予測のつかない動きをするのが子供やペット。その結果、思いがけないトラブルにつながることもある。誰もが経験するかもしれないトラブルに関する悩みについて、弁護士の竹下正己氏に回答してもらった。

【相談】
 飼い犬の散歩中のことです。小学校低学年の子供たちが遊んでいる近くを通ったときに、子供Aが棒を振り回していたため、うちの犬が突然吠えました。それに驚いた子供Bが転んで腕を骨折してしまいました。この場合、治療費などの損害はすべて私が負担しないといけないのでしょうか。棒を振り回していた子供AとBの親にも負担してもらうことはできますか。

【回答】
 民法では「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う」と定められています。それに従い、飼い犬の行動が原因で他人がけがをした場合、それが通常発生しうる関係、すなわち相当因果関係があるときは、飼い主は賠償責任を負います。

 近くで突然犬に吠えられたら驚くのが普通です。驚いたら転んでもおかしくありませんし、転び方によっては骨折することもあるでしょう。犬が吠えたことと子供の骨折の相当因果関係は否定できないと思います。

 ただし、民法は例外として、「動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたとき」は責任を免れるとしています。しかし、犬は元来活動的で、予想できない行動をとるものです。

 そこで、動物愛護管理法を受けて各自治体で定めている動物愛護管理条例では、人に危害や損害を及ぼすことがないよう常に係留することを求めています。散歩中は、リードで確実に制御する義務があります。しかし、それで充分とはいえません。吠えられた人によっては、不快にとどまらず恐怖を感じることもあり、暴力と同様の有形力の行使といえる場合もあります。

 立ち止まっている人に吠えかけて転倒させた事案で、飼い主は、散歩中に犬がみだりに吠えないように犬を調教すべき注意義務があるとした裁判例もあります。

 あなたは責任があると考えながらも、治療費全額負担には疑問があるようです。もし子供が犬に向かって棒を振り回すなどの吠えられる原因を作ったようなことがあれば、その子供の過失による減額、いわゆる過失相殺が主張できるでしょう。

 小学校低学年は通常の場合、責任能力(行動の結果の責任を理解する能力)はなく、不法行為責任を負いません。しかし、過失相殺は損害の公平な負担を図るための制度ですから、能力の程度は物事の道理をわきまえる程度で足りると考えられています。

 低学年でも犬をからかうと反撃される程度の認識はあると思われるので、事故発生の経過によっては過失相殺される可能性があります。事故の状況を説明して保護者と協議するのがよいと思います。

 飼い犬が人を噛んだり、とびかかってけがをさせた場合には、被害者の自招行為といえるような場合を除いて、飼い主の損害賠償責任は免れません。

 こうした場合に備えたいのが保険です。自動車保険などで個人賠償責任の特約を付けておくと保険で賄うことができます。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2020年10月22日号