロサンゼルス五輪以降、夏季五輪開催国の経済成長率の平均は、開催1年前には+0.9%、開催年には+0.3%押し上げられています。それをもとにざっくり試算すると、2020年の東京五輪のGDPの押し上げ額はトータルで9.2兆円、開催年では1.7兆円になる計算でした。

 五輪を中止すれば、これらの金額に加えて関連産業の生産誘発額約3.2兆円の経済波及効果を失い、これまでの投資額も無駄になってしまいます。

 感染状況によっては海外からの観客に制限をかけることになりますが、無観客でも開催するほうがいいと考えます。競技がテレビで放映されれば、テレビやレコーダーなど関連商品を新規購入するニーズが高まり、約4000億円の経済波及効果が生まれます。日本人選手が活躍すれば国民の消費マインドも上昇しますが、中止になれば冷え込むことが予想されます。

 もちろん開催可否は感染状況に左右されますが、最も大きい要素はワクチンの開発と実用化でしょう。無観客での開催ならば選手やスタッフを中心にワクチンを確保しておけばよい。ロシアや欧米でも治験と併用した実用化の目処が見え始めているので、前向きに検討してもらいたいですね。

【PROFILE】ながはま・としひろ/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。専門は経済統計、マクロ経済分析。

※週刊ポスト2020年8月28日号