相続税がかかるのは一部の人のみ、ウチには関係ない……そう思っている人も多いかもしれない。しかし、2015年の民法改正で相続税の基礎控除額が大幅に変更され、相続税を払う人が増えているという。

 いまや12人に1人が相続税を払うと言われているが、できる限り多くの財産を遺族に残したいと願う人も多い。そこで相続対策として注目されているのが「孫への贈与」だ。そもそも配偶者と子供は民法で定められた相続人(法定相続人)となるが、孫は含まれない。そのため、「孫相続」にはさまざまな“抜け道”があるという。

 例えば、年110万円以内(基礎控除)の贈与が非課税となる「暦年贈与」は親子間でも可能だが、子は法定相続人にあたるため、相続時に過去3年以内に行われた贈与には相続税がかかる。しかし、孫は法定相続人にあたらないため、過去にさかのぼって課税対象とはならない。

 こうした「孫への生前贈与」の賢いやり方を具体的に見ていこう。

1500万円まで非課税の「教育資金の一括贈与」

 孫の教育資金を支援したい祖父母は多いが、実は一括で払うと非課税になる。相続対策を行う夢相続代表の曽根恵子さんが説明する。

「孫名義で金融機関に口座を作り、一括で振り込めば1500万円まで非課税で贈与することができます。ただし、孫が30才になるまでに、教育資金として使い切らなければならないという制限があり、金融機関での契約書の作成や、出金する際に領収書を提出するなどの細かい事務処理も必須です。中学から大学まで私立に進学させるつもりなら、相続税対策の一環として取り組むメリットはあるでしょう」(曽根さん・以下同)

 仮に祖父母が亡くなっても孫が23才未満であれば相続税の課税対象にはならず、30才になった時点での残額に贈与税がかかる。教育資金の範囲については、中学や高校、大学の受験料、入学費用や授業料のほか、習い事代や、通学に関する交通費は認められるが、自宅を離れて大学に通う場合の家賃や生活費に使うことはできない。

 これは来年3月31日までの制度なので、該当する人は早めに動き出した方がいいだろう。

不妊治療もカバー「結婚・子育て資金の一括贈与」

 20才以上50才未満の子供や孫に対して、一括で結婚や子育てのための資金を贈与できるのが「結婚・子育て資金贈与」だ。これも来年3月31日までの期間限定の制度だ。

「孫名義で開設した金融機関に一括で預け、結婚や出産の費用がかかったときに引き出せば、その分の贈与税が非課税になります。上限は1000万円です」

 そのうち結婚資金は300万円が限度だが、これには挙式費用や衣装代などの婚礼費用、新婚旅行の費用、家賃や敷金などの新居費用や転居費用も含まれる。妊娠、出産、育児資金についても、不妊治療や検診、産後ケア、子供の医療費や幼稚園・保育所などの保育料(ベビーシッター代も含む)が含まれるなど、幅広く使えるからメリットは大きい。

「この制度でも、結婚・子育てに関連した支払いをしたときは、内容を証明する必要があり、領収書を持参して金融機関からお金を引き出します」

家を建てる孫へ「住宅取得等資金の贈与」

「父母や祖父母など直系尊属から贈与を受けて自宅を購入する際に、贈与税がかからない特例の制度です。新築した年や省エネ住宅かどうかでも非課税枠の上限が変わるので、利用する際には必ず確認してください」

 あくまでも自分の住居に用いるのが条件で、新築だけでなく、住居の取得や増改築なども対象になる。

「ただし、孫の年収が2000万円を超えていると非課税にはなりません。また、すでに組んでいる住宅ローンの返済にあてることや、賃貸住宅の家賃、引っ越し費用も対象外です」

 こうした孫相続には、節税以外のメリットもあると曽根さんは話す。

「“生前にあげるから活用して”といって財産を渡す方が、孫家族に感謝され、コミュニケーションも円滑になります。ある意味、メリットしかないかもしれません」

 孫に何か残したいと思っている祖父母は、検討してみてもいいのかもしれない。

※女性セブン2020年10月22日号