例年、豪雨災害は深刻化しており、河川の氾濫などによる洪水で、家財が流されることも少なくない。そんななか、流されたものがフリマサービスに出品されるという事例も発生したという。果たしてこうした出品物は、法的に取り戻すことができるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 大雨で被害に遭った者です。濁流が家の中をめちゃくちゃに。そんな状況の中、覗いたフリマアプリに大事にしていた銀製の装飾皿が出品されており、見覚えのある傷も確認でき、どう見ても私の皿でした。たぶん、流された皿を誰かが拾い、出品したのでしょう。この場合、皿を奪い返すことは可能ですか。

【回答】
 持ち主の意思によらず、手元を離れたもので、盗まれた物以外を遺失物といいます。遺失物にはまず、遺失物法が適用されます。拾得者は遺失物を拾得したら、速やかに警察に届け出る義務があり、以後同法に従って処理され、遺失物の持ち主がわからないときは、公告されます。そして、公告後3か月以内に所有者が判明しなければ、拾得者が所有権を取得します。

 ただ、当該装飾皿が家具に収納された状態で漂流していた場合は遺失物ですが、漂流物だと水難救助法が適用され、漂流物の拾得者は遅滞なく市町村長に引き渡す義務があります。水難救助法では、市町村長は持ち主不明の漂流品を公告し、公告後6か月以内に持ち主が名乗り出ないとき、拾得者が公告費用等の経費を支払えば、漂流物の所有権を取得できます。

 このように装飾皿の拾得者が、拾得の状態に応じて適用される手続きを実行していれば、その所有権を取得した可能性があります。

 しかし、先日の大雨というのが、3か月以上以前のことでなければ、公告期間が経過しているわけではないので、適法な手続きを実行することなく、自分の物として出品していることになり、よって出品者の物ではありません。仮に出品者が他者から譲り受けた物としても、遺失物の所有者は無くしてから、2年間の間は取り戻せます。

 もっとも、出品者がマーケットで買った場合には、その代価を支払う必要がありますが。

 もし、遺失物法等の手続きをせず、拾得物を売っていると、刑法の遺失物等横領罪に該当し、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金、もしくは科料で処罰されます。

 傷が写っている手元の写真などで、装飾皿があなたの物だと証明できる場合には、出品者に返却を求める交渉にトライする価値は、十分にある、と思います。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※週刊ポスト2020年10月9日号